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俺くんは国際交流委員10「委員長の英語の理由」

そうして、転校生といえばお決まりの、質問攻めが始まった。

英語が話せる委員長が、代表して質問した。

ふたりが英語で会話し始めると、ふたたび教室内はざわめいた。

委員長の発音は、限りなくネイティブに近かったからだ。

おまけに2人は、とても親しげに話している。

事情を知らないみんなは、あっけにとられるばかりだった。


「使っている化粧品」、「ハワイってどんなところ」、「彼氏はいるか」等々。

彼女は、クラスのみんなにもわかるように、 とてもやさしい英語で答えていた。

一見派手なアロハだけれど、この様子であれば、みんなともうまくやっていけそうだ。


担任が、止まない質問を途中で遮 (さえぎ) った。

「1時間目が始まりますので、そろそろ朝のショートホームルームはこれで終わりにします。みなさん、授業の準備をしましょう。アロハさんには、このあとガイダンスがありますので、皆さんと一緒に授業に参加するのは明日からになります。明日から皆さん、アロハさんと仲良くお願いします。」


クラスのみんなは、それぞれ元気に返事をした。


担任は続けた。

「アロハさんの席は、明日からあそこになります。 近くに座っている人たちは、 よろしくね」

担任が指さしたのは、まさにその席だった。

いやな予感がしてたんだ。

でも、当然そこだよね。

窓際の一番後ろの席。

そこしか空いてないもん。

担任は、アロハに向かって微笑みながら言った。

「隣の彼は国際交流委員です。ちょうどよかったね。」

委員長が、英訳している。

するとアロハは、俺の方を見て、なぜか笑顔で手を振った。

「エッ? どーゆーこと?」

彼女にとって俺は、エロオヤジじゃなかったのか?

それとも社交儀礼?


でもアロハ。

そろそろ手を振るのをやめてくれ。

男子全員の視線が痛い。

「お前みたいなサエないヤツが、なんで彼女に手を振ってもらえてんの?」

「そーだそーだ。ふざけんな!」

「放課後、体育館裏に来い! ゼッタイだ!」


高校生活2日目にして、俺くん命の危機。

今日という一日を、はたして無事に過ごせるのだろうか?

こんなことなら、昨日、痴漢容疑で退学しとけばよかった。

昨日は犯罪者。

(迷惑行為防止条例違反と、それによる退学処分)

今日は被害者。

(男子の嫉妬の炎で焼き○される)

俺の高校生活、目まぐるしすぎる。

まだ2日目なんだけど。


人生って、こんなものなのか?

これが俺の人生か?


朝のショートホームルームが終わるとすぐに、他の男子から逃げるように廊下に出た。

身の危険が迫っている。

入学早々、教室が現場になってしまう。


そんな俺を追いかけてきたのは、委員長だった。

委員長「まさかあの子が転校してくるなんて、思ってもみなかったねー。 ホントびっくりした」

そしらぬ顔で告げる委員長を、俺はわざとジーっと(にら)んでやった。

しかし彼女は、あくまでも知らんぷりを通すらしい。


委員長「でも、こんなに早く転校できるなんて、 ラッキーだったかも」

俺「どゆこと?」

委員長「ホントは入学式の日から登校するはずだったんだけど、手続きがいろいろうまくいかなかったんだって。それで、アロハのママも焦ってたらしい。」

俺「そーなんだ」 (ちょっと冷たく言ってみた)

委員長 (そんな俺を全く気にせず) 「それで、教育委員会で手続きしたり、学校に足を運んだりで、大変だったみたい。昨日もあちこち行ってたそうよ。」

俺「ずいぶんいろんな事知ってるなー。どーして?」

委員長「ほら、アロハとSNSを交換したでしょ。だからそれで、昨日からずっと連絡とってたんだ。」

俺「SNSって便利だね」 (再び、ちょっと冷たく)

委員長「……そろそろ機嫌直してよ。 せっかくアロハが転校して来たんだよ。あたたかく迎えてあげよーよ!」


アロハをあたたかく迎えることは、やぶさかではない。

彼女との因縁についていつまでもこだわるのも、人として器が小さいと思う。

それは自分でもよくわかっている。

ただ、委員長とアロハにうまく立ち回られたというか、俺だけがのけ者・仲間外れというか、そこがちょっと気に入らない。

委員長「アロハはとてもいい子だよ。 彼女と連絡を取り合ってて、わかったんだ」

アロハを気遣う委員長の方こそ、ちょっとだけいい子である。

言わないけど。


委員長「それでさー、あらかじめ相談しときたいんだけど。」

俺「なに?」

委員長「アロハを迎えるにあたって、役割分担を決めとこーと思って。」

俺「役割分担?」

委員長「そう。アロハはまだ日本語がだめだし、日本の学校のこともよくわからないでしょ。今日はオリエンテーションで先生から説明があるけど、その他のいろんな決まり事とかを教えてあげないといけないじゃない?」

俺 「そだね。」

委員長「だから、私たちがアロハをサポートしてあげようよ。何かの縁があってこの学校に集まった仲間なんだから、みんなで楽しくやろーよ。」


委員長って、いろんなことを考えてるんだなーと思った。

昨日会ったばかりなのに、そこまでの気遣いをする人は、なかなかいないだろう。

現に、俺などは、まだ自分のことで精いっぱいだ。

高校という新しい環境に慣れてないし、一日が終わるだけでヘトヘト。

昨日も、風呂から上がったら、何をする気も起きなくて、ノックダウンだった。(妄想長風呂のせいです)

今朝起きられたのも、母の叱咤激励のおかげ。

人のことにまで気を遣うのは、不可能に近い。


委員長はどうしてそこまで、アロハのことを気にかけるのだろう?

そう思った俺は、素直に聞いてみた。

すると委員長は答えた。


委員長「私、ニュージーランドに留学してたの。中学の時に1年半、向こうに行ってた。」


委員長の英語が流暢な理由が、これでわかった。

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