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怨嗟のクレイジー・メイド

「……寝れないな……全く眠れない

しかしコイツはもう何時間もグッスリだ

天にでも召されたかのように気持ち良さそうに……」


ソーニャは何も気にせずに眠っている


「ウゥゥゥ……ウゥゥゥ……」


「……」


ローレントはソーニャの頭を軽く撫でる


戦争のために生み出された兵器


そうあることを強いられた存在


幸せそうな寝顔は『兵器』には似合わないほど愛らしく


思わずうっとりとした表情になる


しかし、この子供が自分の部下を殺したのもまた事実


複雑な気持ちにならざるを得ない




人は欲望のためならば生命すら冒涜し、禁忌を破る


そしてそれらは常に『正義』という名の大義名分で正当化される


大義名分とは所詮、他人を踏み殺して自らの幸福を得るための免罪符


殺人鬼は……あのキャシィという女は……


きっと大義名分など無くても躊躇いなく人を殺すだろう


今でこそ大人しい様子だが、いずれ誰かを殺すだろう


立ち向かってくる敵ではなく、『味方』の誰かを殺すだろう


……少なくともソーニャ以外だが


「……レー……、ス……ア、ナ、クゥ……」


「……おっと、起こしてしまったか……」


目を開けるソーニャ


しかし様子が変だ


ソーニャは腕をガトリング砲に変化させ、


ローレントの背後の『何か』を攻撃しはじめた


「うおおあッ!?」


咄嗟に危険な位置から退避するローレント


薬莢の音と共に


「……始末……しに……参りました」


機械的な声


そこにいたのはメイド姿の女


平気でそこに立っている


あれだけのガトリングを喰らって死なないとは


たが驚いている暇はない


ローレントは咄嗟に女を撃つ


しかし所詮はただの拳銃


「……無駄です」


「だろうな……で、お前は何者だ?」


「見て分かりませんか?

私の本命は憎き殺人鬼・キャシィです

オマケに時間を裂いている暇はないのですが」


「……ほう、『神父』の差し金か?」


「知っていたんじゃないですか

我々の周辺を嗅ぎ回る連中がいたのですぐに分かりましたよ

そして恐らく……あなたがローレントですね?」


「……何だと?」


気づかれていたのか


既に、神父を探すために動いていたということを


「あなたの部下は簡単に口を割りましたよ」


「……」


「あなたの横にあるソレはソーニャ……単なる破壊兵器……

やれやれ、なぜ破壊的されていないのでしょう?」


「それこそお前が知らなくても良いことだ」


「……では死んでもらいます」


「ああ、そうだな……どうせこうなりゃ生き残れやしない

だが……いずれこうなるとは思っていたさ……『マフィアはただでは死なない』……!」


「……どういうことです?」


「お前にはどうやら撃っても刺してもダメージが通らないらしい

ソーニャのガトリング砲が効かなかった時点で手榴弾を使うことを考えたが……きっとお前にはそれも効かない

なら……毒への耐性は……どうかな?

いくら強靭に鍛えられた肉体でも……毒への耐性は……!

ソーニャは無事だ……私とお前だけが死ねば良い……!」


「ほう、考えましたね……では私は逃げま───」


ローレントには、メイドが慌てたように見えた



メイドの長いスカートを掴み、懐に隠していたカプセルを叩き割る


「させるか……!

この毒はすぐに私とお前を蝕む……逃がしはしないッ……!」

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