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デンサバ!  作者: 豚まん
第一章
4/10

あてなの作戦

 

 

「カンーキュー!」

 明星あてなの叫ぶ声が響き渡る。体から湧いてくるエネルギー的存在「マナ」をナントカシステムに変換して……考えることが多すぎる。

 今日の朝、運動場で練習した際あてなの放った弾丸は,期待とは違い、遅い上に軌道もブレブレだった。

 家でも練習を繰り返すが、何回やっても軌道を安定させることが出来ない。

(だめだ。こんなんじゃ!緩急どころじゃないよぅ)

 あてなは、ぼんやりしながら街中を歩いていた。

 夢西通りのメインストリートに向かって川沿いに歩いていく。

「私、才能ないのかな……」

 あてなは河川敷まで歩いて行く。別にどこへいこうか決めていたわけではない。何となくきてしまった。

「はずした!」 

 ホログラム銃『エキドナちゃん』を手にし、河川敷にかかる橋を支える石柱。そのうちの一つに狙いを定めて引き金を引く。

 体が熱い。そのあつさをイメージしながらエキドナちゃんに伝えて行く。マナがだんだん溜まっていくのを感じた。

「いっけえ!」

「まだです。力を抜きながら集中してください」

 放とうとした瞬間だった。(誰?)あてなは振り返ろうとするがその誰かの手があてなの肩を掴む。

「落ち着いてください。私の声だけを聞いて」

 その声は優しく、あてなの耳元で囁く。

『エキドナちゃん』にマナが溜まっていく。さっき教えてくれたアストラ?システム?よく分かんない。

 マナの動きが安定していく。激しく動いていたマナの動きはあてなの『エキドナちゃん』の銃身に収束していく。

「その銃を信じてください。」

 その人の柔らかい腕の感触を肩に感じながらあてなは,銃を発射した。(今なんか変だった。タイミング?心が体を追い越してったみたいな感覚……)

「それが、アストラルシステムですよ。」

「あわわ」

 振り返るとあてなの目が捉えた女の子は、綺麗な薄紫色の髪をしていた。見慣れない制服を綺麗に着こなしている。見慣れない制服?。でもすごい可愛い……。あてなは思った。切長の瞳、そして凛とした仕草。まるで……メイちゃんみたいな

 服装や髪型は違うけど何となく凛としたかっこよさがメイを想起させる。

「失礼しました。つい出過ぎた真似ですね。私もデンサバやってるのでつい声を掛けてしまいました。私は瑠衣。苗字は少々厄介なので教えません。ここにいることがバレると厄介なので。」

 瑠衣さん。綺麗な女の子……

 でもここにいるとまずいって?それなら偽名でよかったんじゃ

 あてなも自己紹介する。

「瑠衣さん!私にもっと教えてください!私絶対勝たなきゃいけない人がいるんです!」

「アテナさん……」

 瑠衣は黙った。しばらく沈黙が流れる。

「デンサバは厳しいものなのです。私にも絶対負けたくない相手がいます。ですから頼らないで強さを身につける事です。」

「そんな」

「大丈夫です。その銃はあなたを導きますから。」

 瑠衣は優しく頭を撫でてくれた。

 もうすぐ日が暮れようとしている。

 ◇

 その日からあてなは紫耀メイに挑むのをやめた。あの時の感覚。忘れない!

 瑠衣と名乗る少女に出会ってから、不思議な感覚がする。あれだけ練習してもバラバラだったマナの動きが段々と落ち着いてきた。さくら先輩が言っていた緩急。それを使っての不意打ち。あてながメイに勝つにはそれしかない。そしてそのためには、メイに今の実力をなるべく隠す必要がある。

「それじゃ特訓行ってきまーす!」

「あてなちゃんほんと電サバ好きだね。」

 あてなは友達の林田に別れを告げると勢いよく外に飛び出していく。

 あてなが扉を開けるとふと紫耀メイがこちらをみている気がして振り返る。メイはすぐに目を逸らして外を見てしまった。

(ごめんなさい!メイちゃん!でも後少し待って!)

 デンサバ部のイスの上に作られた紙の的に何度も何度も球を当てる。少しだけマナを込めて息をふっと吐くのを意識すると早くて野球ボールくらいの弾が打てるようになった。それだけならもう出来ている。でもまだ足りないんだ!

 あてなが息をなるべく強く吸う。今までと同じドッヂボールくらいの弾を撃てるようになるのに苦労した。一度コツを掴むと今度は今までの感覚が分からなくなるからだ。

 ◇

 何度も何度も失敗した。今日の天気は曇り。そして明星あてなは今日も紫耀メイとの戦いに挑んでいる。何度も挑んでは跳ね返された紫耀メイ。だけど……ただやられているだけじゃない!さくら先輩から教えてもらった事!瑠衣ちゃんに教えてもらったあの感覚。

(メイちゃんとの決戦!)

 その日が決戦の日になってしまったのは今日の昼休みのせいだ。

 あてながメイの机に駆け寄る。

「メイちゃーん」

「……」

「メイちゃん?」

「何」

「デン」

「いや」

 早すぎだよメイちゃーん……

「お願い!私メイちゃんに勝ちたくて!初めて対戦したあの日デンサバって最高だって思った!でもやられてばかりで、悔しくて……」

「それで……」

 メイは窓を見ながら呟いく。

「だから最後の一回!だけ勝負してください!これで負けたら私デンサバも諦める」

「なんで私なの?勝手にやればいいじゃない」

 メイは顔を背けながら小さく言った

「私メイちゃんとやりたい!メイちゃん(バトル)大好きだから!」

 その言葉にクラス中がざわめく。「あてなちゃんとメイちゃんってまさか……」「しっいまはそういう時代なの」

 盛り上がる教室。普段怖がってはいるけれど、メイちゃんのクールさに憧れている子は多い。

「あーもう分かった!ただしラストバトルよ。これが最後!いいわね。」

「メイちゃーん」

 メイの可愛らしい胸に抱きつく。ふわふわもふもふ〜〜クールなメイちゃんの体は意外にあったかい

「きゃっやめなさい」

「きゃー!!」

 クラス中の話題はしばらく百合で持ちきりだった……

 ◇

 紫耀メイはあてなに呼ばれた通りにこの場所に立っていた。海の見える埠頭。普段は家族連れなどで賑わう場所だがこの日は、天気も曇っていたこともあり、その様な人たちは見当たらない。メイは一人で海を眺めていた。時刻は学校が終わった後で16時を過ぎている。メイの立っている場所の後ろには倉庫があり、トラック用のミラーが光っていた。(結局来ちゃったわね。)

 メイは少し笑う。あれだけ諦めたはずなのに……ばっかみたい。

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