第四十三話 また二人
市役所から三人で出る。
その間ホワイトとフレジアは、終始無言だった。
「••••••図書館、わたしだねでいく」
突如ホワイトはこう呟く。
?。
「?。何で?今日は一緒に情報収集する予定じゃなかったっけ?」
一人でなければ得られない情報でもあるのだろうか。
図書館には、そんなのは無い気がするけど。
全体集会?ついて調べるなら尚更だ。
もしや、何か俺が変なことをしてしまっただろうか。
「••••••これいじょう、じゃましたくない」
ホワイトは呟く。
???。
「???。全然邪魔じゃないよ?図書館で探すのも手伝うというか」
「••••••いい。またホテルで」
ホワイトは動く歩道で、去っていく。
俺はそれを見る。
どうして。
理由は何だ。
今回、ホワイトには駄目な所を出してなかったと思うのに。
「••••••••なんで」
「•••••ごめんなさい••••私のせいね」
フレジアはボソッとそう呟く。
何処か暗い調子だ。
「••••いや、丁度良いかも。フレジアともっと仲良くなりたかったし」
とりあえず、こう言う。
ホワイトの件は後でよく考えよう。
まだ気づいていないポイントがあるかもしれない。
「••••••••私も••••」
——
「勝ったわ。弱いわね」
「あ。負けた」
またゲームセンターに来た。
二人で、銃で鯨を打つゲームをやっている。
そうしたら、普通にフレジアに負けた。
だから悔しい。
「何か上手くなってない?練習した感じ?」
「才能の違いね。練習なんて二時間しかしてないわ。当然。あ」
フレジアは練習をしていたっぽい。
その量の差で負けた。
と、思いたい。
「••••所で、あなたはこれでいいのかしら。私にバカにされ続けて。楽しいの?」
フレジアはこちらを向く。
急にだった。
「まあ、楽しいかな。誰かと遊ぶなんて全然して来なかったから。初めてで」
家族以外とこうして遊ぶ事なんて、三例目ぐらいだった。
元の世界にいた頃は全くしてない。
故に、相当新鮮だった。
これを聞き、フレジアは訝しげな顔をする。
「本当かしら••••だったら、あそこに行きましょう。多分もっと楽しいわよ」
「?」
—-
フレジアにより、ビルとビルの隙間へ案内される。
そこからは、ある工事現場が見えた。
「き、休憩を、、休憩を下さい、、もう十五時間以上連続で」
「休むな!!休むと間に合わねぇんだよ!灰になっても働け!!ノルマを達成するまで死んでも働け!!無能野郎!!」
この工事現場では、現場監督っぽい人に作業員っぽい人が怒鳴られていた。
結構酷そうな環境だ。
「ここで、男女二人でイチャイチャして煽る遊びが楽しいらしいわよ。雷人族の二人が言っていた事だけれど」
「?。迷惑じゃない?」
工事現場の人達は全員例外なく、死んだ目とボロボロな作業着を装備していた。
他にも、全身に包帯を付けている人もちょくちょくいた。
「これで活力出るだろワハハって、言っていたわ。どうかしら。楽しそうだったわよ」
「そ、そうかな?そうかも」
もしかしたら、この世界の人はそうのかも知れない。
苦しい時、他人の楽しそうな姿を見るとハッピー的な。
そんな事は無い気もするが。
他の人が俺を楽しませる為に考えてくれた事だ。
とりあえず、やってみよう。
「そうしたら、イチャイチャってどうする感じ?仲良く会話したりする?」
「そうね。恐らく体を触りながら会話する事よ。手を出しなさい」
「わ、分かった。ここだとそうなんだ」
言われた通り、フレジアの方に手を差し出す。
初めてだから、割と緊張した。
「あなたも同じようにしなさい。こんな風に」
フレジアが俺の手を握る。
更に、指と指を絡めてきた。
俺も指を絡めてみる。
完全に恋人繋ぎだ。
恋人じゃないけど。
「手。あなたの方が大きいわね」
フレジアは握り合っている手を見つめる。
俺も見ていた。
確かに俺の方が少し手が大きい。
一方、フレジアは白くて細い綺麗な手をしていた。
「辞めましょう。胸部当てるわ」
フレジアは突然手を離し、近づいてくる。
???。
「胸部は私の方が大きいわね。私の勝ちよ」
胸を俺の胸にぶつけてくる。
????。
「何?言う事ないの?」
「????。???。凄い?大きいね?凄い」
これであっているのだろうか。
合っていなかったらシンプルに駄目な発言だけど。
「そう。凄い。ブラを取ればもっと大きいわよ。どうかしら」
フレジアの服の中で、何かが落ちる。
胸部が少し大きくなった。
???。
「どう?言いたいのなら早くいいなさい」
「???。大きいね。凄い大きい。大きい」
「おい!お前ら!!片方雷人族だからって調子乗んな!!冷やかしなら消えろ!!」
現場監督っぽい人に、怒鳴られる。
工場現場を見ると、他の作業員達も鬼の形相でこちらを見ていた。
やっぱり、この世界でも迷惑だったっぽい。
ミスった。
「こうやって怒られるのも楽しいらしいわ。あなたはどう。楽しいかしら」
「そ、そこまでかな。一旦離れない?ここだと迷惑だし」
「そう。なら行きましょう」
—
近くにあった公園のベンチに座る。
直後そのベンチは動き始め、公園内をぐるぐる回り始めた。
何だこれ。
「あの。よく分かったから、そろそろ離してもらっても」
こんな中、フレジアは俺の腕を抱き込み、胸をめちゃくちゃ押し付けてくる。
周りに見せつけているようで、宜しく無いと思う。
「服と擦れて痛いからじゃないわよ。私の方が大きいとアピールしたいだけ」
「そ、そっか」
「そうよ。これにプラスして、仲良くしゃべりましょう」
まだイチャイチャ?は続いていたっぽい。
一方、この公園には人が全然いない。
イチャイチャ?で、フレジアの事を知れれば友達になるチャンスでもある。
まあ、このぐらいならいっか
「あなたの趣味は何?」
「?。趣味?趣味?趣味ね。今は探していて」
「腹立つ回答ね。何か言いなさい」
まさかの先手を取られ、反応が遅れた。
どう言うべきか。
「何というか。新しい体験がしたいというか。これまでして来なかった事をしたくて」
「そうなのね。ならば、もっと私と仲良くなるべきよ。誰かと遊んだ事の無いあなたは、イチャイチャ?して煽る遊びも初めてだったでしょう?」
「確かに。初めてだったかも」
仲良くなった相手に誘って貰えば、色々下調べなしで挑戦出来る。
そうすれば、友達にもなれる可能性も上がるし、趣味探しの効率も上がる。
だが、人を巻き込むのは良くないと思う。
相手に迷惑をかけるリスクも大きいし。
どうするべきか。
「他にしたい遊びはあるかしら。多少なら何でもしてあげるわよ」
「そ、そっか。ありがとう。だったら俺もフレジアの趣味が気になるというか」
「趣味は特にないわね。自分が一番だと思うのが好きだけれど」
「なるほど。家族構成は?」
「お母様とよく分からない連中ね。私もよく分からないわ」
「そうなんだ••••••ここへは何しに?」
「お母様の手伝いよ。とても面倒くさいわ」
良い感じのが来た。
家族関係はやばそうなので避ける。
お母さんの手伝い?について教えて貰おう。
「一方的に知られるのは不快感があるわね。あなたの事も詳細まで教えなさい。私は答えたわ」
「りょ、了解?名前は大空千晴で、多分15か16か17歳、家族構成は両親と姉がいて、趣味は探し中で。特技は、色々出来る事••••?」
大体、こんな感じだった。
フレジアは、これを普段通りの顔で聞く。
「情報量がないわね。と言うか、多分15か16か17歳って何かしら」
「ずっと森で迷っていた時期があったんだけど、何か身長は伸びて無くて。だからどこまで幻覚だったのか分からないんだよね」
記憶と体感だと、相当の月日を過ごした。
ただ変わらない光景の中を歩き続けているだけの日もあり、更にその間に身長も全く変わっていない。
だからいまいち、記憶と体感が信用出来ない。
「方向音痴ね。私はこの街に来たばかりの頃でも迷わなかったわよ」
「凄いね。似たようなビルが多くて分かりづらいのに」
「そうよ。あなたとは違うわね。私。どれも上よ」
フレジアはそう言い、俺の体を微妙に揺らす。
何かをアピールしてきていた。
「所で、あなたのしたい事はその程度なのかしら。本当に何でも良いわよ。多少性的な事は私も許容するわ」
「ま、まあそこまで良いかな。フレジアはどんな感じで手伝いをしているのか。そこを教えて欲しいかも」
今は友達が欲しかった。
それか新しい趣味。
こう言うのは18歳を超えてから。
「••••本当に些細ね。私は次に全体集会に出席するだけかしら。手伝いはそこで終わりよ」
「全体集会?に出るのか。そこでは何をする感じなの?」
ホワイトが集会?に興味を示していたし。
ついでに知っておいて損はないはず。
「そうね。皆殺し云々をするらしいわ。その日、全ての雷人族があのビルに集まってパーティをするから」
「パーティをするから。皆殺しか、、」
市長代理?の人の言う限りだと、そこで過激派労働組合?を皆殺しにするっぽい。
怖いね。
少し、治安があれだ。
「そうよ。始めは市長の挨拶から始まって、その後は年代毎に別れて会食パーティをするのよ。終わりには皆んなでビンゴ大会もする。楽しいらしいわね」
「へー。凄く楽しそう。よく知っているね」
もし参加できれば、新たな友達も出来そうだ。
押しかけたら流石に迷惑だし、行かないけど。
「そうね。毎年主催は市長なのだけれど、今年は所用で当日までいない。だから今年は市長代理が主催なのよ。近隣の魔王国の動きが活発化しているのも相まって、市内の問題は片付けようと市長代理のリストルトは張り切っているようね」
「あ、ありがとう。よく知っているね」
「これが努力と知能の差。当然ね」
フレジアは早口で解説してくれた。
更にドヤっともしている。
「そして、これであなたの願いは叶えたわね。だから、次はあなたに私の願いを叶えて貰うわ」
「?。出来る範囲なら良いよ」
「じゃあ、頭を乗せるわ」
フレジアは俺の肩に頭を乗せる。
状態的には、相当べったりだった。
どう言う意図だろうか。
「こんな事をされるのは初めてでしょう?私がやってあげるわよ。意外とくっつくのが悪くないというのもあるけど」
「は、初めて?初めて、かも」
家族や家族みたいに思っている人、以外とは初めてかも。
だったら初めてと言える、のか?
「だったら私に感謝するべきね」
「あ、ありがとう。新鮮な体験が出来たぜ」
「そうね。良かったわね。新鮮な体験が出来て。私のお陰よ。功績が追加されたわね。つまり、もっと行くわ」
フレジアはより寄りかかって来る。
少し重かった。
このまま、フレジアはぼーっと遠くを見つめる。
目線の先には、高いビルと動く歩道と少しの人があった。
「この世の全ては薄氷の上。けれど、私はカップルの真似をして、会ったばかりのあなたに甘えてる」
「???。そ、そっか。」
「悪くないわ。またやりましょう。こんなに人肌を感じるのは生まれて初めて」
「そ、そうなんだ。そっか。ま、まあ、そっちが良ければまたやるよ」
「•••••••そうね••••」
これだけ呟き、またフレジアは街を見始める。
俺の肩に頭を乗せたまま。
ベンチで公園をグルグルと回ってもいた。
というか。
まさかのこれ、カップルの真似事だった。
イチャイチャって、カップル同士的な意味。
比喩表現では無かった。
どうしよう。
求めていた物とは、微妙に違うような。
よく分からなくて、とりあえず肯定してしまった。
いや、この世界では、異性の友達間でもそういうのもやるのかも知れない。
それなら多分セーフかな。
まあ。
フレジアとより仲良くなれたとも言えるはず。
多分良かった。




