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俺くんは国際交流委員28「スポーツ大会1 魅惑の女子バレーボール」

わが校では、夏休み直前に、スポーツ大会が行われる。

生徒たちの1学期の鬱憤やら焦燥やらを発散させる行事だ。


もっとも、夏休みに入っても、すぐ10日間の夏季講習が始まる。

「夏休みじゃないじゃん」(生徒全員の感想)

進学校の辛さが身に染みる今日このごろ、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?。


期末考査の結果に撃沈したショックから立ち上がれるのだろうかと思ったが、意外にあっさりと立ち上がった俺だった。


喉元のどもと過ぎれば熱さを忘れる」

言い得てみょうである。


超低空飛行となった各教科の得点たちを前に、「勉強しなきゃ」という良心からの正当な誘いを憤然と断り、スポーツ大会という甘い蜜を吸ってしまう俺。

ダメですね、これじゃ。

この点数で卒業できるのでしょうか?

いや、そもそも進級も危うし。

「もっとまじめに勉強しとけばよかった」と高校入試の時に思ったはずなのに、わずか一学期でこのていたらく。


あたかも将来の困難を無きが如くに黙殺し、目前のスポーツ大会という快楽に身をゆだねんとする俺くん。

我ながら情けない。

情けないのはやまやまなのだが、快楽には逆らえない。

「夏休みになったらまとめて勉強しよう」といういつもの先送り思考が働き、とりあえずスポーツ大会を楽しむか!という結論に至った愚か者である。

文武両道をなぜ目指さない。


思い起こせば、4月にクラスで花見に行った時、担任は、「スポーツ大会頑張ろう!」とみんなにはっぱをかけていた。

ずいぶん気が早い人だなーと思ったが、時が過ぎてみればたしかにあっという間だ。


スポーツ大会は、1学期の学習を終えた生徒に、しばしの憩いを与えようという意図で計画されたものだから、みんなで楽しくやればいいではないかという考え方もある。

うちの高校はそうではない。

とにかく勝負に燃える。

クラスの勝利に全力を尽くすのだ。

そのため、たかがスポーツ大会ごときに、部活動かと思われるほど練習をする。

学校の施設では間に合わず、近所の体育館を借りてまで、放課後や土日に練習。

練習も、試合も、応援も、真剣勝負だ。


☆☆☆☆☆


放課後、アロハと委員長が校庭でバレーボールの練習をしていた。

まわりには、それを聞きつけた見物の生徒が大勢集まっている。

俺もその中の一人なので、他人を非難することはできない。

できないが、アロハの見守り役として俺はここにいることは了解してほしい。

俺は国際交流委員として、校庭の土手でふたりを見守っている。


ボールがあっちへ行ったり、こっちに飛んだりする。

「キャ」とか「ウフフ」とか「ナイス」とか、女子のバレーボールって、のどかだねー。

上手な子が混じっていると、それなりの迫力が出るのだが、うちのクラスのバレー組は、いかにも女子という感じで、とにかく良かった。(何が?)


土手にズラーっと並び、黙って見ている男子軍団。

全員幸せそうな表情だ。

口元が緩み、だらしない顔つき。

みんなー、口閉じろー。

顔の筋肉が緩みっぱなしだぞー。


そんなことを思いながら、俺は、目の前の美しいものたちを眺めていた。

確かに、女子たちが楽しそうに運動してる姿は、なかなかいーものだ。

どうして女子の笑顔って、あんなに輝いているんだろう。

ふだんそうでもない女子でも(失礼)、笑顔で元気にスポーツしてると、とてもかわいく見える不思議。


それに、もしかしてこれは、高校時代にしか見られないものなのではないか、と急に俺は気づいた。

おれも高校生だから、こうして眺めていられる。

おじさんが口元をゆるめて柵の人から眺めていたら、あっという間に通報案件。

それでは改めて、じっくり眺めさせていただくとしよう。

委員長は動きが機敏で、そのたびにショートボブが揺れる。

それが、鋭角な顔の輪郭を強調する。

なにより今は、黒縁眼鏡を外している。

素顔もなかなかのものだ。

あんなに目が大きかったっけ。


だから、委員長に心を動かされている男子も、結構いた。

みんな、目で追ってるから、すぐわかってしまう。

男子は、単純でわかりやすい生き物である。

委員長は、自分にも男子の視線が集まっていること、気づいてるのかな?


やがて、土手に座っている俺を見つけ、アロハと委員長が駆けて来た。

「ナンダ、ナンダ」と色めき立つ見学男子。


委員長「チョット、休憩」

アロハ「ツカレター」

委員長「これ、持っててくれる?」

委員長は、持っていた水筒を俺に差し出した。

以前にも、彼女のものを預かった記憶がある。

けっこう気軽に人に物を預ける人だ。


委員長「全然やったことないって言ってたけど、アロハもできそうだね」

アロハ「ウン」

委員長「よかった。少しはバレー楽しめそうで」

アロハ「バレー タノシイ」

委員長「スポーツ大会は、楽しまなきゃね!」

アロハ「ウン!」

胸の前で小さなガッツポーズをするふたりの女子。


それはいい。

それはいいんです。

高校生女子の楽しい会話としては。

だけどみなさん、ここにいま、問題が発生しているのです。

ふたりは、上のジャージを脱ぎ始めました。

「暑いねー」とか言いながら。

俺は、からだが固まってしまいました。

(いちおう念のために言っておくが、部分的身体変化ではない)


呼吸とともに上下するアロハのTシャツの胸元。

そして、タオルで汗をぬぐうふたり。

委員長はアロハが拭き残した汗を拭いてあげ、アロハもそのお返しをする。

こんな多重攻撃に耐えられるはずがない。

おそらく今晩、ここにいる男子は全員寝付けないだろう。

罪なふたりだ。


ジャージ越しでも魅惑的なアロハのアロハ。

それがいま、Tシャツ越しとなっている。

身体測定の時の委員長の興奮を、この時俺は、真に理解した。


それと、これは意外だったのだが、委員長の委員長もなかなかのものだった。

控えめではあるが、意外にいいものをお持ちだ。

チラッと見ただけでここまで分析する自分がイヤになる。


水分補給を済ませ、ふたりは再びバレーの練習に戻った。

不思議な安堵を、すべての男子は感じていた。

近くでもっと見ていたい。

でもそれは、理性の崩壊につながる。

「自己矛盾」を認識した瞬間だった。


☆☆☆☆☆


放課後の教室で 、女子たちは大きいうちわに自分の名前や応援のセリフを切り抜いて張り付け、その周囲をキラキラのモールで飾り付けている。

本番では、これを振りながら、声を合わせて応援する。

応援グッズを作るのもアロハは初めてで、みんなと楽しそうに準備していた。


試合中の応援はクラスによって全く違っていた。

メガホンや手で拍子をとり、掛け声やダンスなどのパフォーマンスが行われる。丘の上に位置するわが校のスポーツ大会の声援は、町じゅうに響き渡ることになる。

上級生は、試合に対する意気込みが強く、応援の仕方も堂に入ったものだった。それを見た1年生も、見よう見まねで応援する。

学校の伝統は、このようにして継承されていくのだろう。


それに、開会式で体育館にずらっと並んだ全校生のクラスTシャツは圧巻だった。

各クラスが縦一列に並んでいるので、色とりどりの縞模様になっている。

うちのクラスのTシャツには背文字が入っている。

委員長は「1年1組委員長」、アロハは「Aloha♡」、俺はもちろん「国際交流委員(護衛係)」。


こうして準備は整った。

いよいよ決戦の時だ!

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