10.ココが君セナじゃなかったとしたら?
アレフ様が出て行った後も私はそのまま座り続けた。
ここは、君セナだ。
君セナの世界は、オリジナルの空想世界。
中世ヨーロッパ風の貴族や王国風な時代背景に、現代日本のような部分も組み合わさっている。
いわゆる、煌びやかな貴族社会に自然豊かな環境、更に科学が融合したなんでもありの世界だ。
だから、生徒手帳を読み取る電子マネーかクレジットカードのような機械がある。
学園の駐車場には来客の車や先生がたの車が停まっているし、宇宙には人工衛星も飛び回っている。
それでいて、手つかずの森や山などの大自然もある美しい世界。
環境破壊なんて無粋な言葉、恋する乙女には必要ないよね。
そんなハチャメチャな世界、それが君セナの世界だ。
国の名前、学園の名前、登場キャラ全員に会ったわけではないけれど、同姓同名の登場人物がいる。
私はまだ、君セナの全てをクリアーしていないから、知らないことがあるだけ。
私やプレイヤーには、説明されていないことがあるだけ。
そう、思っていた。
でも、アレフ様の態度を見ていると何かが違う気がする。
モンスターがいるなんて知らなかった。
更に冒険者だなんて言い出すし。
君セナでは、新入生歓迎ダンスパーティでは2人が踊るシーンがあったのに、絶対ダンスパーティには出ないって。
ダンスパーティに出ないってことは、主人公と踊るつもりでもないってことよね。
じゃあ、私とは踊りたくないってこと?
それに、君セナではリリアーナは何でもできる令嬢って設定だったのに、私はこの世界の勉強や魔法が一切わからない。
リリアーナの過去から、他を知ることもできない。
もしかして、君セナの世界じゃないの?
私が勝手に思い込んでいるだけなの?
本当は、ドコに来ちゃったの?
考えても答えは出なかった。
気付けば食事が片付けられていて、テーブルには紅茶とマカロンやケーキ、タルトなどの焼き菓子にサンドイッチ、チョコレートやフルーツが載ったお皿が置かれていた。
食べやすいものを配慮して、用意されたのかな。
食欲がなかったので、紅茶を飲もうと手を伸ばしたら、カップではなく誰かの手に触れる。
驚いて顔を上げると、注文をした時のボーイさんだった。
「失礼しました。こちらは冷めてしまったので、温かいものと交換いたします。少々お待ちください。」
「はい。お願いします。」
別に今すぐ飲みたかったことでもないので、しばらく待つ。
すると、甘酸っぱいような香りがただよってくる。
この香りは、カモミール?
さっきも、紅茶にしては色が淡い色だったような気がする。
「カモミールティーでございます。お好みでミルク、蜂蜜をお入れいたします。いかがなさいますか?」
「両方入れてください。」
「かしこまりました。」
淡い蜂蜜色のカモミールティーが乳白色に、爽やかなみずみずしい香りから、深みのあるまろやかな香りに変わっていく。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ティーカップを受け取り、口を付ける。
ミルクに蜂蜜だなんて、小さな子供みたい。
「よろしければ、こちらもいかがですか?」
そう言って勧められたのは、テーブルの上にあったお菓子だ。
「ええ。」
返答に困り、微笑んでいれば何とかなるかな?と顔を上げると、ボーイは私の目の前でマカロンを食べていた。
「こちらに移動しましょうか」
悪戯っぽい笑みを浮かべて私の手を引き、ソファーのあるコーナーへと進む。
私をソファーに座らせ、カモミールティーやお菓子をテーブルに載せて行く。
「今はね、私たちも休憩時間なんですよ。この時間は誰も来ませんから、時々コッソリと使っているのです。君は授業をさぼって王族専用エリアに隠れている、差し詰め不良生徒ってところでしょうか?」
「あ、そうだ。授業の事、すっかり忘れてた」
立ち上がろうとする私の腕を上から押えるように止めると、ボーイさんは私の横に座った。
え? 近いよ。
離れようとしても腕を掴まれているため、離れることもできない。
振りほどこうとすればできなくもないけれど、そうしにくい雰囲気で。
「今から行っても怒られるだけですよ。折角ですから、ゆっくりして行きましょう」
微笑みを浮かべたボーイさんは、私の腕を離さなかった。
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10話まで読んでくれて本当にありがとうございました♪




