第四十五話 集会当日
「痛、痛いめ。動かしづらい」
ホテルのレストランで朝食を食べながら、呟く。
このせいで、フォークとナイフと箸で料理が食べづらい。
夜七時ぐらいまで、頭を乗せられていたからだろうか。
「••••だいじょうぶ?」
「まあ大丈夫かな。動いていれば治ると思う」
ホワイトとはあっさり仲直り?出来た。
部屋に戻ると、何故かホワイトが少し機嫌良さげだったし。
追加でホワイトといるのが一番的な事を色々伝えたら、すぐいつも通りに戻った。
いえい。
「それで、今日は何処に調べ物に行く予定な感じ?図書館である程度は調べ尽くしたんでしょ?」
「••••まずゲームセンター」
「ゲームセンターか。近くにあるし、そこにする?」
「••••ちがう。一昨日、ちはるがいったところにいく」
—-
歩いてゲームセンターに向かう。
昨日フレジアと歩いた大通りを使って。
だが、前に比べて人通りが少ない。
俺の視界内にも、ホワイト以外誰も映っていなかった。
更に、動く歩道も動いていない。
不思議だ。
「••••陋劣の勇者フィギュアがほしい」
「任せて。クレーンゲームは割と出来るから」
まあ、いっか。
何かあるのだろう。
気にせず、ゲームセンターに近づいて行く。
「あれ?営業してないっぽい?午前十時なのに?」
ゲームセンターの入口の自動ドアに、張り紙が貼られていた。
そこには、全体集会のため休暇と書かれている。
中の灯りも全く付いていない。
「••••なら遊園地」
—-
「また休業中か」
遊園地も閉まっていた。
その門には全体集会のため休業、という張り紙がまた貼ってあった。
近くの券売機も自動販売機も、一切灯りを灯していない。
「また全体集会で休みだってさ。それなら明日また来ようぜ」
ホワイトは頷く。
次は違う方面を指さす。
「••••あとちはるがいた公園にいく」
—-
「うごかない。これ。きのうはうごいてたはず」
二人で、公園のベンチに座る。
今日はこれも動いていない。
「確かに動いてたね。見た限り。やっぱり全体集会?の影響かな。普段は雷人族の人達が雷魔法で発電してるんだっけ」
「そう。ほんに書いてあった」
こう言いながら、ホワイトは俺の腕に触れる。
謎な行動だ。
「所で、ホワイトは公園で何を調べる感じなの?ここって何かあるようには見えないけど」
「••••あれ」
ホワイトは遠くのビルを指す。
?。
「?。あそこに何かあるの?」
「••••きねんの全体集会、やってる。けど、なんの記念かわからない。だからここで何かきけたらって」
「?。ここだとちょっと聞きづらくない?それならもっと近づいた方がいいと思うけど」
「••••••いい」
いくら魔力で耳が強化されているとはいえ、この距離でビル内の声は相当頑張らないと聞こえない。
と思ったが。
断られた。
「??。このままで良いの?」
「••••そう。そのまま」
更にホワイトは俺に寄りかかってくる。
今回は割と軽かった。
?。
どう言う意図で。
昨日のフレジアと同じ行動だが。
まあ、いいや。
何か話したくない理由でもあるのだろう。
それに人間、他人から見てよく分からない行動をする時もある。
暫く、経った。
未だベンチに二人で座っている。
しかし、周りには変化が起きていた。
「••••うるさい。だれ」
大声で色々叫んでいる集団が、公園の近くを練り歩いていた。
彼らは全身を包帯で包み、プラカードを掲げ、労働環境の改善を口々に言っている。
「多分、昨日聞いた過激派労働組合の人達だよ。今日皆殺しにされるって話の」
「••••••そう」
一応、能力を「透明」に変える。
いつでも逃げられるように。
そのまま労働組合の人達は、全体集会のビルの正面入り口に陣取った。
皆で、大声で無制限労働法反対、雷人族特権法反対と言いまくる。
「•••••あいつ。森にいたひぐまと同じ魔力。かんじる」
ホワイトが一人の男性を指差す。
この男性は他の労働組合の人に比べて、腕?が長く、体も大きかった。
「へー。魔獣の魔力を持つ人なんていたんだ。初めて知った」
「••••••わたしも」
直後、ビル三階から推定雷が撃ち出された。
雷は労働組合の内、一人に命中する。
その人の包帯が、灰になる。
彼は腕以外、完全に羊になっていた。
割と気持ち悪めな姿だ。
「あ、ビル内に入っていく」
これを見、労働組合の人達は怒号と共に、自動ドアを壊し、ビル内へ突入する。
雷に打たれ倒れた人も、すぐに立ち上がりビル内へ向かった。
青白い目を持つ15歳ぐらいの少女だけが、後は取り残されていた。
だが、すぐ少女もビルへ入って行く。
「クーデターだ。その割には静か」
あれほどの怒号をあげていた割に、ビル内からは声が聞こえて来ない。
不思議だった。
フレジア達がすると言う話の、例の皆殺し作戦のせいだろうか。
「••••••消えてる。まりょく」
ボソッとホワイトが呟く。
やっぱり、皆殺し作戦のせいっぽい。
「へー。残酷だね。恐ろしいね」
割とこの世界だと皆殺しとかまかり通っているっぽい。
俺達もこれから先、その被害者側にならないと良いな。
「あ。みて」
「?。あれ?」
ホワイトがビルとは逆の方向を指差す。
そちらからは、凄まじいスピードで走って来ている人がいた。
15歳ぐらいの少女だ。
特徴は髪はツインテールな事。
「あれ?イリカじゃん!おーい!イリカー!!久しぶり!!元気だった!?」
手を振り、大声で叫ぶ。
イリカは俺に気付いた様子はない。
走って、全体集会のビルへ向かっていく。
「ビルに近寄らないようイリカに注意しに行きたいんだけど。ここから離れても大丈夫?」
前、助けて貰った恩を返したいし。
ビルは皆殺し作戦実行中で、危険だろうから。
「許可取らなくていい。わたしも行く」
「じゃあ先行ってるね。「神速」」
「神速」を使い、ビルの前に到着出来た。
一方、イリカも入口に辿り着いている。
「おーい!久しぶり!で偶然!元気だった!?」
イリカの目の前に立ち、そう言う。
久しぶりというほど、久しぶりではないけど。
「••••大空ね、、今それどころじゃなくて、、」
「ここに近づくのは危ないよ。過激派労働組合がここで殲滅されているらしくて。イリカも殺されるかも知れないぜ」
「!??。殺されてるの!!!あの人達が!!?」
イリカは顔を一気に青くした。
そして、壊れた自動ドアからビル内に入ろうとする。
けれど、自動ドアの後ろには白い壁が生えていた。
昨日は無かった物だ。
防犯用だろうか。
「邪魔よ!」
その壁はイリカパンチを喰らう。
壁に、大穴が開いた。
その大穴から、内部が見える。
エントランスは、血で染まっていた。
そこには魔獣や人間の亡骸が大量に転がっている。
その内一つの亡骸に見覚えがあった。
市長代理の人だ。
心臓があるはずの場所に、風穴が開いていた。
クーデターが原因で、だろうか。
「••••何これ、、ラミちゃん!?誰!?ラミちゃんを離しなさい!!」
黒い瞳で長髪な男が、少女の首を持ちエントランスの真ん中に立っていた。
青白いネックレスをしている。
年齢は27ぐらいだろうか。
その横にはフレジアも立っていた。
俺に手を振って来る。
「俺に命令するか。猿人が」
明らかに手を振り返す雰囲気では無い。
だから、小さく手を振り返す。
「••••あの二人が全員殺した」
穴から入って来たホワイトがそう呟く。
何となく分かった。
フレジアの皆殺しは雷人族の人達も含んでいたのか。
それで、これからあの最低雷人族の少女も殺されると。
やばそうだし、逃げよう。
とりあえず後は警察に通報して、残りはその辺に対処をお願いしよう。
俺はゆっくり後退し始める。
「魔王国四天王の一人、『破壊』のラファエルだ。逃げるな。そうすれば、即死で済ましてやろう」
やばそう。
早く逃げよう。