拒絶 ③
キャシィはほんの僅かの勝機を見つけていた
しかし、それでもルナを殺せるわけではない
この地上にはルナを殺せる手段はない……その上での勝機だ
先程、試しにルナを蹴り飛ばしてみたところ……ルナは確かに吹き飛んだ
(勿論、そのダメージはキャシィ自身に返されたが……)
ダメージは受けないが、つまり蹴るなり殴るなりして『移動』させることは出来るということ
ならば、勝てる
キャシィはルナをその近くへ誘導することに成功した
ルナはキャシィの策に気づいていないだろう
だからここにいる
「……来るなら来いよ、ルナ……まさかビビってンのか?」
「……この殺人鬼……ブッ殺してやる!」
ルナがキャシィに突撃しようとしたその時───
「アタシの背後にあるモノが何か……お前は分からねーんだろ」
「なにッ───」
キャシィはルナの突進を回避し、その背中を蹴りつけた
ルナは、見知らぬ青い空間に突き落とされ、
「───あッ!!」
もがきながら沈んでいく
ローレントはこの深い水の世界に、たくさんの人間を沈めてきたという
そして、その中の誰一人として生きて戻ってきたことはない……
(……別荘地にこんなものを作るのはマフィアとしても悪趣味だとは思うだろうが……)
「……『海』ってんだぜ、綺麗だろ?
この勝負……アタシはてめーを殺せなかったからてめーの勝ちだよ
気に喰わねぇ……それこそ沈めてやりてー程な……
てめーはきっとその深い『海』の中でも死ねないんだろう
寿命が来るまで永遠に沈み続けてろ、糞野郎」
次第に沈みゆくルナを見下ろしながら、キャシィは心の底からの笑みを浮かべた




