天地狂乱のサイコキネシス
「ボスはいつになったら帰ってくるんだろうな」
「あんな薄気味悪いガキ連れて別荘に行くなんて本当に『変人』だよ」
ローレントの部下たちは人気の多い市街地をパトロールしていた
この街は彼らが守っていると言っても過言ではない
『ボス』がいなくても、組織はしっかりと動いているということだ
(彼らはローレントがどうなってしまったのかをまだ知らないのだが)
「俺たちみたいな汚れ者を拾ってくれたんだぜ
その上にこんな厚待遇だ、今やあの腐れ商人もビックリの金持ちさ
そりゃあ変人じゃないワケがねえよ」
「ちげぇねぇな」
───ドグォッ
「痛ッ───!」
部下のうちの一人が声をあげる
通行人の男と肩がぶつかったらしい
「うおッ、とんでもなく酒臭ェェェ!!
てめー、この昼間っから酔ってやがるなクソ野郎!」
「……おい、コイツどこかで……」
体格の良い二人に囲まれて怯える黒人の男
二人は男の正体に見覚えがあった
「……そうだ、思い出したぞ
組織のカネ持ち出してトンズラこきやがった豚野郎だぜ」
「そーかそーか、なら話は早いな
ミンチにしてやるから裏ァ来なよ」
詰め寄る二人
ついに男はみっともなく逃走を始めた
「ひ、ひぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁ───ッ!」
「あ、逃げやがったぞ
くそ、山ほど持ってるくせに身軽な野郎だ
おい撃てサミュエル!」
「……はぁ!?
ここは市街地だぞ!」
「そんなのは三歳児でも分かってることだ!
だがケジメってものをつけてやらなきゃならねーだろ!」
「ふざけるなよ!
お前は控え目に言ってバカだ!
小便かけてやるから頭冷やせッ!」
などと言い争っていると
男に向かって大型トラックが飛来してきて───
「……あぁ!?
何だ、あれは何なんだ!?」
そのまま男は押し潰されてしまった
サミュエルはよく事態を把握出来ぬまま空を見上げ、
「どこのファンタジー世界に迷い込んだんだ、俺たちは……」
そう呟いた
見上げた空を飛んでいたのは、大小様々な『モノ』
「ああ……控え目に言ってワケ分からん
俺がバカだからかな……」
「……いや、生憎この状況を理解出来るお利口さんはこの世にはいないんじゃねーのか?」
・・・
「……くそ、アタシらが到着するのを待てなかったのかよ
そんなことじゃ神父なんかやってられねーぞ、この早漏」
額から血を流しながら、空に浮かぶ神父を睨むキャシィ
もう既に神父の能力は完成してしまっていた
「もはや全ての抵抗は無駄となった
お前たちに残された道は『服従』のみだ」
「オメーの現実味ゼロのクソ計画に付き合えってのか」
「神によってのみ……人は自らの愚かさを知ることが出来る
これは歴史上最も重要な『儀式』だ
踏み越えた先には大いなる繁栄と進歩が待ち受けている」
「はッ、テメーみたいな三流道化師には出来ねーよ
グダグダとつまんねー言葉並べ立てやがって
アタシは人間が愚かとかどうとか、興味ゼロなンだよ」
キャシィは神父の能力によって浮いている岩を飛び越えて神父に突撃する
神父は極めて冷静に、キャシィの攻撃を回避する
力の差は歴然だ
「人の愚かさゆえに歪みきってしまったお前が言うか」
「自分の計画のために子供を利用しておいてなぁ
今更善人ヅラしてんじゃねーよカス野郎
……フレイラ、援護射撃しろ!」
「……分かったッ!」
フレイラは言われるがままに、持てる力を全て使って神父を撃ちまくった




