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遅くなりました!これからも不定期更新になると思います。すいません。
数日後の朝、いつも通りみんなで朝食を食べていると、お父様が私の名前を呼んだ。
「クリスティーナ、前に言っていた件だが、今日のお昼前にいらっしゃるそうだ。」
「あら?えらく急ですわね?」
「本当はもっと早くわかっていたのだが、一応クリスティーナが逃げないか、とな。」
お父様、失礼ですね。まああの時嫌って即答したからだろうけどね。
「大丈夫ですわ。私は逃げたりしませんわ。第1王子のエドワード様には1度お会いしたいと思っていたところですし。」
「エドワードと会うのか?なぜ?」
私とお父様の話を聞いてお兄様が怪訝な顔で聞いてきた。
お父様の顔が心なしか青ざめたような?お父様が応えようとしないので私が答えることにする。
「エドワード様が私の婚約者なのですって。」
そう私が答えた瞬間、空気が凍った、ような気がしたが気のせいか。それを聞いたお母様はあら、よかったじゃない、と呑気にそう言ったがお兄様の方へ向くとわなわなと震えていた。お父様を見るとあちゃーという顔をしている。あれ?なんかやらかした?
「大切な妹がエドワードの婚約者…?」
そう言って暗い顔をしていたお兄様だが、次の瞬間には顔を上げて満面の笑みになる。
うっあまりの美しさに目がやられる。
「良かったじゃないか!寂しいけどクリスティーナが幸せになれるのなら我慢するよ。」
お父様、ふーっやれやれみたいな感じの顔してるけど、何を心配していたのか。
ていうか、そんな事を考えている場合じゃなくてみんなもう私が嫁ぐみたいな雰囲気なってるけどまだだよ?婚約だけだし顔も知らないよ!?
「じゃあ、王妃様に早速報告しなくちゃ!」
とお母様が手を叩いて侍女に手紙の用意をするように指示を出す。
お母様と王妃様は初等部からの付き合いでとっても仲良しだが、どちらも忙しくなかなか会えないので久しぶりだからはりきって書かなくちゃ!と意気込んでいるのをみると何も言えない。そう思って反論をしようとした口を閉じる。
なんか外堀を埋められていってない…?
❁❁❁❁
朝食を食べ終え、本を読もうとするとアンナに止められた。そういえば着替えに最低三時間はかかるんだよなぁ…お昼前ってことは今から準備しないと間に合わないのかぁー。前世では女子高生らしくオシャレは好きな方だったが、長くても1時間だったのにこの世界では小物と服の種類が多すぎで探す出すのにもなかなか時間がかかるのだ、面倒臭いことこの上ない。
まあ侍女達が勧めてきたものを生返事で返していたら、始めは真面目に考えてくださいと怒っていたアンナだが、今ではもう諦めているようである。アンナとほかの侍女たちが楽しそうに選んでいるところにいるのはなかなか疎外感があるが、その輪の中に入ったら入ったでみんなのノリについていけないので致し方あるまい。
いつも通り暇だなと思いながらぼーっと待っていると、アンナが待たせるのが申し訳ないと思ったのかこっちに来る。
「お嬢様、何か希望はありませんか?せっかく婚約者に会われるのですからご自分で選んでは?」
うーん。実は選びたいとは思っていたのだが、多すぎて自分の服の種類を把握していないのだ。けどわざわざ今更見にいくのもなぁ…。
「とにかく綺麗なものがいいわ。」
我ながら語彙力の無い回答だなぁ…。もう1回言葉を勉強し直した方がいいだろうか。まあアンナも私に細かい指示は求めていなかったのだろう。承知いたしました。と言い戻っていく。まだ5歳なのでこんなもんか?基準がよく分からなくなってきた。それは置いといて、もう本読んでてもいいんじゃないかと思い本を取りに行こうとすると、侍女たちがひとつのドレスを持ってきた。
あれ?いつもよりも早い?
それが顔に出ていたのか、ドレスを持っていた侍女が
「実はアレン様からエドワード様の好みを聞いてもらったんです。」
お兄様…!!さすが…!
そういえばお兄様とエドワード様は友人だったはずだ。
こう思うとうちの家族王家と十分仲がいいんだからこれ以上婚約しなくていいんじゃないか…?まあ決まったことは変えられないよね。はぁ。
気を取り直して持ってこられたドレスをまじまじと見る。ピンクでキュッとしまった部分には大きなリボンが付けられている。邪魔そうだな。やっぱ動きやすいのっていえばよかったか。しかも派手だし…。エドワード様こんな趣味なのか合わないな。
ドレスに着替えてから、髪を整え、アクセサリーをつける。 全ての着替えを終えて鏡を見ると、自分で言うのもなんだがいかにもおとなしそうな美しい貴族令嬢だ。化粧を少ししているのでいい感じにキツめの顔が目立っていない。服が派手なのも幾分かマシになった。しかし性格はおとなしい方ではないので顔と性格のギャップがすごいが、今日は顔合わせだけって言っていたから大丈夫だろう。媚をうっていておいて損はないしね。
❁❁❁❁
着替えを終えると同時に来客を告げるチャイムがなる。
お父様とお母様に呼ばれ、客室に入る。扉を開けると、そこにはお兄様と、お兄様とはまたタイプの違う少し冷たい感じのする美形が立っていた。多分この感じから言ってその人がエドワード様なのだろう。エメラルドグリーンの綺麗な瞳がこちらを見て少し顔をしかめる。なんかお気に召さなかったんだろうか。
そう思っているとエドワード様がゆっくりと近づいてくる。
「エドワード・フローレスです。よろしく。」
「クリスティーナ・オーリィですわ。こちらこそよろしくお願い致します。」
挨拶を済ませると、それと同時に王妃様と王様がうちの両親と一緒に
「あとは2人でお話しなさいね。」
と言って部屋から出ていった。会って早々2人きり!?放ったらかしすぎじゃない?エドワード様の方を見るとムスッとした顔で椅子に座っている。機嫌悪そうだな。気まずいわー。けどこの様子だと相手も結婚したくなさそうだね。顔は綺麗だけど無愛想な人は私好きじゃないからな。性格に難がありそうだし。これは婚約破棄だね。
そうと決まったことだし、本でも読んでおこう。興味の無い人に振りまく媚は生憎持ち合わせていないのでね。そう思い、本を開く。本を読み始めてから数分後、視線を感じることに気づいた。その視線の元を辿るとエドワード様だった。
「一緒に、読みます?」
恐る恐る聞いてみると、顔がぱぁぁと明るくなる。そんなに読みたかったのか?今読んでいるのはただの童話の絵本なのだが、お気に入りで小さい頃からよく読んでいる。
「いいのか?じゃあお言葉に甘えて。」
そう言ってエドワード様は私の隣に座る。
来てもらっておいてなんだが絵本なのでそこまで読むのに時間はかからない。なのでもう物語の終盤だった。初めからもう一度読もうかと考えているとエドワード様が不意に口を開く。
「僕みたいな男がこんな童話が好きだなんて驚いただろう?」
うーん。正直ちょっと思ったけど言ったら不敬罪になったりしないかな…。そう思い何も言えずにいるとエドワード様は特に気にしたふうもなく続ける。
「童話はあまり読まないんだが、前に妹に薦められて読んだんだ。この、最後の姫を助ける光の魔法を使う騎士がいるだろう。そんな風になりたいんだ。」
そう言ってエドワード様が指を指した先にはあるひとりの騎士がいた。このお話は姫が悪いやつにさらわれて、街には魔物が出たが、そのひとりの騎士が光の魔法を使って魔物達を浄化し、姫を助けるという、童話としてはありきたりなものだった。しかし、これは女の子たちが見るようなものなので、他のは見たことがないのだろう。女子からしたら定番のシチュエーションだが男子にとっては新鮮なものだったに違いない。
しかも確かエドワード様の学年では光の魔法が使えるのはエドワード様だけだったとお兄様から聞いた覚えがある。だから余計親近感を覚えるんだろうなー。
「とても素敵ですわね。その夢が叶うように私も陰ながら応援しております。」
これは本心だ。実は私もそんな人が好きなんだよなー。だからタイプが王子様みたいな人なんだよね。友達に言ったら確実に笑われるから言えないけれど。
「ありがとう。僕は君のことを誤解していたみたいだ。」
そう言ってエドワード様は屈託なく笑った。無愛想かと思っていたけどそうじゃないのかしら?
「エドワード様こそ、機嫌があまりよろしくないのかと思っておりましたが。」
「なぜ?」
「だって顔をしかめてらっしゃったじゃないですか。」
「あれはアレンが服の好みを聞いてきたのに、今日はそれと正反対の服を着ていたから嫌がらせかと思ったからだ。」
「じゃあその後話しかけて下さらなかったのは?」
「恥ずかしながら僕はあまり女性と話すのが得意ではなくてな。だからいきなり二人っきりになってどうしようか考えていたところだったんだ。」
なるほど。王子ともなれば会う人も学園以外で限られていたんだろうなと思う。しかしこの顔で女性が苦手とは苦労しそうだね。あれ?そういえば、と首を傾げる。
「お兄様からは赤やピンクなどの目を引くドレスがお好きだと伺ったのですが?」
「そんな事は言っていないぞ?むしろ白や水色などの薄い色の方が好きなんだが?」
2人でうーんと首を傾げる。お兄様が聞き間違ったのかしら?
「まあアレンはそそっかしいところがあるから思い違いをしていたんだろう。」
「そうですね。またお兄様に聞いてみますわ。」
なんとなくお兄様の話で穏やかな雰囲気になっているとお母様たちが帰ってきて、もう帰らないといけないのだという。そうして王家の皆様はうちの両親と次会う約束をして王城に帰っていった。お父様ったら毎日仕事で会うのに何をしているんだか。
次からはエドがいっぱい出てくると思います(多分)
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