表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

24-ダレカ ガ キエタ

──教室には、いつもと同じ日差しが差し込んでいた。


静かだった。

それが、この空間にとって“通常”の状態だった。

けれど今日に限っては、その静けさが──不自然に思えた。


拓海は、席に着いたまま、窓の外を見ていた。

どこか、ぼんやりとした目で。


 


担任が来て、ホームルームが始まった。


「……あれ、井上は?」


誰かが、ぽつりと聞いた。

でも担任は答えない。

誰もそれ以上、口にはしなかった。


いつもの空気。

違和感だけが、そこに残る。


 


拓海は、何も言わなかった。

机の中には、昨日のメモと──

あの、Lyra語の紙がしまわれていた。


(……あいつは、もう、ここにはいない)


そう確信する理由はない。

でも、わかる。

“この世界の空気”が、微かに変わったことを。


黒パーカーの姿は、今朝、駅前にあった。


昨日までは“誰も気に留めなかった”存在が、

今日はすれ違う人々の視線を引いていた。


(変わっていくのは、俺たちだけじゃない……?)


 


放課後。


拓海は、一人で歩く。

駅前の喧騒も、聞き慣れたアナウンスも、

全てが“いつもの街”のはずなのに、どこか歪んで見えた。


そして──

交差点の向こうに、誰かが立っていた。


黒いパーカー。

フードを深く被って、こちらを見ている。


──違う。

昨日までと、何かが違う。


その人物は、自分ではない。


けれど、似ている。

とてもよく似ている。


気づいてしまった。

それが、自分の“後”にここへ来た者なのだと。


次のプレイヤー。

次の観測者。

あるいは、“かつての自分”。


誰が抜け出したのか。

誰が残されたのか。


世界は何も答えない。


ただ、静かに回り続けている。


 


──

この世界で、ダレカ ガ キエタ。


それだけは、確かだった。


【完】

この物語は、

“自由”を与えられたはずの世界で、

その“自由”に縛られて生きる人間たちの話でした。


学歴。就職。常識。ルール。

「選べるはず」と言われながら、

実際は選べないものに囲まれて、レールを走らされていく日常。


それを、ただ淡々と“普通”だと思っていた主人公が、

ある時ふと、「違和感」に気づく。


 


その違和感がやがて、

この世界が仮想であり、

“自由の皮を被った牢獄”であるという真実に繋がっていく。


けれど、知ったからといってすぐに動けるわけじゃない。

「知ってしまったこと」と、「動くこと」は、別の話だ。


井上のように。

拓海のように。


そして──

読んでくれた“あなた”のように。


 


誰かがいなくなった。

誰かが残された。

それが意味することは、きっと一つじゃない。


この世界の正体に気づいた者が、“どこへ向かうのか”。

それを決めるのは、この物語じゃない。

“あなた自身”だ。


 


この物語が、

あなたの中の“ノイズ”になってくれたのなら──

それが何よりの喜びです。


最後まで読んでくれて、ありがとう。


また、どこかの“レイヤー”で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ