第四十四話 裏話 2
「くそ、つえぇ、、」
体の七割を包帯で巻いた男は、吹き飛ぶ。
イリカが腹を殴った為だ。
シェルター内を一応調査で彷徨いていたイリカは、労働者達に喧嘩を挑まれていた。
だが、これで全員倒す。
「••••••申し訳ありません••••手間をかけさて••••」
陰で見ていたラミが申し訳なさそうに、近づいてくる。
一方、イリカは清々しい表情をしていた。
「いいわ!丁度体を動かしたかったもの!全く平気よ!!」
(ハハハ!ざまあねぇな!!こんなんでクーデター成功すると思うかおい!?ヒヒヒヒ!)
イリカは何日か太陽の見えないシェルターで暮らしていたせいで、ストレスが相当溜まっていた。
そこに喧嘩を売ってきた労働者達は、良いストレス解消になっている。
「••••••あの。であれば私と外出しませんか••••体も多少は動かせます••••」
「え!?いいの?公安に捕まるとか言ってたのに」
「••••••今日は監視の目も薄まっているそうですし••••貴女が居れば逃げる事も容易いです••••••私も••••デモの最終確認がしたい物で••••」
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「••••••部下達の喧嘩を買って頂き••••ありがとうございます••••なにぶん学が無く••••その場の感情で動いてしまうもので••••」
「え、あ、そうね••••耳が痛いわ••••」
「••••••?」
イリカとラミは動く歩道に乗る。
街の中で、どちらかと言えば高い場所に向かっていた。
ラミが行きたい所があるらしい。
「でも、だ、大丈夫なのかしら、さっきからジロジロと見られてて••••通報とか、平気?」
「••••••暫くは••••気にしなくて••••問題ありません••••雷人族以外は••••そこまでするお金も••気力も••••無いので••••」
「••••みんな大変ね••••辛そうな••••」
イリカは眉を顰める。
労働組合の人も、仕事をしている人はいつも疲れ切って帰還していた事を思い出す。
「••••••はい••••私が子供の頃は••••こんな風では無かったのですが••••」
「••••それは••••悲しいわね••••」
「••••••はい••••全て雷人族用変圧器が開発された為に••••」
暗い表情となったラミ。
それを見たイリカは、何故か同じく暗い気持ちになる。
「••••ですが••••••変圧器によってこの市が発展したのも事実••••そして、悪い面も明日、私達が変えれば良いはずです••••」
ラミは顔を少し明るくした。
それを見、イリカの顔も明るくなる。
「デモするものね、、私は少ししか手伝えないけど、、頑張って!応援してるわ!」
「••••はい」
当日有志を集め、全体集会が行われるビルを包囲する。
そこで、プラカードを掲げ、大声で労働環境の改善の願望を叫ぶ。
デモはこうやると、イリカはラミから聞いていた。
(いや無理だろ。言葉で簡単に変わる程度なら最初からやんな)
(い、言い過ぎよ、、きっとそんな事もあるわ、、あんなに頑張ってたじゃない、、)
(強くいえねぇなら反論してくんな。努力じゃ如何にもなんねぇ事あったじゃねぇか)
「••••••••••そして••••ここから見える••••市役所近辺で••••••昨日••••『傲慢』のイリスの目撃情報がありました••••ここならば••••探しやすいでしょう••••」
いつのまにか、二人は街が見渡せる高台に着いていた。
イリカはこのタイミングで初めて気がつく。
「ここ!?さ、探してみるわ!黒い瞳をしている、、イリス、、」
高台からは、市役所や遊園地、全体集会が行われるビルなどが見渡せた。
目を凝らして、イリカは市役所周りを観察する。
(あんまり、、居ないわね黒い瞳の女、、あ!いた!片目だけど、公園のベンチでグルグルと••••)
イリカは遠くから千晴とフレジアを見つける。
彼らはくっつき、何かを話していた。
(は?マジで。あいつ。やべぇな。ホワイトも居んのか。この市に)
「••••••美人ね••••」
イリカの目には、二人が相当仲良さそうに見えた。
その眉はしょんぼりとなる。
「••••••もしや••••見つかったのですか?••••••私も失礼して••••」
「••••友達、?が見つかっただけ••••••知らない人と居たから、びっくりして••••」
(いねぇよな?ホワイト。居ねぇ、、おい。周りも見ろ。そこばっかみんな。おい。探すんだろ。あいつも見つかんねぇぞ)
イリカは千晴達の方を見つめる。
ラミも同じ場所を見た。
「••••どちらも、容姿端麗な方で••••」
ラミがイリカの方をチラチラ見る。
イリカはしょんぼりとしていた。
少しだけ目も潤う。
「••••••話を変えます••••この場所は、兄が教えてくれたんです••••••雷人族にも関わらず雷魔法が殆ど使えない••••出来損ないだった••••私を連れて••••」
「••••••出来損ないなのね••••」
(おい!お前!!おれの話聞いているか!?おい!そこばっかみんなよ!!復讐は良いのか!?おい!)
「••••••カルミナ市は歴史ある都市だ••••一人、雷魔法が使えずとも••••何も変わらない••••だから、それ以外に••••幾らでもお前を必要としている所がある••••••」
「••••••必要なのね••••」
(おい!おーい!聞いてんだろ!?おーい!復讐はいいのかー?おーい)
「••••はい••••けれどそれ以上に••••驚いて••••兄は次期市長として忙しく••••私は陰でそれを見ているだけで••••それでも気にかけていたとは••••」
「••••••気にかけてくれたのね••••」
(お前の事なんて覚えてねぇよ!あいつは!おい!戻って来い!!)
「••••聞いていませんよね?」
「聞いていないのね••••••あ、ち、違うわよ!聞いていたわよ!聞いていたわ!あれよね!?あれ!お兄さんに色々されて!!あれになったって!!」
戻って来たイリカは、焦ってラミの方を向く。
身振り手振りをし、言い訳をし始めた。
「••••••••ふふ••••何故そんないかがわしく••••でもいいです••••••私が人に話したかっただけですから••••」
「き、聞かせて欲しいわ!私にも!何!何されたの!?教えて!」
「••••遠慮しておきます••••私も最終確認が出来ましたので••••戻りませんか?••••••••今日は••••居る気配もありません••••••」
「え!?ま、待って!教えて欲しい!のと!もうちょっと見ていたいから!!」
(いいぞ!もっと見ろ!探せ!ホワイト探せ!いや、そっち見んなおい!)
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『••••ここにも居ないか••••』
市役所のB20にある地下資料庫を、何者かは歩く。
今回そこは灯りも着いておらず、本来出ている階段も出ていなかった。
『と、言うことは••••この市にイリスはいない••••それで、来た日に地上部はチェックし切った••••••じゃあ、もう行っちゃったって事か••••』
何者かは悩ましげに言う。
自らの顔を両手で挟んだ。
『••••より早く行きたいなら頼るしかない••••••はぁ••••拗ねてんのかボク••••何やってんだか••••』