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星に願いをかけるのはいいけれど〜リテイクお願いします!〜  作者: コーヒー牛乳


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キラキラエフェクト

ヴヴ…


スマホのバイブ音が鳴り、画面にはバスケットボールが先に行ってしまい必死に追いかける私の写真が表示された。

こちらも負けじと写真を送る。今度は映画のパンフレットっぽく写真を加工したものだ。力作である。


「……インド映画みたいなことになってるよ」

「一応、コンセプトは弱小バレーボール部が新しく赴任してきたコーチと共に甲子園的なものを目指す青春映画なんですけど」

「バレーボールは“インターハイ”だよ」


「私には先輩の背中に見えましたよ。インターハイが」


ヴヴ…


また写真が送られてきた。そこにはボールをとりこぼした珍プレー場面がおさまっていた。


「さっきから、なんでこんなところばっかりなんですか!」

「むしろこんな奇跡的な場面を何枚も撮ることが出来て感動したよ」


先輩はニヤリと意地悪そうな顔をした。



先ほどから我々が送り付けあっているのは先日の球技大会の写真である。

斗真と保健室を後にした、あの後。斗真はすぐに友だちに連れて行かれていた。それを脇目に本来の目的である、先輩の雄姿を拝みに向かった。もう試合は始まっていて、急いで先輩の写真を撮ったというわけだ。


運動する先輩なんて見たら笑ってしまうかと思いきや、無駄のない動きでチームをフォローして動いていた。意外である。決して場を盛り上げたり、絶対に勝つぞとチームを引っ張っていく感じでは無かったが、先輩なら必ず球をこぼさない。影の副将的な存在感だった。忍びのようだ。そこには先輩なら大丈夫という安心感があった。


一回戦目は勝利したのに、残念ながら二回戦目の明らかにバレーボール部員集団だろう! というチームに敗北してしまったが、先輩はすごかった。感動した! キラキラしてるよ先輩! 私の目にはキラキラエフェクトがONになっていた。


ずれ落ちてしまいそうな眼鏡をかけ、わざとらしいほどの黒髪の先を濡らしキラキラと汗をかく姿に、部室での筋トレ姿が重なった。サッカーボールの方に女子のほとんどが流れて行ってしまっているものの、男子バレーボールを応援している人はチラホラいた。この中で先輩を見ている人はどれほどいるだろうか。その見ている人の中で、あの眼鏡と前髪の中にある瞳がとても綺麗な色をしていることを知っているのは何人いるだろうか。


──先輩の魅力がバレてしまうな。


本気でそう思いながら先輩の雄姿を見つめていた。


でもね。普段の先輩はこんなに俊敏に動く方じゃなくて。

字がおじいちゃんみたいに達筆で。

映画バカで。


先輩のこんな面を知っているのは、私だけだろう。そうだといいな、と謎の優越感も湧いていた。


先輩のキラキラバレーボールに感動と興奮が生まれた私は、試合終わりの先輩を追いかけた。今の気持ちを、興奮を伝えたかったのだ。しかし、先輩は友達と話していて。なんだか近づけなかった。


友達と話す先輩は、いつものように前髪シャッターを下ろしたままだけど何かポンポン言い合って、普通に楽しそうだった。さっき湧いた“優越感”がシュルルルと空気が抜けるように萎んでいく。そりゃそうだ。先輩と話すようになって一月と半月と、もう少し。朝と放課後だけ。なんで友達よりも“知っている”気になったのか。


近づこうとした足を止め、視線で追ってしまう。先輩たち一行は何か話しながら私の後ろにある出口に向かって近づいて来る。先輩は私の存在に気付いていないのか、チラリともこちらを見ない。というか先輩みたいなデカイ人間には私のようなチビなんて視界に入らないのかもしれない、とどんどん卑屈になっていた時だった。


あと二メートルですれ違う、という時に。先輩の口元がフッとゆるりと持ち上がった。そして、すれ違いざまに先輩の大きな手が私の頭の上に乗った。部室でたまに感じる、先輩の香りがした。そしてすれ違う速さに合わせて、大きな手は離れていった。先輩の友達が「え?」とか「なに」とか言っていたが、私はそれどころじゃなかった。


──たったこれだけのやり取りで気分は再浮上してしまったようだ。

頬が、熱かった。



次に会った時にどんな顔をしたらいいのか迷って、ドキドキバクバクしながら部室に行ったが先輩はいつも通りだった。なんだ。あんな少女漫画みたいな頭ポンしておいて、いつも通りか。お、乙女のくせに!!!


先輩に負けたような悔しさを感じて、先輩の雄姿をおさめた写真を目の前で送り付けた。

しかし、先輩は驚く様子もなく秒で返してきたのだ。私の珍プレー写真を。


「先輩、見てたんですか?」

「たまたまね。楽しそうだったから写真撮っちゃったよ」


と、ここから写真の送り付けあいが始まったのだ。


「もう! 一応、優勝したんですよ。活躍したのは一回だけですけど!」


最初はドキドキしていた心臓も、もう通常運転だ。普通に話せてよかった。今度はこの長袖ジャージを脱ぐところの写真を送ろうか、と写真に劇画エフェクトをかけた。


「はは。活躍、してたっけ?」

「してましたよ! ゴールを決めたんですから、活躍中の活躍です。ちゃんと見ておいてくださいよ」


それとも、こっちのキラキラゴージャスエフェクトがいいだろうか。


「ああ、見てたよ」


指が止まる。

ピントがスマホから、スマホの向こうにいる先輩に合った。


「魅入っちゃって、写真撮るの忘れてた」


目の前に座る先輩は、眼鏡を外していて。髪を横によけていて。あの紺色の瞳が私を見ていた。


「見て、たんですか」

「見てたよ」


「気づかなかったです」

「集中してたもんね。一生懸命ボール追って、チームメイトに声かけて励まして、他の子のゴールにも本当に嬉しそうに喜んでて、見てただけのこっちまで釣られて喜んじゃったよ」


ぐわっと体温が上がっていくのは、恥ずかしいからなのか


「それに、応援に来てくれたのにも気付いてたよ。正直、やる気なかったんだけど、応援してるハルコ見てたら自然と、なんか柄にも無く頑張っちゃって。恥ずかしかったけど、楽しかったよ」


先輩が少しはにかみながら笑んだ。こんな表情も、するんだ。とたんに私の視界にキラキラエフェクトがかかってしまう。


「一生懸命やると楽しいって教えてくれて、ありがとう」


先輩がキラキラして、見える。


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