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デンサバ!  作者: 豚まん
第一章
3/10

それぞれの夜


「メイちゃん!私のお願いきいてくれませんか!」

 朝まだ早いうちから、メイは通学路を歩いていると、明星あてなの姿が見えた。最近すっかり付き纏われてしまった。

「まあ、聞くだけなら」

「電脳サバイバル部に入ってください!」

「やだ。」

 メイはそう言って立ち去る。あてなの事は、嫌いじゃない。でもこれは別問題。

「じゃあ私と勝負して!」

 ?メイは一瞬聞き間違えたのかと思った。

「私と勝負してください!もし私が勝てたら、お願い聞いてください!」

 何言ってんのかしら、この子……私に勝つ?

「いいわ……」

 舐められたものね。驚きのあまりメイの唇はそう呟いてしまう。

「ルールは一対一のディエル形式。あてな、もしあなたが私のライフバーを一パーセントでも減らしたらあなたの勝ち。反対に私があなたのバーをゼロにしたら私の勝ち」

「ちょっと待って。それじゃあ私が有利すぎるよ!」

「あなた……本気で言ってるの?」

 メイの目つきが氷のように、鋭くなる。

 その姿にアテナもたじろいだみたいに見えた。

 メイとあてなは、お互いのデバイスのシリアルコードを交換し,ディエルを選択する.

 腕時計のような専用のデバイスが光だし、お互いの装備がホログラムで現れる。

 名前とライフバーがホログラムでメイとあてなの頭上に現れた。

 あてなの手に形作られた武器。あれは?今時、リボルバー?違う。あれは、あの武器は……

「あなたその武器どこで」

「へへ私のお気に入り『エキドナちゃん』だよ!」

 あれは、北畑工業の幻の一品と言われる銃よね。なんであんなとこに。

「あれメイちゃんの銃『ケルベロス』じゃないの?」

「ええ。」

 不愉快だわ。すぐ終わらせてやる。メイは手にした、ハンドガン『アイアンホーク』を構える。

「開始まで3、2、1、」

 デバイスから音声が聞こえる。

「0」

「うおー」

 あてなの『エキドナ』から青白い弾丸が発射された。

 メイは目線を外す事なくただ静止する。あの子、撃つだけで精一杯……あの軌道なら動くまでもない。

 メイの予想通り、ホログラム弾は、メイの遥か頭上を通り過ぎて、後ろの壁に当たる。ホログラム弾には実態がないから壁は無傷で、危害はない。(慣れないわね)メイはつぶやいた。

 メイが行っていた大会では、ホログラムで再現された、建物が爆発したり、破壊されたりする演出がつきものだったから。

「あちゃーダメかあ」

 メイは軽く集中して、ハンドガンを構える。そして引き金を引く。

「うわ!」

 あてなのライフゲージがゼロになる。いわゆる急所に当たったのだった。

「これで私の勝ちよ」

 あてなは顔を上げることができないみたいに見える。これが実力よ。悪いけど……

 そこまで言ったとき、メイは、銃口を握る手が熱くなっているのを感じた。まさか。私が楽しんでた?違う!私は……

 あてなはゆっくり顔をあげて立ち上がった。その顔は影になっていて表情までは読み取れない。

 あてながメイを見つめる。これで理解したかしら。

「すっごい!やっぱすごいよ!メイちゃん!」

 えっ何言ってるの?負けたのよ。あてな!

「確かに相手にもなんなかったけど私……」

 あてなは息を思いっきり吸い込む。

「楽しかったぁぁ!」

 そう言ってメイの手を握る。

「絶対、絶対次は負けないから!ようし再戦だ!」

 はあ?何言ってんのよーばっかじゃないの!

 ◇

 あてなの家の2階にあるあてなの部屋。そこのベッドに腰掛けて、あてなはため息をついていた。

「あてな!最近テストサボってるでしょ!」

「ママごめん!今忙しいから、」

 そう言って階段を上がって来た。

「まあ、あの子も色々あるんだろ」

「もうあなたは甘すぎなのよ。」

 両親達は何か話している。(もうほっといてよ!私だってたまには一人になりたいの!)

 あの初めての実践から一週間が過ぎていた。すでにメイとは、十回ほど戦っていた。あるときは河川敷で、ある時は学校で、何回も何回も挑んだ。「デンサバって楽しい!」最初はそうだった。やればやるほど上手くなっていくような気がした。

 だけど……メイちゃんとの対戦ではあてなはまるで相手にならない。

 ある時は、組み伏せられ、ホログラムのナイフを首に当てられそのまま掻き切られた。

 またある時は、あてなの弾丸をメイは軽くいなして、あのハンドガンで一発。

 それにしてもメイちゃん、どうしてあのスナイパーライフルを使わないんだろう。あの『ケルベロス』を構えて必殺の一撃を放つメイの姿が、あてなの脳裏に焼きついていた。

「メイちゃん……」

 あてなは寝巻きのまま、悪いとは思いながらもスナック菓子を食べてしまう。歯磨きして、明日の支度して、それから、それから、『エキドナちゃん』のチェックしたきゃ!もっと集中しなきゃ!

 歯磨きを終えて、再びベッドに寝転がっていたら、だんだんあてなの瞼は閉じていくのだった……

 ◇

 夜がふけていく。時計はもうすぐ夜の一時を過ぎようとしていた。紫耀メイは、一人ベッドに寝転ぶ。

 紫耀家は、メイと母の二人暮らしをしている。父親は、メイが幼いときに離婚してしまい、今ではどこにいるのかも分からない。母親とはもう殆ど喋らない……。もう一人姉がいるが,現在は家を出ている。理由なんて分からない……ただ喋りたくない

 ベッドに寝転んで、熊のぬいぐるみを抱きしめて寝転んでみる。中学時代からずっと抱きしめているぬいぐるみは、すでに汚れて形も変形している。あの時から、汗まみれになった時も、眠れない夜も、ずっと抱きしめてきた。

「ほらメイ。欲しがってたプレゼントだよ」

「わあ。ありがと!パパ!」

 幼い少女は目いっぱい両手を動かして喜ぶ。

「くまちゃんだ!」

「これでもう寂しくないだろ……その子をパパだと思って」

 名前を呼んで可愛がったりなんてそんな恥ずかしいことはしない。ただ……これがないと眠れないだけ。メイは、寝巻きに着替えるとくまのぬいぐるみを横に置いて添い寝するような形を取る。落ち着かないから……

 ◇

「あ〜〜またまけちゃったー」

 あてなの叫び声が部室棟に広がる。まだ一応入部前のあてながなぜ部室棟にいるのかといえば……

「どう?順調?あてなちゃん」

「あっさくら部長!えっと……あの」

 さくら部長は優しく微笑む。

「そんなかしこまらないで,あてな。ちょっと部室寄って行きなさい」

 さくら部長はそう言って部室に案内してくれた。

 部室は綺麗に片付いていた。大きな机と小さなイスが何個かいてある。

「ふんふん。分かったわ。」

 あてなが話すとさくら部長はうなづく。

「要するにあの紫耀メイに勝たなければいけないわけね。」

「そうなんです。だけどめいちゃん強過ぎて」

「当たり前よ!紫耀メイと言えば中学生日本代表のエース。いわばこの国で一番上手かった選手と言っても過言ではないわ。」

「あてな構えてみて。」

「えっ」

「いいから。とりあえず今の実力が割れてる以上、メイはそこに合わせてるはず。メイの予想さえ超えられれば……」

 あてなはとりあえず銃をセッティングする。

「私に向かって撃ってみて」

「さくら部長に?」

「試合じゃないからただの構造物扱いよ。」

 あてなのリボルバー『エキドナちゃん』が火を吹いた。

 ホログラム弾はさくら部長の顔面にヒットする。

「ごめんなさい!さくら部長!」

「いいから。今ので分かったわ。あてな。あなたには,基本が欠けてる。私が教えてあげるから」

 さくら部長はそれから私に色々教えてくれた。

「デンサバの基本技術として,『弾速調整』と『属性付与』は知ってる?」

「ダンソクちょーせい?」

 さくら部長は少し呆れつつも優しく教えてくれた。弾速調整とはその名の通り、弾速の調整をする技術で、中学時代のメイが得意としていた技だ。スピードを上げればその分威力が犠牲になってしまうが、メイレベルとなれば、わざと弾速を下げて緩急をつけるなんて真似もできるらしい。

「あてなは撃つだけで精一杯になってるから。まずは集中するの。私達の精神エネルギーであるマナが『アストラルシステム』を通して,ホログラム弾に変換されて……」

「むにゃむにゃ」

「あてな!」

「はいい!」

「緩急よ。今のあてなの実力だと速いスピードで撃つのは難しいわ。でも今回の勝負なら倒さなくてもいい。メイのライフバーをわずかでも削れば勝ち。だったら、いかに遅い弾を速く見せるか。そこに全力を賭ければあるいは……」

「はい!」

 ありがとうございます!さくら部長!ようし、何だかいける気がしてきた。それにしてももう夕方なのに……確か三年生は今月テストだったはず。

「さくら部長。ありがとうございました!」

「いいのよ。頑張りなさい。期待してるから。」

 あてなは部長にお礼を言うとドアを閉めて家に向かって行く。

 これで行けるかもしれない!速く練習戦しなきゃ!

 そう思うと帰宅中もダッシュ

 してしまう。


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