第77話 再び天光の間
『ぱんぱかぱーん! おめでとうイズミ! 『初めてのエッチ』アチーヴメント達成です!』
真っ白な空間で目覚めると、そこに両手を振りながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねる白いぽよぽよが居た。
身の丈は私よりずっと高く、もちもちとふくよかで、体じゅうに丸い房(自主規制)をぶらさげた、真っ白い塊。腕と脚と頭はあるけれど、顔が見えない。
「えっ……女神さまそれって……」
白いぽよぽよは、私を異世界に転生させてくれた女神さま。その目的は、誰かと結ばれるため。
「――あれ? でもなんでここに居るの? 結婚出来たなら、天寿を全うして、私の人生はそこで終わるんだよね?」
『イズミ、惜しいネ! 相手が女の子だった!』
てへぺろ!――顔は見えないけど、そう言ってポーズを取る女神様!
「ええっ!? ちょっと、相手は! 相手は誰!? 相手も憶えてられないの??」
転生すると記憶が無くなる。特に、重要な情報はこの女神さま、速攻消しやがる!
『憶えてたら困るでしょ! だいたい、女の子を好きになった記憶を覚えてられたら、普通に恋愛できなくなるよ』
「そうかもしれないけどさ……」
記憶を辿るも、全く思い出せない。確か、あれから王国は何百年か続いた。少なくとも200年は経ってる。だって、最初の知り合いは皆この世を去ったことだけは覚えているから。そのあとは確か――
「――そうだ! 魔族だ! 魔族が滅茶苦茶強くなったんだ。わけわからない強さになって、せっかく作った学院も壊されて…………書庫が…………」
魔族は学院、そして人間が世代を超えて残していく本を狙った。もちろん、こっちだって黙って見ていたわけじゃない。魔術を使える者が大勢居たし、祝福を授かった者たちで軍隊を作った。それも、この千年見たこともないくらいに強力な武力と、そして勇者を……。
「――人間は滅んじゃった…………?」
私も最後まで戦った。全力で魔族の軍団と。
すると、女神さまは頭を振る。
『ううん。イズミが託した、最後の希望にあのエルフの女の子は辿り着いたよ。魔族は力を失って、国軍に敗れた。人間は、また立ち上がっていくから』
「そっか……よかった…………」
人間はまだ滅んでいない。じゃあ、もう一度、最初から頑張るしかない。アイスクリームと、ふわっふわのソファーをあの子に届けないと…………。
「あれ? なんで石像の女の子のことは憶えてるんだろ??」
『それが今回のアチーヴメント・リワードですっ! ひとつだけ、イズミがどうしてもって思った記憶を残しておいてあげる。ただし、恋愛に関することはダメだよ。次に恋愛できなくなっちゃうから』
「わかった。目的ができたよ、女神さま」
『うんうん』
「とりあえずアイスクリーム、作るのは簡単でも、いつでも食べられるようにするには流通をどうにかしないといけないんだよね。あと、ビーズクッション? あれどうやって作るの!?」
『そういう情報は無かったなあ』
「そうだ! 私みたいな不幸な死に方をした地球人をこっちに連れてこれない!?」
『あれ面倒なんだよねえ。お城にそういう部署、用意してくれたら呼んであげる』
「作る作る! なんてったって、今はお城に居場所があるもんね」
『王都がボロボロだから、今はそれどころじゃないんだよねー』
「そん・なに!?」
『イズミがいれば、たぶんきっと大丈夫。魔術だけは全部記憶してるもん』
「そうだ、賢者の祝福の秘密! あれ、最初から教えておいてよね!」
『あらあら、前世のかわいいイズミは控えめだったのに、もう戻っちゃったの?』
「ナントカさんの言った通り、賢者の祝福に古い呪文の記憶があったのなら、初めからもっとやりようがあったのに!」
『ナントカさん?』
「あの! ほら! あれ!………………ロッテンマイヤーさん!」
『惜しい! 惜しいよイズミ!』
「あああ! 思い出せなくてモヤモヤするぅ!」
『思い出さなくていいから、次いこ、次!』
「ちょっ、それより誰とエッチしたのぉ!?」
『きゅるるるるる~ん』
「話聞けよおおおぉぉぉ…………」
こうして私の独り身転生人生は続いていくのだった。
『独り身イズミの転生譚』 完




