拒絶 ②
「……そこを……どきなさい……!」
「……ルナ……直情的なのは昔から変わらんな……」
建物の中に取り残されたフレイラとソーニャ
その前に一人の男が立ち塞がる
輝くような金髪に、血のような赤い瞳
純白としか言えないほど色白な肌に、十字の傷
あの男だ
キャシィが探し、殺したがっていた男
「私の指示に背いてまで……あの女にはそこまでの恨みがあるということだ
二人の若い娘よ……お前たちはここにいろ……そうすれば危害は加えない」
「……そう、それは残念ねテオドール神父
どかないのなら殺してあげる」
「……知っているのか、私の名前を……キャシィから聞いたのか」
「随分とあなたのことを殺したがっていたわ
でも私が殺すから問題ない
安心して、殺すのは慣れてるから……すぐよ」
フレイラは持っていた拳銃でテオドールの頭を撃ち抜いた───
───はずだった
しかし、テオドールは何事もなかったかのようにフレイラたちの前に立っている
「───Namet siambulaveroin ValleumbraeMortis
non timebomala,quoniam Tumecum es」
「……なッ……、コイ……ツ……!」
「私は死なん……いや、死ねないのだ……
お前たちも聞いたことはあるだろう?
ワラキア公国の悪魔……串刺し公……竜の子……
かの男が築き上げた伝説……かつて誰もが恐れた悪夢の怪物……!
人の命を吸い、永遠を生きる呪われた王……人ならざるモノ
あの奇怪はどこにでも存在する……だから私はここに存在する」
「……まさか……そんな……まさかそんなことってある……?」
「吸血鬼……人を越えた魔物はここに存在するというわけだ……」
「……伝承通りなら太陽が苦手……流水も……
十字架は特に弱点のはず……」
「人伝いに聞いたことをそのまま信用するのは人間の悪い癖だ
当たっているのは吸血鬼というその『名』と、それに相応しい吸血行為だけ……
あとは人の想像だ……太陽は確かに……ほんの少しだけ苦手だがな……
光に当たったところで支障はない」
「弱点なしじゃない……そんなら余計に構ってられないわ……」
「行かせはしない……世界が神を知るまでは……!」
「───ッ!!」
フレイラは恐るべき力で壁に叩きつけられる
何の予兆もなく
突然に
腕の動きも何も見えなかった
だが、確かに壁に叩きつけられているこの状況
「……その動きの速さも……怪力も……吸血鬼……!」
「ここにいろ、という命令が聴けないならば……」
神父は目にも止まらぬ速度でフレイラの腹部を切りつける
「ッあぐぅァァァァ───!!」
傷口から血液が吹き出す
神父は彼女の細く柔らかな腹に吸いつき、血を貪る
片手で首を絞められている
抵抗は出来ない
ソーニャも、先程のダメージのせいか既に動けなくなっている
「はッ……あ……ぁぁ……ぐ……あ、ぁ……」
血を吸われるという慣れない感覚
ビクン、ビクンと……陸にあげられた魚のように跳ねる
「……深く抉れたな……お前の血液は実に美味い……」
さながら悪魔のごとく凶悪なうつくしさ
神父の口はフレイラの鮮血で赤く染まっていた
「禁忌を犯すことこそ人が神に近づく唯一の道……
神は罰を下す……それこそ我々に対する愛だからだ……」




