12.こんなに驚くことって続くものなのかしら
教室に戻るとエイミーが1人、席に座って本を読んでいる。
「あれ? もしかして待っててくれたの?」
私の声にエイミーは顔を上げた。
「ええ。遅かったので心配しましたわ」
「そっか。ごめんね。色々あったんだ。いろいろ」
言葉を濁すように言うと、少し考えた素振りを見せてからエイミーは思いついたように言った。
「そうでしたの。では、この後、カフェでじっくりお話していただきましょう」
「カフェは無理!!」
「え?!」
慌てて言った私に、瞳を大きくして驚くエイミー。
「あ。あのね、今日はこの後、ダンスパーティーのドレスを試着することになっているの。だから早く帰らなきゃいけないんだ。ごめんね。せっかく待っていてくれたのに」
取って付けたような私の言い訳に、エイミーは納得してくれた。
「まぁ、では早く帰りませんと」
読んでいた本を鞄に入れるのを見て、私も勉強道具を鞄に入れていく。
逃げ帰ってきたのに、すぐノコノコとカフェに行く気には当然なれない。
ドレスの試着なんて、本当はどうでも良かった。
寮の部屋に戻ると、色違いの服を着た可愛らしい少女が2人、ミセスブラウンとお茶を飲んでくつろいでいた。
「ただいま戻りました」
私の声に慌てて立ち上がるミセスブラウン。
いいのよ?別に寛いでいても。
直接言わないけどね。
「おかえりなさいませ、お嬢様。こちらはドレスのお仕立てをお願いした、マジカルシュシュのシャネルエ様とブルガリエ様でございます」
2人が立ち上がる。
ソファーに座っていた高さと変わらない身長だ。
もしかして、子供? それとも人間ではないのかしら?
「そう」
ミセスブラウンに返事をし、2人に向き直り、制服の裾を軽く持つ。
「リリアーナ・ベンフィカでございます。本日は私のためにお越しいただき、ありがとうございました。早速ですが、試着させていただいても構わないでしょうか。」
疑問は口に出さず、声を掛ける。
「早速ですって。失礼しちゃうわ。ねぇ、ブルガリエ」
「ホントね。こんなに待たせておいて、私たちを急かすなんて。人間は傲慢だわ、シャネルエ」
え? 私、ちゃんと挨拶したわよね?
確かに、早速って言ったけど、急かすつもりじゃ……。
困ってミセスブラウンを見ると、彼女も困った表情をして私を見ていた。
私が悪いの?
「大変、失礼致しました。シャネルエ様、ブルガリエ様。どうかご試着をお願いできますでしょうか?」
「よくってよ。ねぇ、ブルガリエ」
「仕方がないわね、シャネルエ」
私が頭を下げると、ようやく機嫌が直ったのか2人は試着の準備に取り掛かる。
シャネルエが小さい黒の鞄に手を入れると、どうやって入っていたのか鞄よりも大きな箱が出てくる。
ブルガリエも同じく黒い鞄から箱をを次々と5つ取り出した。
え? どうやって入っていたの?
思わず、マジマジと見てしまう。
どう見ても、変哲のないただの黒い鞄だ。
「あら、嫌だ。この人間は何をそんなに驚いているのかしら?ねぇ、シャネルエ」
「まさか、このマジックバッグが珍しいわけではないでしょうね。ブルガリエ」
眉をひそめて言う2人に、思わず聞いてみた。
「魔法がかかってるバッグなの?」
「当然でしょ。魔法がかかっていなかったら、重たくて運べないわ。ねぇ、ブルガリエ」
「そうよね。人間も同じマジックバッグを使っていながら驚くなんて。人間って理解できないわね、シャネルエ」
「使ってる? 私も?」
「お嬢様がお使いのその鞄はエストレイラ学園指定の鞄で、マジックバッグ仕様になっております」
ミセスブラウンが呆れた顔で説明してくれた。
「え?」
驚いて、自分が持っている鞄を見る。
そっか、知らなかったわ。
確かに勉強道具を入れても軽かったかもしれない。
後で良く調べてみよう。
とりあえず、今はこの小さい女の子たちの機嫌を損なわないためにも早く試着をするべきよね。
お読みいただき、ありがとうございました♪




