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第四十二話 市役所






 「ただいまー。ホワイト。帰って来たよ」


 あの後フレジアと別れ、3702号室に戻ってきた。

 もう朝五時だ。

 だが、未だホワイトはソファーに寝転がり、テレビを見る。


 「••••••すこし、ねる?」


 「昨日寝たし大丈夫かな。その映画?ドラマ?はどんな感じ?面白い?」


 ホワイトは多分ホラー映画っぽい物を見ていた。

 夜の田舎で誰かが何かに、追われている。


 「まあまあ。すぐ恋愛ドラマに変える。いっしょにみよう」


 「良いよ。今度はどんなのだろ」




 「おもしろい」


 あれから、恋愛ドラマを二話見た。

 一話一時間だったので、もう午前七時だ。


 それは、宮中ミステリー物だった。

 ゆるく要約すると、魔王城に女官として入れた!権力者に気に入られて成り上がる!!だから!ライバル!亡くなってしまえー!!みたいな感じだ。

 毎話人が死ぬので、凄かった。


 「かなりの泥沼。昔はこんな感じだったのかな」


 それをホワイトは楽しそうに見ていた。

 良かったね。


 「••••••それで。とびら前。さっきからなんかいる」


 ホワイトは突然呟く。

 どこか暗い調子だった。


 「なんか?何だろう」


 扉前に意識を向けてみる。

 確かに、誰かしらの魔力が動いていた。

  

 黒田かな?

 だったら、色々丁度良い。

 今日も誘ってみるつもりだった。


 扉を開ける。


 「おはよう。いい朝ね。今日も遊びましょう。次は私が勝ち越すわ」


 フレジアが立っていた。

 ???。

 

 「???。な、何で。この宿泊場所が分かったの?」


 「防犯カメラで追跡したのよ。子供でも分かるわ」

 

 「そ、そっか。ね、寝なくていいの?学校や仕事は、?」


 「あなたより魔力を動かしているから、問題はないわ。仕事も大体は終わらしてある。あなたの心配は無用よ」


 遠回しに断る作戦は、失敗した。


 だが今日はホワイトとの約束があるので、流石に無理だ。

 直球で断ろう。

 

 「ごめん。あそこの白い子と情報収集をする予定で。だから今遊ぶのは少し無理かなって」


 「そうなのね。そんなあなたとそこの白いのはどう言う関係なのかしら。余り似ていないけれど」


 突然聞かれる。

 明言しずらい事だった。


 兄妹では無い。

 だがどう言う関係かと言われると、なんだろう。

 

 「ホワイトの事は妹みたいに思っている、かな。相手がどう考えているかは分からないけど」


 「そう。まあいいわ。だったら私がどこよりも調査がしやすい場所に案内してあげるわ。感謝して」


 「ありがとう。けどどこに行く気?」


 「カルミナ市役所」



—-



 一応、黒田が泊まっている302号室の前に来た。

 昨日のお礼も兼ねて、今日の情報収集に誘うつもりだ。


 俺が扉をノックする。

 ガチャと言う音と共に、黒田が出てきた。


 「何?ボクに用あるの?」


 黒田は何処かトゲトゲしい。

 

 もしかして、昨日の事を気にしているのかな。

 まあ一旦いい。


 「これから俺含め三人で市役所行くんだけどさ。黒田も行かない?昨日あんまり遊べなかったから」


 黒田はこれを聞き、眉を抑えた。

 

 悩んでいるっぽい?

 予想とは違った。

 何か遊びたいと言っていたはずなのに。


 「••••••遠慮するよ。ボクにはすべき事があるから。またね」


 断られた。

 そのまま、扉が閉められていく。

 

 「••••••あとさ、、誘うにしてもキミだけで来てよ••••」


 ガチャと音が鳴る。

 鍵も閉められた。


 「断られたのは私が原因かしら」


 フレジアはそう聞いてくる。

 ホワイトは溜息をついた。

 何か駄目だったか。


 「••••多分俺が無遠慮だった、、かな」

 

 フレジアを連れて来たのが悪かったかもしれない。

 相性は悪そうだったし。


 「それなら愚かね。わざわざ私に許可をとった意味もない」


 「確かに••••」



—-




 「ここが市役所よ」


 ビル街を歩く。

 そんな中、フレジアはあるビルを指差した。

 

 このビルは、五十階以上ある。

 少なくともこの近辺では一番高い。


 フレジアはその入り口に近づいていく。


 「スライド式自動ドアだ。ハイテクノロジー」


 「••••••すごい」


 入り口の扉が自動で開いていく。

 それもスライド式だ。

 プロテクト市よりも、更に高い文明を感じる。


 「腰巾着のようについてきなさい。褒めるならその後で。あ。子供は普通に着いてきなさい」


 フレジアは堂々とビルへ侵入する。

 俺達もそれに着いていく。

 

 すぐフレジアは近くのエレベーターの前に立ち、そのボタンを押す。

 十秒ぐらいするとエレベーターのドアが開いた。


 「••••••すごい」


 「おおー。エレベーターも」


 三人でエレベーターに乗る。

 ホワイトは八十個以上あるエレベーターのボタンを見、目を見開いていた。

 直後、フレジアはB20のボタンを押す。


 すぐさまドアが閉じ、地下へ降りていく。


 「B20には本来この市の支配者層である雷人族しか入れない。けれど私がいれば違うわ。私に言う事あるわよね?」


 「凄いね?貴重な体験が出来そう?」

 

 「そう。子供も言う事ないのかしら」


 「••••••すごい」


 「そうね。けれど、褒め方が単調ね。もっと工夫を凝らしなさい。顔が私よりいいのに、そこは足りてないわね」


 チーンという音と共に、B20に着いた。

 エレベーターの扉が開く。

 そこには追加で、鉄の扉があった。

 

 「あ。違うわ。今のは子供の事を指していないわ。凄い凄いばかり言うこいつの事を言ってるの。いいえ。そしたら私がこいつ未満になるわね。何でもないわ。全て訂正する」


 「••••そう」

 

 フレジアはそう言いながら、ポケットから謎のカードを取り出す。

 そして、扉の横にある謎の器具にシュッとさせた。

 これで扉が自動で開く。


 「それで、ここが町中の防犯カメラの情報を管理している防犯センターよ。この街のなにもかもを見れるわ」


 扉の先には、大量の液晶とパソコン、それを使う五人ぐらいの人がいた。

 液晶の画面には、防犯カメラの映像と思わしきものが映っている。


 「最後に、この壁を弄れば」


 フレジアは少し歩き、そこの壁に向かって手を伸ばす。

 

 直前に、一人の男性が割り込んできた。


 「お、お待ちください!フレジアさん!」


 青白い瞳が特徴的な男性だ。

 先ほどパソコンを見ていた内の一人でもある。


 「ここもそうですが、部外者を入れるのは••••」


 「邪魔ね。なにか用かしら。もしかして、文句あるの?」


 フレジアは男性を少し睨みつける。

 男性は一気に顔を真っ赤にした。


 「あ、あり、あり、あり」


 何も言えない男性。

 顔も赤いままだ。


 その間に、もう一人の男性が駆け寄ってくる。

 

 「お前。何やってんだ。すいません、フレジアさん。こいつ美人に睨まれるのが性癖で。市長代理を呼ぶので、少し待って頂けませんか」


 「嫌よ。私があなた達の言うことを聞いて、利益でもあるのかしら。黙ってなさい」


 フレジアは二人を無視し、壁に触る。

 そこに魔力を流した。


 急に壁が開く。

 下に降りる階段が、その先にはあった。


 「この下にはお母様が使っていた図書館がある。知りたい事があるなら着いて来なさい。現在の市をリアルタイムで知りたいのなら、パソコンを使いなさい」

 

 コツコツとフレジアは階段を降りていく。


 これは、俺も行って大丈夫なのだろうか。

 多分駄目そうな気が。


 「早く来なさい。遅いわね。私より。あ。子供は遅くないわ」


 まあ、いっか。

 フレジアに案内された訳だし。

 普通の図書館よりも色々知れそうだ。


 いざとなれば、責任取って謝ろう。



—-


 


 階段の下にあった少し埃の積もった図書館を、俺は歩く。

 新しい棚に非常に古い本が置かれた、不思議な図書館だった。

 ここは電灯も弱く、かなり暗い。


 その中で、俺はカルミナ市の歴史について書かれた本を探している。

 ホワイトが歴史系の本、特に紀元前の歴史について書かれたのを読みたいらしいので。


 「ここにも無いか。じゃあ次は」


 近くの棚に近づき、置かれている本の題名を見る。 

 【他魔力注入実験記録】【対同族虐殺心理調査実験記録】、などの本が置かれてあった。

 多分人体実験シリーズっぽい。


 恐らくここに歴史系の本はないだろう。


 「それなら、こっちは」


 別の本棚を見る。


 【魔人族飼育記録】、【雷人族飼育記録】、【鬼人族飼育記録】、【異人族飼育記録】などの本があった。 

 今度は飼育記録シリーズだ。

 ここにも無さそうだ。


 というか、この辺倫理観が皆無すぎる。

 平然と人体実験をしていた。


 だが、このシリーズを見るのは初めてではあった。

 一応中身も確認してみる。


 「へー。そうなんだ」

 

 ペラペラと高速で本を捲る。

 内容は題名から想像出来る通りである。


 要はやばい中身だ。

 スルーで。


 「あれ。これかな?」


 【歴史上の雷人族の心理研究】という本が目に入る。 

 少し違う気もするが、開いてみる。


 「お。大当たりだ」


 良い感じの本ではあった。

 初めに、年表がついている。


 紀元前132年、なにが紀元だアホ、雷人族の英雄による平等宣言••••513年人類平等法成立••••826年破棄••••1500年帝国加盟、マヌケ、死ね••••1523年復興達成宣言••••1923年電気の普及••••1926年対雷魔法用変圧器開発、手伝ってもらった分際で調子乗んな死ね••••1937年雷人族優先法成立••••1962年雷人族特権法成立、粋んなアホ••••1976年労働者無制限労働法成立。

 

 年表の所々に、落書きがあった。

 そのせいで、かなり読みづらい。

 

 まあ、紀元前の所があったので、持っていこう。

 いえい。

 ホワイトは喜ぶかな。

 

 

 急いで、ホワイトの元へ戻る。

 そこにはフレジアもいた。

 

 「ニ冊見つけたわ。見なさい。どっちも紀元前について書かれているのよ」


 「••••••••そう。ありがとう」

 

 「俺も一冊だけ見つけたわ。少しだけど紀元前について書かれているから。あそこの机に置いとくね」


 「••••ありがとう」


 少し口角を上げてホワイトは言った。

 喜んでくれたっぽい。

 良かった。


 と思ったら、フレジアはホワイトを見出す。


 「やっぱり、態度が違うわよね。何故かしら。特に今回は、一冊のこいつより私の方が貢献度は上よ」


 「••••••そう」


 「本当に冷たいわね。理由はあるのかしら。こいつには甘い声で、私には冷たい声の理由」


 フレジアはそう言う。

 ホワイトは目を逸らす。


 「••••••すきじゃないから」


 「どうして?あなたには思ったことを話していないわ」


 ついに、ホワイトを睨みつけるフレジア。

 すると、ホワイトは更に目を逸らす。


 「••••••ちはるをバカにされて、いい気持ちにはならない。あと、なくした目をしてない人はうらぎる」


 「ま、まあ、とりあえず俺は気にしてないよ。気にしてないよー」

 

 俺は会話に無理やり入っていく。

 喧嘩になりそうだった。


 あまり機嫌は損ねたく無かった。

 この図書館にはフレジアのお陰で入れているし。



 「部外者を入れるとは。どう言う了見だ。少なくとも男は雷人族ではないだろう。弁明はあるのか?フレジア」


 このタイミングで、ある男性が話しかけて来る。

 23歳ぐらいで、青白い瞳が特徴的だった。


 「私が入れたいと思ったからよ。何か問題ある?」


 「問題か。あるに決まってるだろう。ここは最高機密だ。暴露されれば共々終わりだ」


 その上、多分偉い人っぽい。

 恐らくさっき言っていた市長代理の人だ。


 魔力感知で、この人が魔力を動している事は何となく認識出来た。

 だから、しれっと魔力をこの人のに変えておこう。

 俺達を案内したという理由でフレジアが怒られるのは、申し訳ない。


 「ん?お前は雷人族だったのか?見たことがないが。薄暗かったから勘違いしたな。なら問題ないか」


 「大丈夫なら、消えなさい。邪魔よ」


 フレジアはしっ、しっ、と手を動かす。

 男性は眉をピクっとさせる。


 「いや、問題はある。お前に。ここ最近、防犯カメラ外で行方不明者になる雷人族が増加しているという事は知っているだろう。過激派労働組合の仕業だ」


 「••••私が彼女らに情報を流している、とでも言いたいの?信用ないわね」


 よく分からない事について、フレジアと市長代理?の人は話す。


 最近、行方不明者が多いらしい。

 この市も物騒だ。

 気を付けないと。


 「そこまでは言ってないが••••労働組合に情報を流している人物がいるのは確かだ。そして、明日は非常に大事な全体集会の日でもある」


 「••••••しゅうかい」


 ホワイトが小さく、呟く。

 もしかして、全体集会?が気になったのだろうか。


 「ここにいられると作戦にも支障が出る。お前も困るだろう。一刻も早く、退出願おうか」

 

 「••••••••ちょっとまって。よむ」


 「ちょっとならいいが。なるべく早くしてくれ」


 ホワイトが急いで本をペラペラと捲り出す。

 フレジアも無言になった。

 三人で、それを無言で見つめる。



 「あの子はお前の妹か?顔は余り似ていないな」


 「じ、自分ですか?そんな感じです。そんな感じ」


 突然、市長代理?の人が話しかけてくる。

 一瞬反応が遅れてしまう。

 完全にこの人とは無関係と思っていたから。


 「そうか。だったら、大事にするんだな。大切な家族だ」


 「ありがとうございます?」


 良い感じの事を言われる。

 このタイミングでホワイトが顔を上げた。


 「••••おわった。出る」


 「早くしてくれ。だが、お前達。故に、労働組合の件は安心して構わない。出来損ないの愚妹共々、明日皆殺しにしてやる。仲良く過ごせよ」






 






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