第八十話 一日目 後半
「見ろ!有咲!俺はムキムキ!」
「いえい!じゃんじゃんじゃんじゃーん!」
「•••••••••帝国は魔王国に侵攻するべきだ。今の軟弱な応対では大侵攻の二の舞になってしまう」
俺のギターに合わせ、上裸の男性がマッスルポーズを取る。
それを無視して、全身鎧の人が何かブツブツと言っていた。
「ねぇねぇねえ。光魔法、ホワイトちゃんも使えるんだ!わたしも使えるんだ!見ててよ!『まあまあな光』!」
一方、顔を赤くした耳の長い女の子は光る玉を放つ。
それは、閃光弾のように強烈な光とまあまあな爆発を起こした。
「••••••ひかりすぎ」
「ホワイトちゃんはほかにどういう魔法使えるの!?教えて!」
「••••••『光線』とか」
「『光線』!使うのむずかしいやつ!大変じゃなかった!?」
「••••がんばった。くもからもれるひかりを参考にして••••」
「雲から漏れる光を参考にして!?かっこいい!そんな考え方あるんだ!それで、教わったのを使えるようにしたんだ!」
「••••そんなかんじ」
この女の子と、ホワイトは話す。
その上、結構体をベタベタ触られていた。
所で、師匠は車の上に座っている。
今日は師匠が監視役をしてくれるらしい。
だから、俺達は今遊べて?いるのだ。
「流石多分勇者!ギターは俺より圧倒的に上手い!嫉妬!ぐおお!!」
男性は突如、歯を食いしばる。
何か笑っているのか、悔しがっているのか分からない微妙な表情だった。
「昔、頑張りましたから。というか、そちらも良いポーズというか」
「アヒャヒャ!当たり前だ!!夢にも使うからな!見てくれ!ムキムキ!」
「おー。ムキムキですね!」
ただ笑顔になった男性は、マッスルポーズをする。
かなりムキムキだ。
俺は拍手をした。
「アヒャヒャ!ムキムキだ!」
「その夢ってどんな感じなんですか?筋肉を使うって大変そうというか。聞いてみたいです」
ここで一気に突っ込んでみる。
男性は目立つのが好きそうだし、自分の事を話すのも普通にしてくれるはず。
「聞きたいか!長いが教えちゃうぞ!あれは俺が子供の頃、、」
長かったので、要約する。
子供の頃、男性は田舎で暮らしていた。
そんなある日、冒険者から近衛兵に引き抜かれトップまで行った現人類最強の人のことを聞いた。
これに憧れ冒険者になり、だから今も引き抜かれる為、色んな方法知名度を上げようとしているらしい。
「引き抜かれないかなー!引き抜かれたいな!俺!」
「大きい夢ですね。だから色んな人に絡んでたりするんですか!」
「アヒャヒャ!正解!悲しそうなの無くす目的もあるけど!俺は大体これ!アヒャヒャ!」
男性はお酒を飲み、こう言う。
顔は少し赤くなってはいた。
「アヒャー。俺は教えた!交換で教えてくれよ!大空くんの目的を!なんで危険と有名な勇者案件にわざわざ参加したんだー!?目的があるんだろー?」
「自分ですか?自分はこれが終わったら、生き別れの家族に会わせてくれるって約束で!だから参加したというか!」
「軽い調子で本当に深刻!すまぬ!俺のミス!」
「わたしもー!イリスから聞き出せれば会えるんだー!家出した兄ちゃんに!だから私も家出してきちゃった!家族は見捨てちゃってさ!」
「話に乱入しやがった!まあいいか!おーい有咲!見ろこのムキムキ!」
ホワイトから離れ、顔の赤い女の子が話しかけてくる。
完全にお酒を飲んでいる、というか飲んでいた。
これは、果たして良いのだろうか。
まあこの世界だと良いっぽい?
良いのかも。
「お兄さんを!あなたも家族を探しているんですね!」
「うん!大空も知らない!?「災厄」と『支配』の能力を持つ人!能力二つ持ちは本当にいないから!」
「そんな人がいるのか。聞いた事ないです!」
魔力を二つ持つキメラについては知っていた。
だが、能力を二つ持つ生物もいるのか。
凄いね。
「同じだねー!ねぇねぇ!こうがんの!大空くん!多分勇者の大空くん!わたしと仲良くなろうよ!」
女の子は突然、俺の腕に抱きつく。
そして、見上げていた。
ラッキー!
「俺もそのつもりというか!友達になれたら良いなと!」
「••••••そう」
「やった!ねぇ!見てよ!田中と有咲!取られちゃうよ!ぽっとでの美少年に!かっこいいわたしが取られちゃうよ!その前にしようよ!」
女の子は、男性と全身鎧の人の方を見る。
だが、二人はこれまで通りのことをしていた。
「•••••••なぜ帝国はイリスの処遇を勇者連盟に任せたのか。帝国が被害を受けたという立場からより良い立ち位置を引き出せたはず」
「あひゃひゃ!見ろよ!俺の筋肉!お前も見せろよ!有咲!」
—-
夜が、更けていく。
他の三人は酔い切ったので、車の中で寝かせている。
一方、俺とホワイトは車の裏の扉に入った。
元の世界のトラックで言う所の、普通に荷物が積まれている場所だ。
そこには、イリス?がいた。
両手を黒い箱で繋がれ、椅子に拘束されている。
「げ、ホワイト。この、この、箱さえなければ、神降の勇者と足引の勇者め、、」
白衣を着たままのイリスは、ホワイトを視界に入れ、目を見開く。
直後、全身で黒い箱をガチャガチャとさせる。
しかし、何も壊れなかった。
「••••••ききたいことがある••••わたしについてしってることぜんぶ••••」
ホワイトが一歩近づく。
すると、イリスはもっとガチャガチャさせ始めた。
「なんだよ!ホワイト!こっちくんな!しっ!しっし!ホワイト!しっ!しっ!」
ホワイトが一歩一歩近づくたび、イリスはこんな感じの事を言う。
かなり嫌がっていた。
「••••だめ」
「しっしっ!ホワイト!お前に話すことなんてないわ!どっか行けよ!しっしっ!」
遂に、ホワイトは止まる。
少し呆れたような顔にもなっていた。
所で、俺も何か出来ないだろうか。
ついて来たわけだし。
「自分からもお願いします。何かしてもいいので、ホワイトに過去を教えてあげる事は出来ないですか?」
「アホカスマヌケ勇者が!消えろ!カス!死ね!」
出来なそう。
諦めよう。
「一旦戻ろっか。駄目そうだし」
ホワイトは頷く。
俺は外に出ようと、扉を開けた。
「どっちも二度と来んなよ!ホワイトはしっしっ!勇者は死ね!」
イリス?のそんな声と共に、森に出ようとした。
これにより、車の中に明かりに釣られた羽虫も入ってくる。
「あ、虫、虫じゃん!くるな!くんな!ホワイト!助けてー!!私虫嫌いなんだよー!!ホワイト助けてー!」
突如、イリスはまたガタガタし始める。
それを聞いて、ホワイトはイリスの方を向いた。
「•••••••」
ホワイトは非常に冷たい目をしている。
虫をどかす様子はない。
これって、やった方が良いのか?
確かに媚は売れるし、過去を聞き取れる可能性は増えるかも。
「まあ、そのぐらいなら。こう使うのかな。『支配』」
『支配』の能力を羽虫に使う。
これで、羽虫は俺の思考次第で自由に動かせるようになった。
そのまま、扉から出す。
すると、イリスは目を見開いた。
「••••君。面白いね。名前は大空千晴、だっけ。フレジアから話は聞いてる」
「?。はい。そうです」
突然、イリスは名前を言って来た。
どうしたのだろう。
イリスは勇者の俺を嫌ってそうだったのに。
もしや、媚売りが功を奏したか。
今、俺から聞けばワンチャン行けるかも。
「けど、しっ!すぐ能力変えろ!しっしっ!私はその能力を認識したくも無い!しっ!」
行けなそう。
とりあえず、魔力は変えた。
「よしよーし。嫌いなんだよね。虫とそれ。腹立つんだよ。二度と見せないで欲しいわー」
やっぱり行けそう。
俺はホワイトの方を見る。
冷たい目のままホワイトは、頷いた。
「••••••もういっかいきく。わたしのこと、ぜんぶおしえて」
「は?嫌に決まってんだろ!しっしっ!どっか行け!ホワイト!しっしっ!!」