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.☆.。.:*・゜感謝・10万PV記念SS.。.:*・゜



 シュトラール辺境伯領屋敷にて――


 ライオネルの決意も、ミレイユにとってはどこ吹く風。


「ライオネル様、赤ちゃんは――いつお作りになります?」


 小首を傾げるミレイユ。

 まとめた白金の髪が、ふわりと落ちると、白いうなじがあらわになった。

 虹色に輝く宝石色の瞳が、灯りに照らされ、ゆらりと光る。


 夫婦の寝室にて、そんなことを聞いてくるミレイユにライオネルは危うく、椅子から転げ落ちそうになった。


 ニコニコと微笑むミレイユ⋯⋯を見ていると嫌な予感しかしない。


(まさか、子作りの意味をいまひとつ、分かっていないのでは⋯⋯)


 いや〜な考えがライオネルの脳裏をぎる。


 ライオネルは、軽く咳払いをすると、


「その、な⋯⋯、ミレイユ。一応分かっているとは思うが、私たちは、その、もう⋯⋯しているのだ。子供を作る行為を⋯⋯。そして、赤子というものは、作ろうとして出来るものではない」


 ライオネルは、ミレイユに対して失礼にならないように、恥をかかせないように慎重に言葉を選びながら、ミレイユに言うと、


「そういえば、⋯⋯そうでしたわね」


 そう言いながらミレイユは、ふむと頷き、ライオネルの赤い瞳を覗き込みながら、そっと傍に近寄ると、ぽふんとライオネルの胸へと飛び込んだ。


「ミレイユ⋯⋯?」

 ミレイユを抱きとめたライオネルは、不思議そうにミレイユを見つめた。


「セラが、仰っておりましたわ。全てはライオネル様にお任せすれば問題はない、と――」


 ライオネルに身を委ねながら、ミレイユはそう言うと、にこりと微笑んだ。



「そして、セラが旦那様はきっと疲れていらっしゃるだろうから、私の煎じ薬を飲んでいただくと、赤子もすぐにやってくる、とそう仰っておりましたわ?」


 ミレイユの言葉にいつぞやの、ヤギの乳を思い出すライオネル。


「⋯⋯そうだな、ミレイユの体調次第だが、魔物の実を煎じた煎じ薬さえ飲めば、すぐに子は⋯⋯授かる、だろうな」


 なんせ、猛りきった己の全てを受け止める羽目になるのだから――。


 家令であるモーリスの呆れた表情を思い浮かべるが⋯⋯。


 そんな、家令は今や主であるライオネルよりも、ミレイユの体調ばかり心配している。

 

『いつ、お子が出来てもおかしくないのですから、なるべく体力がつくようにせねばなりませぬな』


 ヴァヴァの言葉――近くで待機をしていた奥方付き侍女――セラの耳にもその言葉はしかと聞こえていたようで⋯⋯。


 屋敷に戻り、ライオネルが湯浴みから上がると、やたら血色が良くなっているモーリスから、『セラからは、伺って存じます』という一言。


 そこからは――早かった。

 あっという間にヴァヴァの言葉は、屋敷の者に知らぬ者がいないほど、浸透した。


 そのせいで屋敷は、まだ出来もしていないのに、赤子を迎える準備ばかりしている。

 産着やら部屋の模様替えやら。


 ライオネルが『まだ。まだだ』と、何度言っても聞いてはくれない。


 主の声に、屋敷の者たちは、全く耳を貸してくれないのである。


 後ろには、モーリスを筆頭に産着を手にした屋敷の者たち。


 前には、侍女が後ろに控え煎じ薬を手にしたミレイユ。


 そして、左右は、部下ら。


 そんな状況の己を思い浮かべる。


 ライオネルは、ふう、と溜息をひとつくと、ミレイユの頬を愛しげに撫で、そっと摘むと、微笑むのだった。


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