崩れるセカイの中で
「もはや私にはどんな攻撃も効かん
大人しく『運命』を受け入れろ、それがお前たちの義務だ」
「気にせず撃て、フレイラ!」
キャシィの指示の通り、フレイラはひたすら撃ち続ける
持てる武器を全て一斉に
「───勝てぬと分かっていて足掻くのは『英雄』ではない
それは愚かで惨めな……敗北への恐怖心……
変えられぬ絶対的な『運命』からの逃避に過ぎない……」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!」
弾丸は全て神父の能力に防がれてしまう
様子を見ていたソーニャも援護してくれるが、やはりあの男にはひとつも届かない
まさに神の領域
彼を殺す術はない
傷ひとつ与えることさえ出来ない
キャシィは再び突撃を試みるが───
「しぶといヤツだ」
神父の力によって強制的に地面に叩きつけられた
その衝撃は、彼女の左腕の骨を容易に粉砕してしまうほどのものだった
「ぐああああッ!!」
「……さて、お前たち二人は服従の余地がある……
だがそこの機械人間……ソイツは服従させることは出来ない
服従させられぬ者を生かしておくのは実に危険なことだ
手始めに始末してやろう───」
苦痛に悶絶するキャシィと攻撃をやめないフレイラを無視して、神父はソーニャを見る
ただそれだけ
それだけで、ソーニャは崩壊した
機械としての『死』と人間としての『死』を同時に迎えた
内部からバラバラに砕け散り、
その部品のいくつかがキャシィの目の前にまで飛散した
信じられぬことだった
二人は、ほんの一瞬だが……思考が停止するのを感じた
「……何だ……オイ、これは……」
「ウソ……どうしてッ……こ、こんな……こと……!?」
ソーニャがいた場所には、血のように赤い『海』が広がっていた
しかし二人は、それを血であると認めようとはしない
「……外部から破壊するのは不可能でも……
内部から破壊するのは容易いことだ……その程度の『兵器』は……」
吸血鬼としての圧倒的な力は、ソーニャという兵器を攻略し、ソーニャという少女を殺して見せた
神父の吸血鬼としての圧倒的な力は科学すら踏み越えてしまっていた
「人の発展……科学の歴史も……この宇宙創造の歴史から見ればちっぽけな、下らんものだ
人の本性は悪……私は慈悲の心でソイツを葬ってやったのだ
これからどんな形で人の悪意に呑まれるか分からんからな……」
「……」
キャシィは心を喪失し、外部からの情報を全て遮断してしまっていた
決して『死』への恐れなどではない
単純なこと
やっとの思いで救った一人の少女を、あと一歩のところで突き落としてしまった
そのことへの後悔である
対するフレイラは既に覚悟を決めていた
独善的で自らを正義だと信じているこの凶悪な男を生かしておくことは信条に反する
だから殺す
そう決心していた




