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第六十八話 帝城をガン見






 「帝城か。ここから見ると更に大きい」


 「そうですね。近くに来て見てみると、更に、大きいです」


 俺達は、帝城の近くにある喫茶店に入った。

 そこの二階のカフェテラスに陣取り、早めの昼食を取っている。

 俺は多分サンドイッチと、エゼルさんは大きい推定パンケーキを食べていた。


 この喫茶店は、カフェテラスから見える帝城が見所らしい。

 そして、その帝城は大きな城壁と堀に囲まれている。

 城壁越しでも見えるほど、帝城は大きい。


 「もうじき、交代式も始まりそうですね。楽しみです」


 「俺もそうというか。どんな感じなのか」


 追加で言うと、ここからは帝城に繋がる大通り全体がよく見える。

 このカフェテラスで、俺達は交代式を見る予定だ。


 交代式とは、何か帝城に勤めている近衛兵?が音楽と共に、交代するのを見守るものっぽい。

 その見所は、偶に皇帝の人と人類最強?の人が出て来る事、と聞いた。


 「ですが、残念です。その近衛兵も現在過半数が遠征中の上、そのトップである人類最強の彼も、皇帝の方も今帝都にいないと聞きました」


 「へー。本当に残念」


 それは、残念。

 皇帝の人と人類最強?の人が出て来る時はいつもより派手になるらしいし。

 あんまり見る機会がないのに、今回見れないのは残念だ。

 

 「絶対本心じゃありませんよね。真面目な大空くんにそんな対応をされて、私は悲しいです」


 エゼルさんは少し俯き。

 手で涙を拭う動きをし始める。

 それを、暫く繰り返す。


 これって、泣いているのだろうか。

 また冗談かもしれない。


 エゼルさんは主導権を握りたがる傾向があるし。

 だが、人間って謎に突然泣き出す事もある。


 分からない。

 だったら、直接チェック。

 本当に泣いていたら多分俺のせいだし謝ろう。

 違ったら、冗談に乗ろう。


 俺は少し椅子から立ち上がる。

 そうして、エゼルさんのサングラスの下の目を見に行く。


 「••••バレてますか」


 少し上に視線を上げたエゼルさんと、目が合う。

 涙は全く流れていなかった。


 「やりますね。私の嘘泣きに気が付くとは。先程からの成長を感じます。想像を超えてきまた」


 「そんな人だっけと思って。合っていて良かった」


 「ここまで読まれていたとは。完敗です。敗者な私は、帝城パンケーキを差し出します。交代式を見ながら食べれば、二倍美味しいと書かれていましたよ」


 エゼルさんは俺の前に五段のパンケーキを差し出す。

 少し食べられている。

 更に、パンケーキにはチョコで出来た帝城と、とんでもない量の蜂蜜と生クリームが乗っていた。


 「間接あれになるけど大丈夫?それだったら食べるけど」


 「••••そう濁されると照れますね。食べかけの部分、切り分けても大丈夫ですよ。ですが、お願いします。朝食もあまり取らなかったので行けると思ったんです。だけど余りに甘くて。胃に来ちゃいました」


 「?。そうなんだ。大変な」


 くれるなら、ありがたく貰うべきだ。

 微妙にアウトな気もするが、食べ始める。


 ナイフを持ち、パンケーキ?を切り分ける。

 そのまま、口に入れた。


 相当美味しい。

 だが、甘い上に量が凄い。

 食えない量では無いが。


 「パンケーキ食べ中ですが、交代式が始まりましたよ。今回、聞いたよりもかなり大規模ですね」


 俺もパンケーキを食べながら、大通りを見る。


 真っ赤な服を着、虹色の襷を付けた人達が、道の真ん中を規則正しく練り歩いていた。

 最低二十人はいるだろうか。


 「、、凄い大人気。観客も元気だ」


 その道の両端には、野次を飛ばす多くの見物人がいた。

 彼らは各々、魔王国と戦争だ、皇帝陛下万歳など、思想を叫んでいる。


 「••••おっしゃる通り、凄い人気ですね••••••これには近衛兵と国民の、国民意識をさらに高める効果を期待しているのでしょうか••••」


 エゼルさんはボソボソと呟き、悩み始める。

 俺は急いでまた口に入れていたパンケーキを食べた。


 「、、皇帝自体が権限を持っていない帝国だからこそ、必要だったって感じとかって聞きました」

 

 「どれもありそうですね。成程••••」


 まだエゼルさんは考る。

 俺はパンケーキを食べた。


 「••••それでですが、知っていますか?今城から出てきた橋は有志が勝手に手入れしてくれているらしいんですよ」


 初めて知った。

 へーそうなんだ、としか言えない。


 だが、反省を活かそう。

 パンケーキを飲み込む。


 「、、そうなんだ!驚き!びっくり!!初めて知った!!流石!!知識が深い!!」


 「ふふっ。余りのオーバーリアクション。「へー。そうなんだ」で大丈夫ですよ。この知識なんて一生使いませんから」


 そうなのか。

 やり過ぎた。


 「分かった。そういうのが良いんだ」


 「そこを「へー。そうなんだ」で返さないとは。成長を感じますね。素晴らしいです。ですが、今の私の言動をあまり真に受けないで下さいね。責任は取れません」


 「へー。そうなんだ」


 「はい。そうなんですよ。あらかじめ、予防線を張っておきました」



—-



 交代式は続く。

 橋を渡って門の開いた帝城に入城した近衛兵は帝城の庭で様々なパフォーマンスを披露したり。

 庭に待機していたから兵士達と何かを宣誓し合ったり。

 色々していた。


 それをカフェテラスから見る俺達。


 「凝っていますね。最後の宣誓直前に、混合魔法で虹を出すとは。洒落ています」


 「確かに綺麗。虹自体は火と水の混合魔法で出している感じかな?」


 帝城の上には、大きな虹がかかっていた。

 非常に綺麗だ。


 恐らく火と水の混合魔法で、空気中の水蒸気を増やし、虹を人工的に発生させているのだと思う。

 それをするには、魔力を二つの属性に変換し、それらを一つに混ぜ、それを混ぜた物を良い感じに加工し、最後出したい場所に放出する必要がある。


 要は難しい。

 俺でも全然使えないものなので、かなり凄い。

 

 「いえ。水と空の混合魔法でしょう。それによって直接虹を出現させていると。かなり高度です」


 「空魔法だけでも難しいって聞くのに。凄いな」


 空魔法は人間があまり認識出来ないやつを出す魔法と聞いた。

 とても強い人は重力を操れたりするらしい。

 だからこそ、魔力をどう変換してどう加工すればいいのか殆どの人は理解しづらいと聞く。


 つまり近衛兵の人、凄いね。

 そして一卒平なのもやばいね。


 「これで、最後でしょうか。中々見れたものですね」


 最後に、最後の宣誓の後帝城の庭で、近衛兵達が魔法を使う。

 そうして、火や水や魔獣を打ち上げていた。


 これで、交代式は終わりだ。

 後は今まで城を守っていた近衛兵達が、兵舎に戻って行くのみ。


 「見れて良かった。次見る予定の、劇も本当に楽しみになったわ。予約を取ってくれてありがとうというか」

 

 「いえいえ。私も見ておきたかっただけですから」


 結構、勉強にもなった。

 空魔法はかなり便利そうだ。

 あんな使い方もあるのか。


 「所でですが、実は。私も虹であれば簡単に出せるんですよ。見ます?」


 「見たい。どうやって出すの?」


 エゼルさんの発言に飛びつく。


 これで近くで見れれば、より強くなれるかも。

 後、会話で主導権に渡しておけば、仲良くなれる可能性があがりそう。


 「ふふ。簡単ですから、大空くんも私の魔力をコピーして、私の真似をしてみてください。初めにですが、自分の体内から魔力を放出してみましょう」


 エゼルさんは片手を広げ、魔力を放出する。

 俺もエゼルさんの魔力をコピーした後、同じように魔力を放出した。


 「次に。虹がかかっている姿を思い浮かべます。今回では、手のひらの上に小さい虹が出ているイメージで行きましょうか」


 言われた通り、出ているイメージをする。

 目を閉じ、思う。


 手のひらに虹がかかる。

 ••••••。


 「出きました。これが虹です。綺麗ですよね」


 目を開け、エゼルさんの方を見る。

 手のひらの上に、小さい虹がかかっていた。


 ?。

 これだけだろうか。

 まだイメージしただけだなのに。

 こっから魔力を変換したり、加工したりしたいのだろうか。


 「大空くんも完璧ですね。綺麗な虹です。天候を我が手にという風で気持ちも良いですよ」


 「あ、出てた」


 俺も出来ていた。

 よく分からないが、出来た。

 手の上に小さい虹がかかっている。


 よく分からないが、やったね。

 出来る事が増えた。


 「教えてくれてありがとう。これってもしかして、他にも物も出せる感じ?虹が出せるんだし」


 「はい。勿論出来ますよ。心の中でイメージしまして。花束の完成です。中身を作るのには細かく詳細まで設定しないといけないので、これはただのレプリカですが」

 

 そう言いながら、エゼルさんは今出した花束を渡してくる。

 花束はプラスチックで出来ており、さらに中身は空洞になっていた。


 「全然。これでも全然凄まじいというか。人に花の形をした物を渡したい時にすぐ渡せそうで便利」


 イリカのお別れ会の時に、これが出来たら良かった。

 ネックレス修理用の花が特に見つからず、お見送り会が終わってからも探した記憶がある。

 大変だった。

 

 「そんな限定的な状況ありますかね?ありますか。唐突にプロポーズしくなった時とか。いや、ありませんね。これは」


 「唐突に何かしらの式をしたくなった時とかかな?前偶然あって」


 「大空くんにはありました。私の勘違いでしたね。ですが、気をつけて下さい。私達は人間なので、イメージ内で物を完全に再現するなんて事は出来ませんから」


 「ありがとう。分かった。気をつける」


 金とか銀とか鉄をこんな感じで量産出来たら、色々便利かなと思ったが。 


 それは出来ないっぽい。

 まあ、あとで一回とりあえず試してみよう。


 「所でですが、大空くんって彼女さんとか居たこと無いんですかね?私と遊んでいる時点で、今は居なそうですが」


 急にエゼルさんは訪ねてきた。

 かなり疑問そうだ。


 「居たことないかな。そう言うのはもう少し後でも良いかなって」


 「大空くん、相当モテそうですけどね~~。告白されちゃった事とか本当に多いんじゃないですか?」


 「まあ、何回かは」


 あんまり調べた事がないから分からないが。

 割とモテる方なのかなとは思う。


 「ズバリ。一番印象に残った告白は?」


 「あれかな。生徒会長をやっている時に、主務に告白された事。夕方にすごく好きだって言われて」


 この世界に来る前日に、主務からされた告白だ。

 生徒会活動後の夕暮れ時に二人で帰っていたら、突然言われたのだ。

 割と予想外だった。


 「彼女が居ないという結果を聞いた後に聞くと、末路が想像出来ますね。振っちゃいましたか」


 「その時は少し忙しいのもあって。断らせて貰った感じ」


 そんな感じで断った。

 するとすぐ主務はいつも通りに戻り、そのまま二人で帰ったのだ。


 あの時も、結構良い感じに断れたと思う。

 まあ、普通に翌日サボられたけど。


 「けど、エゼルさんもモテそうなような。かなり美人さんというか。優しくもあると言うか」


 「真っ直ぐ言われると、照れちゃいますね。ですがあまりないですかね。立場もありますし」


 「なるほど、エゼルさんって国での立場は偉い方だったから」


 「偉いと言いますか、トップで。ぶっちゃけ独裁者です。だから怖がれてるんですよ~~」


 エゼルさんは机に顔をつける。

 そのまま手を伸ばし、こう呟いた。


 「けど、凄いと言うか。独裁者をやれるだけでも大変そうと言うか。何でなろうと思ったのか聞いてみたいと言うか」


 「フォローありがとうございます。ですが、無理しなくて大丈夫ですよ」


 「あ、いや、全然。本当に聞いてみたくもあって」


 「そうなんですか、、だったら大空くんには特別に、話しちゃいましょうかね。私が何故トップになろうか思ったのか」


 パンケーキも結構残っているし、時間もあるし。  聞いてみたい。

 仲良くなるチャンスだし、後学の為でもある。


 「ありがとう。聞きたい」

 

 「はい。まあ、ぜんぶ私自身の為なんですけどね。私は国が好きだったので、自分の力で発展させてやろうかなと考えまして。手を挙げましたね」


 「それでも凄いと言うか。大変な内容をこなしていそうで。色んな要素が一人に集まってくるというか」


 「大変ですよ~~。独裁者なのに、部下達は一筋縄で行ってくれなくて~~。面倒くさくて仕方ないです。ですが、自分で手を挙げたのでやり通そうかな~~と」

 

 「成程。責任感があって。凄い」


 こういう面もあるから、国を纏められているのだろうか。

 もし次仕切る事があったら、真似してみようかな。

 良い感じに行ける可能性はある。


 「こんな褒められると照れますね、、あれ?大空くん。最後の一口ですか?」


 「うん。これで終わり」


 色々話しながら、俺はパンケーキを食べていたのだ。

 そのパンケーキは、今食べた一切れで最後だった。


 「でしたら、そろそろ。次の場所に行きますか。交代式も終わりましたから」


 「分かった。次は帝都の中心を見に行くんだったっけ」


 「そうですね。帝都の中心部でショッピングをして、最後に近辺にある劇場で劇を見る予定ですかね」

 







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