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第五章 完





 「大空!まさか見送りに来てくれるなんて!よくわかったな!ホワイトさんも居て欲しかったけど!また会おうな!!わはは!」


 「大空さん。お迎えありがとうございます。また会う日を、こちらも楽しみに」


 何かユアとエゼルさんは故郷の国に帰るらしい。

 皇女の人からこれを聞いた。


 だから、駅のホームまでユアとエゼルさんを見送りに来た。

 普通に機密らしく、見送りの人は俺しかいない。


 つまり、ホワイトは来ていなかった。

 ホワイト曰く、自分が行くとエゼルさんが嫌がりそうだからとの事。 

 残念。


 「それとですけど、見舞いのチョコレートをありがとうございます。これ、お返しのバターサンドセット二つになります。ワインに合うと聞いて」


 「はっはー!ありがたい!僕は何もお見舞いの品を渡してないがな!すっかり忘れてた!ごめん!!」


 「まあ、全然。人間はすっかり忘れる事もあるし。そんな事もある」


 頭を下げて謝るユアと、普通に立っているエゼルさんにそれぞれ渡す。

 昨日の内に帝都のスーパーで買っておいた。


 「最後に電話番号とか聞いても大丈夫ですか?前遊んだ時にうっかり聞きそびれてしまって」


 「はい。勿論ですよ。私の個人的ないつでも電話して来てくださいね」


 エゼルさんも帰る前に色々することがあるらしく、中々話せなかった。

 故に聞くのがここまで遅くなってしまったのだ。


 「電話番号って、ユアにも聞いて良い?余裕出来たら武術の事とか聞きたいなと」


 「僕は少し、無理だ、、父様に使わせて貰えなくて、だが手紙なら問題なし!いつでも歓迎!」


 「了解。どこに送る感じ?」

 

 「直にここに送ってくれ!僕の実家だ!僕はずっとそこに住んでるからな!」


 「そ、そっか、これは一体何処の、?」


 ユアは鞄から地図を取り出し、ある所を指差す。


 俺はまじまじと地図を見出す。

 何ちゃら城と書かれていたが、それの位置がよく分からなかった。


 「••••勇者の方ですから、そのような言い方では通じませんよ。きっかり住所を伝えなさい」


 「通じないのか、、あれ?実家の住所、何だったけ?52の6だっけ?神聖共和国の、、何だっけ?」

 

 ユアは額を抑え、悩み始める。

 それを見てエゼルさんは溜息を吐いた。

 

 「••••はぁ••••ユアの実家の住所は知っていますので、私が教えますよ。こちらへ」


 エゼルさんに手招きされ、俺は近づいて行く。

 そして、虚無から現れたメモを受け取った。

 これには、エゼルさんの電話番号とユアの住所が書かれていた。


 「最後に。大空くん。お別れのハグもしませんか?貴方方も用事があるようで、実際に会える機会は暫く無さそうですから」


 「••••こちらこそ。俺もやってみたいというか」


 エゼルさんが小さく腕を広げる。

 こうして、抱きついて来た。

 俺も抱き返す。


 温かい。

 結構落ち着く。


 「やはり、ハグは慣れているんですね••••大空くんの驚いた顔、見たかったです••••」

 

 耳元で囁かれる。

 少しくすぐったかった。


 「こういうのは経験があって。エゼルさんの間接あれと一緒かな」


 「えっ」


 エゼルさんは急に離れる。

 不思議に思って顔を見ると、エゼルさんは目を大きく見開いていた。


 ?。

 何でだろう。

 不思議だ。

 

 「ぼ、僕ともしないか!?大空!気色悪いホモみたくなるが!準備万端だぞ!」


 「あ、はい。それならしようかな」


 妙に興奮しているユアが、そう言ってくる。

 謎の反応をしたエゼルさんは一旦スルーして、普通に抱き合う。


 「良い匂いする!やばい!違うぞ!僕は気色悪くない!これは友達のような安心感!!うおー!!!」


 そのまま、謎にユアがグルグル回り出す。

 俺の足も少し浮き、同じく回り出す。


 まるで、人力メリーゴーランド。

 エゼルさんはしゃがんで俺の足を避ける。


 意外とこういうのは新鮮だった。

 暫く続ける。


 「おえ、ぎもちわる。やり過ぎた、、」


 「さ、三半規管にダメージが、、」


 そのせいで、酔った。

 ユアは青白い顔になり、今にも吐きそうだ。


 「••••••何やってるんですかね。はい」


 俺とユアの肩をエゼルさんが触る。


 次の瞬間、気持ち悪さが消えた。

 エゼルさんの魔法のお陰だろう。

 これに追加して言ってみよう。

 原因はこれかもしれない。


 「ありがとうございます。後、さっきの経験ありの部分は大体が友達で。本当にエゼルさんと似たような感じというか」


 「••••••成長した大空くんに慰められましたね••••自分で思っていたより、私は入れ込んでいたようです••••」


 このタイミングで、ホームに電車が入って来る。

 風が髪や服を大きく揺らした。


 「変えます。は!」


 エゼルさんはそう言い、自らの頬を叩く。

 直後目をぱっちりと開いた。


 謎の行動である。

 だが、それは少し微妙だった。


 「••••あの、どちらかと言えば、このままで大丈夫というか。良ければ、この関係で行きたくて」


 「••••大空くん••••そうですか••••」


 俺としてはこのままの方が良かった。

 何処か安心する。

 こう感じるのは、一人より二人がいい。


 「も、もしや、大空は良い関係になったのか、?エゼルワイス様と?無いか。大空はもっと良い人選べると思うぞ」


 「そこまででは無いですけど。貴方に言われると腹が立ちますね」


 この間に、電車のドアが開く。

 青筋を浮かべたエゼルさんはそちらの方を向いた。


 「では、今のままで。考える事は同じでしたね。また遊ぶ日を楽しみに。いつでも電話してきて下さいね」


 「大空!僕も楽しみにしてるぞ!次会う時にはもっと色んな武術を身につけておくからな!また武術を高め合おう!」

 

 手を振りながら、ユアとエゼルさんが大きい荷物を持ち、電車に乗る。

 

 暫くは会えないだろう。

 二人は忙しそうだし。


 「自分も楽しみに。色々出来るようにしておきますから」


 電車のドアが閉まった。

 そして、電車が動き始める。



 すぐホームから出て行った。



——




 俺は公衆電話のボックス内にいた。

 ホテルからはもう出ている。


 それ故に荷物を持って、目的地の近くにあるそのボックスに入ったのだ。


 「そうなのね。見た通り、テェフルに重傷を負わせた挙動不審才能カス男以外とも仲良くなれたのね。友人として、あなたが死にたくなるぐらいに賞賛してあげたいわ。死ね」


 「こ、こう、一人一人が違って、それぞれ特別に為になると言うか。仲良くなれたのはフレジアのお陰もあるって。本当に」


 「都合の良い言動ね。本心かしら。「フレちゃーん!どこの誰と電話してんのー⭐︎貰い!」邪魔しないで。「ぐえ⭐︎パス⭐︎」「••••」」


 受話器から、腹を蹴ったような打撃音が聞こえた。


 すぐ後には、爆音で音楽まで流れ出す。

 かなりロックな音楽だった。


 「「緩急」。汚いわね。ヘッドホンと電話口を直でくっつけるなんて。それで何の話だったかしら?私のお陰で仲良くなれたって話?」


 「そうかな。多分そうかも?何やかんやあって。所で、そっちはどう?あれから雷魔法の後遺症とか出たりしてない?俺もまだ雷魔法は使いこなせてなくて」


 「無論平気よ。もうピンピン。能力の修行も出来るぐらいよ」


 良かった。

 手加減は余りした事が無かったから、かなり怖かったのだ。

 雷は後から後遺症が出て来てもおかしく無いし。


 「あとごめん。暫く電話出来ないかも。ちょっと長期の用事が出来ちゃって」


 「••••••そう。まあいいわ。用事が終わったらすぐに電話しなさい。会話だけでも楽しいわ」


 「そっか。それなら、大体四日後ぐらいになる予定かな」


 帝都から姉ちゃんのいる市へまでの移動時間は、大体これぐらいらしい。

 さっき、冒険者ギルドでクエストを受けた際に聞いた。


 「待つとするわ。それで、最近の私の話ね。私は「変異」を使いこなし始めてるわよ。既にもう前戦った時より強いわ。動いている時でもバリアを貼り続けられるのよ」


 「おー。凄い。才能を感じる」


 「そう。凄いわ。そっちはどうかしら。自慢話も聞いてあげるわよ。」


 この後は、暫く近況報告をし合う。

 お互いの事を知り合えて仲良くなれるし、為になる情報も交換出来た。


 かなり良い感じだ。

 もし次にフレジアと戦う時の、対策もしやすい。

 

 「そろそろ時間だから切るね。電話に付き合ってくれてありがとう。また」


 「また掛けてきなさい。いつでも歓迎するわ」


 受話器を、元の有った場所に戻す。

 ガチャという音が鳴った。



 俺達は現在、帝都の端っこに来ている。

 この前クエストで来た森辺りだ。

 そこの公衆電話でフレジアに電話を掛けていた。

 

 「••••かち」


 電話ボックス内にいたホワイトがボソッと呟く。

 

 何か一緒に入りたかったらしい。

 理由は不明だ。

 ホワイトはこんな感じの言動を偶にするし、そんな特徴がある人なのだろう。

 だからスルーで。


 と前までは、思っていたが。

 何かしら原因があるのだろうか。

 探ってみようかな。


 「まあ、あっちだったか。集合場所。廃屋の横の」


 「たぶんそう」

 

 とりあえずこれは後回しにして。

 二人で公衆電話を出、集合場所に向かう。

 このクエストには、協力者が何人かいるとの事。


 「ここか。集合場所」


 「そう。なにもない」


 目の前にはただの森が広がっていた。

 それを見て、ホワイトはワクワクしたように呟く。

 ただの森だからこそ、という感じなのだろうか。


 突如、車の走ってくる音がした。

 それは森の中から聞こえてくる。


 「••••うわ」


 「?。何かあった?」

 

 何故かホワイトは本当に嫌そうな顔になる。

 こんな嫌そうなのは、初めて見た。

 

 すぐ、目の前に音源車が止まった。

 車の窓が開く。


 運転席には19歳ぐらいの金髪の女性が座っていた。


 「お、おーっす。お、大空とホワイト。久しぶりー。前は襲いかかってごめんなーつって。関係ねぇが、このクエスト、オレが監督するって聞いたなー。まさか、お前らを襲ったオレがなー。ありえないと思わねぇかなーつって」


 師匠だった。


 おおー









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