第六十七話 行けました
昇格試験から二日後。
手紙や電話で何回かやり取りして。
エゼルワイスさんと遊ぶ予定が出来ました。
いえい。
今日はその当日。
俺達のホテルの前で、待ち合わせだ。
エゼルワイスさんが車で迎えに来てくれるらしい。
「おはようございます。大空さん」
暫く経つと、小さめな車が目の前に止まる。
その運転席に乗っているのは、サングラスをした銀髪の綺麗な女性。
エゼルワイスさんだった。
「おはようございます。今日は本当にありがとうでもあるというか。ありがとうございます。エゼルさん」
「いえいえ。こちらこそ」
エゼルさんとは、今日行きたい所があるらしい。
偽名を使えとの事なので、呼び方はエゼルさんだ。
一方、ホワイトは今回は来たがらなかったから、ホテルで留守番である。
と思っていると、エゼルワイスさんが手招きして来る。
「行きましょう。そして、今日はお試しですが、最初から大空さんも友達気分でお願いします。気を抜いても一緒に居られるのが友達だと、私は思うので」
「了解です••••分かった」
「はい。では、大空くん。まずは帝国の皇帝の城、帝城へ。楽しみましょうね」
「おー」
—-
ビル街の広い道路を、エゼルさんの運転で走っていく。
俺とエゼルさんはさっきその辺の店で買ったパンを食べていた。
「それで、勝負はどのようになったのですか?」
「姉ちゃんが勝った者こそ正義、怒らないでよ?って言いながら足で揺さぶって来て。俺はもうびっくりして。結局その時は俺が運良く勝てたんですけど」
「はい。そうしてどうなったのですか?」
「その二日後だったかな。また、勉強中の俺の部屋に姉ちゃんが来て。次はこの格闘ゲームをより大きいテレビがあるリビングでみんなの前でしようって」
「大空くんは姉弟仲が良かったんですね。羨ましい限りです」
「そうかも!」
エゼルさんは、元の世界にいた頃の俺の話が気になるらしい。
だから俺が中学一年生の時姉ちゃんと流行りのゲームをした話をしていた。
かなり懐かしい。
「エゼルさんは兄弟とかいる感じで?聞いても大丈夫なら知りたい」
「そうですね••••私自体は一人っ子ですが、妹のように思っている従姉妹がいます」
「年齢を聞いても?」
「ん~~••••良いですよ。彼女は大体180歳でしょうか」
「180歳。180歳。そ、それだと仲良くなるのも必然というか」
一瞬戸惑ったが、思い出した。
彼女らたちにとっての180歳は、俺達にとっての18歳ぐらいだ。
この世界だと通常?の人種に比べて、成長速度も老化速度も十倍遅い人種がいるっぽい。
たとえば魔人族やら雷人族やら。特別な魔法を使える人種とか。
エゼルさんもユアも多分特別な魔法を使える人種っぽいし、その親戚もそうなのだろう。
「それが、そうでも無いんですよ。実は見た目以上に離れていまして。故に最近は全然会えないんですよ。従姉妹が大学に入ってから、疎遠になってしまって」
「自分も姉ちゃんが高校に入ってからは前よりは疎遠になって。他からもそんな話も聞くので、ある種の必然かなと」
「どこの世界もそんなものですかね••••なんと言いますか、成長が嬉しいと言うべきなんでしょうが、、」
エゼルワイスさんはハンドルを持ちながら、そう呟く。
それを俺は助手席から見る。
「そして、関係ありませんが、後ろの車、煽ってきていませんか?」
エゼルさんに言われ、後方を見る。
この車のすぐ後ろに、大きめな車がぴったりとくっついていた。
それの運転席には、大柄の男性が乗っている。
彼と目が合う。
「あれ。中指を立てられた」
「何でしょうか。私の運転に文句でもあるんですかね」
大きな車は加速しながら、隣の車線へ移る。
こうして、俺達の真横に来た。
最後に、運転席の男性は俺達に中指を立てまくりながら、幅を寄せてくる。
すると、こちらの車も加速した。
時速はメーターでは百キロを超えている。
「?。だ、大丈夫?法定速度をぶっちぎってるけど」
「無論、大丈夫です。心配する必要はありませんよ。私はゴールド免許ですから。これは、ギリギリセーフです」
そう言いながら、クラクションを鳴らす。
更に窓を開け、男性に対して中指を立てた。
直後、 大きな車の前に、無理な割り込みをする。
「え。え?大丈夫なんですか?」
「もちろん。あのような手合いに下手に出ても、増長されるだけですから。それに、やられっぱなしは心に来ますよ」
そう言いながら、エゼルさんはアクセルを踏み込んだ。
隣の車との差が、どんどん開いていく。
「これぞ、私のパワー。思い知りましたかね~~」
「あ。クラクションが滅茶苦茶に鳴らされてる」
「また返してやりましょう。クラクションで」
——
暫く走り帝城近辺の駐車場に車を停める。
そして、今車を降りた。
帝城はここからでも大きく見えた。
本当に大きそうである。
「気分が良いですね~~。大空くんはどうです?」
エゼルさんは快晴の中、駐車場で背伸びをする。
ついでに俺も背伸びをした。
「俺も良い感じで。エゼルさんの色んな一面が見れて良かったかなと」
それと口には出さないが、この世界って全体的にコンプライアンスが緩めな事を再認識した。
いや、闘技場とかもあるし、緩めという次元でも無いか。
多少合わせた方がいいのだろうか。
「大空くんにそう行って貰えるのは嬉しいですが。遠回しに馬鹿にしていません?」
「あ。え?普通に本心で。余り深く考えないで」
「ふふ。すいません。冗談です。行きましょう」
手で口を押さえたエゼルさん。
帝城に向けて歩き出す。
冗談だった。
真に受けてしまった。
反省。
というかエゼルさんの人格が、色々普段とは違う気もする。
気を抜くとこんな感じの傾向なのか。
分かってきた。
「所で、大空くんは知っていますか?帝城について」
エゼルさんが帝城に手を向ける。
多少は調べていた。
「何となくは。皇帝の人とその娘と近衛?騎士団と、それらの世話をする人達が住んでいるとか。その上、帝国の象徴だとか」
「大正解です。よく覚えてますね」
ホワイトと色々予習した。
そして、その予習の中にはこんな情報も。
「それで、建築されたのも五百年前ぐらいだったってのも聞いて。その時から今の皇帝一族が住み始めたと」
「はい。その通りです。元々の統治者一族の住処の城があった場所に、新しく城を作ったんですよ。権威付けの為にですね」
「そうなんだ。初めて知った」
ホワイトの読んでいたどの本にもこの情報は無かった。
良い情報だ。
伝えておこう。
「ここまで知ってるとは。大空くんは歴史に興味あるんですか?将来は歴史学者を目指していたり?」
「まあ、そこまでではないですかね。ホワイトが興味あるからって感じで。俺としてはそこまでで。興味ない訳では無いけど」
常識として最低限は知っておこうかな程度。
俺自身はあまり興味はない。
こんな感じだ。
「そんな大空くんに、面白い情報を。実はあの堀だけはここ五十年ぐらいで出来たものなんですよ」
「?。後から追加されたんだ。驚き」
所でさっき思ったが、エゼルさんは主導権を握りたがる傾向がある気がする。
これを生かして合わせれば、より仲良くなれるかな。
「はい。一昔前は堀なんて強者なら簡単に飛び越えられる為に必要性が無い、という意見が主流だったですね。それが近年になって、強者でも一手無駄にさせれて意外に必要だという意見が盛んになりまして」
「へー。そうなんだ。結構論調も変わっているというか。それに左右される程、あの城も戦闘になる事を想定されているというか」
「良い目の付け所です。褒めちゃいます。ですが、興味なさげでもありますか。話を変えましょうか」
「あ、ぜ、全然。そんなつもりではなくて。知れて面白いと言う気持ちもあって」
「ふふ。では、続けてしまいましょう。昨今の情勢で、あの城が責められることも確かに考慮されていて••••」




