第三十五話 殺害
「••••オレの手で死ね。大空」
ロケットランチャーが至近距離で発射される。
もう防ぎようがない。
直後、三人の師匠とロケットランチャーの弾、その爆風も。
全てが吹き飛んでいく。
「「三重展開」。警察だ!抵抗するなよ!」
岩永支部長がそう叫ぶ。
それを見、まだ残っていた一人の師匠が青筋を浮かべる。
「急にふざけんな岩永。お前何歳だよ」
「••••年齢には触れないでくれ。だが、消し飛ばすのはやり過ぎだ。待て。まだ殺すな」
支部長の人は手で師匠を制す。
師匠は眉も顰めた。
「おい。そりゃ越権行為だろうが。分かんないお前じゃねぇだろ。クビだぜお前」
「••••••散歩をしていたら、殺されそうな若者を見かけてな。年上の大人として、普通は止めるだろ?」
「そんな建前でくるか••••」
師匠はロケットランチャーを構える。
支部長の人は懐から、警棒を出した。
「じゃあ最高じゃねぇか!!勇者法二十七条に基き!死ね!!!」
師匠は凶悪な笑みを浮かべた。
そして、ロケットランチャーを放つ。
「やっぱりそうなるか。「完璧」」
支部長は呟き、警棒を振るう。
その警棒には、白く半透明の膜が付いていた。
伸ばした警棒とロケットランチャーが接触する。
大きな爆発が起こった。
「はは!オレは「完璧」が使えねぇんだ!貰うぞお前の年の功!死ねよ警護の勇者!!」
「殺意が強くないか?「押出展開」」
「ぎえ」
無傷の警棒を振り、空から飛びかかる師匠の首に当てる。
その師匠は吹き飛んでいった。
「大空、くんだっけか。残念な事に、俺では月下の足止めは多少しか出来ない。早く逃げてくれ。君に死なれると、恐らく困るんだ。ある方面で」
「ありがとう、ございます••••」
俺は急いで立ち上がる。
歩き始めた。
「「神速」。意味分かんな。岩永。所詮他人だろ。その為に命賭けるなんてよ。オレの仕事で目的も、邪魔をして」
「そこは自由じゃないか。二度目の生。俺がしたいからしているんだ」
「はっ。仕事と目的の邪魔なんだよ。消えろ」
左手からボタボタと血を流しながら、俺は歩く。
この内に、新しい作戦を思いつかなければ。
まず、武器は木の枝と石しかない。
刀は爆発に巻き込まれボロボロで、どこにあるかも分からない。
次に、今の俺では師匠に有効打がない。
一瞬で再生するあの能力に対しては、何も出来なかった。
そして、他人の助けは期待出来ない。
一部の人以外戦力にもならない上、人間は基本自分の命の方が大事だ。
それを賭けてまで、戦ってくれない。
本当に無理だ。
一時間粘るのも、不可能だ。
それなら、師匠に特攻しよう。
自爆で行けば、ワンチャンあるかもだし。
ついでに、ホワイトとの約束も果たせる。
姉ちゃんや両親には申し訳ないけれど。
「ちょっ!ちょっと!一旦、一旦待って!そのまま走ってると死んじゃうよ!人間でしょ!?」
誰かに肩を抑えられる。
黒田だ。
何でここに。
「そこの木に寄っかかってキミ!ボクが治すから!おーい。おーーい!!早く!!本当に死んじゃうから!」
勢いに押され、俺は近くの木に寄りかかる。
直後、黒田は俺の体に触れた。
「『叛逆循環』。欠損したばっかで良かったよ。これならまだ治せる」
逆再生のように、血が体の中へ戻る。
左手のあった箇所にも、肉が集まり出す。
この調子で、全身の傷も治っていく。
「大空千晴くん。自己犠牲は辞めた方が良いよ。こんな事されても誰も喜ばないから」
「誰だお前は!初めて見んな!!大空の怪我を診てくれてありがてぇか!!抵抗しないと殺すぞ!」
吹き飛んできた師匠が、黒田へ蹴りを放つ。
黒田は焦った顔になる。
「え!えー!!『惑える闇との壁』!」
ギリギリで、黒田は蹴りを避けた。
と同時に、円形の黒い粒子を展開する。
その粒子は、師匠を多少吹き飛ばす。
「闇魔法か!!中々の強度!やるな!だったら!来い!もう一人!!」
外から爆発音が聞こえた。
しかし、黒い粒子は揺るがない。
すると、一人の師匠が「神速」で加勢に来た。
爆発音が二倍になる。
「すぐ二人になる!流石勇者!これじゃ破られる!」
「逃げたほうが、いいよ。師匠の狙いは、俺だから」
黒田の頬からは、黒い粒子が少し出ていた。
先ほどの師匠の蹴りが掠っていたのだ。
更に、壁の黒い粒子にはヒビが入っていく。
「ここまでやって普通置いてかなくない!??『惑える闇との壁』!」
「すぐ展開出来るか!!ならよ!今度は二刀持ちだ!」
破られた直後、また黒い粒子を展開する。
すると、爆発音は更に二倍になった。
これでは一瞬で壁は突破されてしまう。
「じゃあ、何でそもそも、助けてくれたの?こんな危険な感じなのに、、」
「え、それ今聞く!??え!!?『惑わす闇との壁』!」
「ごめん、けど最後間違って。やばい事も、しちゃったのに」
俺には、よく分からなかった。
割とやばい事をしたのに、黒田が命を賭けてまで助ける理由が。
「分かったよ!ただ!ボクが!キミの事を友達みたいに思ったってだけ!内容が多少駄目でもさ!君と一日過ごして!なんだかんだ楽しかったから!」
黒い粒子がとてつもなく振動する。
また破られた。
「それで!キミの戦いを観戦してたら!体が勝手に動いてたの!わざわざ聞かないでよ!『惑わす闇との壁』」
「ははは!間に合ってねぇぞ!その闇魔法!さあ!他の武術!魔法も見せろ!」
黒田が魔法を使おうとする。
その時には、ロケットランチャーの弾が至近距離まで迫って来ていた。
「わっ!」
俺は黒田を押し倒す。
真上をロケットランチャーの弾が通過していく。
全身の傷はもう完全に治っていた。
黒田のお陰だ。
「キミ!いい回避!けど追撃くる!転がるよ!」
「黒田!ありがとう!あ!痛い!背中いたい!」
「おら!黒い奴と大空!逃げんな!オレと戦え!」
引き寄せられ、二人でゴロゴロと地面を転がっていく。
背中に石などが刺さり、割と痛い。
一方、直前まで俺たちのいた場所にロケットランチャーが着弾していた。
爆風で、その転がりが加速する。
「南に転がろう!その近くで川を見たから!その力で師匠を一人でも流せれば!」
「その前にボク達は止まろうよ!このままじゃ魔法の狙いも定まらない!」
「魔法だけじゃ凌げなくない!?すぐに破られるし!俺達で一人でも倒した方が!」
「そうだけどさ!多分キミもボクの闇魔法使えるようになったでしょ!?それで凌いで救援を待とう!」
俺達は崖から落ちた。
下は木の生えていない土だけの大地がある。
「は??洞窟の穴!?落ちている!?」
「ちょ!え!どうすんの!?ボク達!、平面だと「神速」使い放題だよ!?」
俺達は埋め立てられたばかりらしき、洞窟の穴へ落ちてしまう。
まだかなりの速度で転がっていた。
「はは!何やってんだお前ら!連携がなってねぇぞ!」
「そんなもんだろ。一緒に戦ったのは初めてだろう」
その最中、俺達は何かにぶつかる。
「神速」で移動してきた師匠だ。
二人もいる。
師匠達は俺達を囲み、至近距離でロケットランチャーを打とうとしている。
「判断が遅かった!!ごめん黒田!!」
「反省してよ!!キミごと死んじゃうじゃん!!せっかくお金も貯めたのに!!」
「殺すぞ!抵抗しないなら!ぐえ!」
次の瞬間、師匠が背中から折れ曲がる。
師匠はもう一人を巻き込んで吹き飛ぶ。
「なんで!なんでこんな事してるのよ!あんな丁寧に教えてくれたのに!!」
蹴りを入れた涙目のイリカは、そう叫ぶ。
その背中には、ホワイトが乗っていた。
「ちはる、よかった。だいじょうぶ?」
直後、ホワイトが起き上がった俺に飛び付いてくる。
このまま抱き合う。
温かい。
また会えて良かった。
というか、何か解放されている。
「••••とノア」
「そっちこそ良かった。ホワイト。助けて貰えたんだ」
「ほ、ホワイト!ボクの名前!!覚えててくれてたんだ!」
黒田も起き上がり、そう言う。
一方、二人の師匠達がこちらに歩いて来る。
「オルキデ!やっと来たな!おい!ははは!」
「なんで、なんで!!なんで師匠が大空を殺そうとしてるの!?おかしいわよ!」
「仕方ねぇだろ。お前らを殺せば、オレはもっと強くなれんだ。つか。元々そのつもりで弟子にしたんだ。何もおかしくねぇ」
「はは!これでオルキデも!次代の最強の礎になれれるぜ!光栄に思えよな!!お前も殺すぞ!」
「全部!全部嘘だったの!?優しくしたのも!!全部!!」
イリカは二人に襲いかかる。
片方の師匠は反応出来ず、殴り飛ばされた。
「おちついて。すぐにげる予定のはず」
「落ち着いて。俺もそう思う。他にもまだいるし」
俺はホワイトも大丈夫そうだし、早く逃げたい。
有効打もあんまりないから。
「う、う。そうね、早く」
イリカが残った師匠の攻撃を避け、そう呟く。
攻撃が、イリカに当たる様子は無い。
その間に、もう一人の師匠が空中に現れる。
このまま降って来る。
「だいじょうぶ。『森の光芒』」
ホワイトが光魔法を使う。
崖の上から、斜めに光の柱が落ちてきた。
「ちっ。仕事だってのによ。光魔法か。これはパクりも出来ない」
光の柱は師匠を巻き込み、地面に円形の穴を開ける。
師匠は塵になった。
「すぐふっかつする。けど、たぶん同時に七体までしかだせない」
「おい!こっちに人回せ!オルキデも来てっから!流石に負けたら仕方ないじゃすまん!岩永はもう行けんだろ!?」
「••••『灯滅する火』」
イリカと戦う師匠へ、ホワイトが火の粉を飛ばす。
ホワイトがいつの間にか使えるようになっていた火魔法だ。
師匠は火の粉を避ける。
だがその瞬間、師匠はイリカに蹴り飛ばされた。
「仕事は果たす。逃すなら殺す」
ここで光魔法に消し飛ばされた師匠が、穴から出てきていた。
ロケットランチャーでイリカを狙う。
「『光線』。これなら当たるか」
「今度は大空か。任務の邪魔だな。こんがらがる」
俺のレーザーと、発射される直前のロケットランチャーが接触する。
師匠は至近距離で爆発に巻き込まれる。
それも直ぐに「再生」していく。
「一旦、作戦を立てない!?俺に良い作戦があって!このままじゃ逃げられもしない。「押出展開」!」
「これは岩永の、ぐ、」
魔力を飛ばし、再生中の師匠を吹き飛ばす。
岩永支部長の「展開」?は、恐らく魔力を実体化させてそれを周囲に展開する物だ。
魔力感知で、それの応用系の使い方を見ていたから使えた。
「俺の作戦だけど、何人か師匠を埋めない?『森の光芒』で空いた穴に『光線』を打ちまくって穴を広げて!そこに師匠を入れて埋めよう!これで数を減らしたいなと!」
「••••窒息死させるのね••••」
「••••••そんな事をして、キミはいいの?師匠なんでしょ?」
「確かに残酷な方法だけど。このままだとどうしようもないから」
要は、生きたまま土葬する作戦だ。
倫理観は皆無だが、これなら師匠の「再生」でもどうにもならないだろう。
俺一人では出来ないが。
協力がやれれば、いけるはず。
「••••••••『光線』。やろう。ぜんいんきてる••••イリカはいい?」
ホワイトが『森の光芒』で空けられた穴の周囲に、光るレーザーを打ち出す。
それが広がった。
「••••分かってるわ、、生き残る為、、やる••••」
「キミが良いならいいけどさ••••手伝ってあげるよ。『束ねた闇』」
黒田も穴の周りに黒いレーザーを打ち出す。
レーザーは小さな穴の中でぐるぐる回り、更に穴を広げていく。
「ありがとう。これなら行けるはず。頑張れば」
「おい。何やってんだお前ら。こっちに攻撃しろよ。「勇気」」
一人の師匠がこちらへ歩いて来る。
手には「勇気」を纏っていた。
「地面で遊んでたから勝つなんて。オレ自身が仕方ないじゃすませられねぇよ。殺す」
「••••私がやるわ。は」
その師匠の拳とイリカの拳が激突する。
イリカが一方的に押し勝つ。
師匠がまた吹き飛んだ。
追加で崖の上からロケットランチャーが打たれた。
こちらに落ちてくる。
「ここは任せてくれ!「結界」で何とかするから!」
俺は「結界」を足場に、飛び上がる。
こうして空を駆け、直接爆発させよう。
「ははは!オレも混ぜてくれよ!!大空!空中戦しようぜ!初だぜオレも!」
もう一人の師匠が、空中から乱入してくる。
その師匠はロケットランチャーを足場にしていた。
丁度いい。
「結界」を足場に、半回転する。
今、足が上になっていた。
更にまた「結界」を貼る。
「頭突きを喰らえ!」
「結界」でロケットランチャーを爆発させる。
それで加速をつけ、師匠に頭突きを喰らわす。
「理解した!穴に落とすつもりか!これで一人目だ!つーかその体勢移動!なるほどな!」
頭突きを喰らった師匠は、ホワイト達が広げている穴に落ちていく。
まず一人だ。
そして、師匠が這い上がってこないよう、すぐ他の師匠も穴に入れる必要がある。
頑張らなければ。
俺は頭から落ちていく。
足は「再生」により、段々と治っている。
下では、イリカが一人の師匠に苦戦していた。
師匠はほぼ魔力を動かさない事で、イリカのパンチで部位が即爆散するようにしていた。
そのせいか、イリカは師匠を吹き飛ばせない。
一方、ホワイトと黒田達へは俺の吹き飛ばしから帰って来た師匠と戦っていた。
その攻撃は黒田の黒い粒子を出す魔法で防がれる。
ここで、良いプランを思いつく。
ポケットの中に手を入れ、転がった際に混入した土を手に集める。
「頭を固定するから!ビームで体を消し飛ばして!」
「オレにも聞こえてんだが。対策するだろ普通。大空」
師匠の頭付近に、土の粉末をばら撒く。
周囲に砂煙が広がる。
その煙を『停滞』で固定する。
これが壁になり、師匠の放つロケランを防ぐ。
更にそれで動けない。
俺は受け身を取り、地面に倒れ込む。
「••••『森の光芒』」
すぐにホワイトが光の柱を降らせた。
師匠の体は消し飛ぶ。
このタイミングで『停滞』を解いた。
そして、少し転がって師匠の頭をキャッチした。
「大空。良くキャッチ出来るな。命掛かってるとは言え。血だらけなオレを」
勢いを付け、師匠の頭を穴にシュートする。
この時点で師匠は半身ぐらいまで再生していた。
その為、師匠は穴の端を手で掴む。
すぐ落とさなくては。
「••••キミは無理するね。あと後ろから飛んできてるよ」
「ぐお!」
次の瞬間、鎖に巻かれた師匠が俺と激突する。
割と痛い。
「ご、ご、ごめんなさい。大空。穴に入れようとして••••」
「い、いいよ。『凄い風』」
「オルキデと殴り合って、、掴めてきたぞ。武術の真髄。まだ練度が足りてないが••••」
「ぼっーとすんな。仕事だぞ。オレ。おい!」
「仕方ないだろ。欲しいもん手に入りそうなんだからよ」
強風を吹かし、横の鎖に巻かれた師匠を転がす。
師匠は掴まっていた師匠ごと、穴に落ちる。
これで三人目。
だが、途中で「再生」を切ってしまった為、足が治りきっていない。
「••••••ちはる。だいじょうぶ?おんぶする?」
「はぁ。逃げるのに足怪我してどうするの。ボクが背負うよ。ついでに治すから。『叛逆循環』」
「ごめん。急がないと逃げられないって思って」
そんな中、俺は黒田に背負われた。
またしても、体が逆再生のように治っていく。
「本当に三人も落としやがった。やるな。オレの弟子。オレも援護したってのに」
「おい!テメェら!こっちも連携すんぞ!他のオレが埋められる前に巨大も来い!負ける前に殺すぞ!オレが死ぬには早え!」
「岩永まだ片付いてないが。ま、瀕死だし、こっち優先か。つーか弟子にボコられて恥ずかしくねぇのか?オレはよ」
三人の師匠が崖の上に立つ。
その内の一人は、血の噴射で浮いていた。
直後、三人は崖から飛び降りる。
全員、ロケットランチャーを構えていた。
「ははは!!巨大なオレをどうその穴に落とす!やってみろ!!」
「••••『森の光芒』。だめ」
巨大な師匠が突如上空に現れ、飛び蹴りをしてくる。
その師匠は、足の裏に「勇気」も纏っていた。
光る柱で消し飛ばされても、即復活する。
「黒田。壁を出してもらう事って出来る?今は能力を使って貰っているけどさ」
「さ、囁かないで!ゾワっとした!ゾワっと!『惑わされた闇との壁』」
「そ、そっか。いつも通りの声だと煩いかなと」
「囁かれる方が嫌だって!いつも通りでお願い!」
黒い粒子が頭の上に展開される。
すぐに大きい師匠の蹴りが衝突し、黒い粒子が大きく振動した。
「••••いいあわない。あとにして」
「逃がさねぇぞ!テメェら!殺す!」
地面に着地した三人の師匠がそれぞれロケットランチャーを発射する。
それと同時に、こちらへ走っても来た。
「••••••私が二人やるわ。他は頼むわ」
上からバギィンと音がした。
塵が破られ、巨大な師匠も降ってくる。
「とりあえず他のロケットランチャーは俺がやるよ。『束ねた闇』」
「••••わかった。上はわたし。『凄い風』」
「••••上はボクも手伝うよ。ホワイト。もう一度。と!『惑わされた闇との壁』」
二つはイリカに任せる。
俺は動かせるレーザーで一つのロケットランチャーを破壊した。
ホワイトは上に風を吹かし、巨大な師匠をフワッとさせる。
そこに黒田はまた粒子を展開した。
「常人流奥義「瞬動」」
ロケットランチャーが爆発し、砂煙を起こす。
この砂煙の中から、一人の師匠が急に加速する。
「急に来るね!危ないな!」
黒田がそれもギリギリで避けた。
上に貼った闇魔法の壁も、巨大な師匠にすぐ破られる。
「••••『森の光芒』」
直後、上空から光の柱が斜めに降ってくる。
それは巨大な師匠と近くにいる師匠を巻き込む。
「狂人流奥義「捻挫」」
普通の師匠は、これに対し突如足をガクッとさせた。
それにより体勢を崩し、師匠は光の柱を避ける。
「狂人流奥義「花火」」
「え!?人間そんな動き出来んの!?」
この師匠はガクッとした足を軸足に、アッパーを繰り出す。
足はありえない方向に曲がっている。
そうして、黒田の頭にアッパーが放たれた。
「ここは俺が時間を稼ぐ!魔法をお願い!」
俺の「結界」と「勇気」でアッパーを防ぐ。
これは特別な魔力の動きのせいか、威力が段違いだ。
数瞬の激突の後、どちらも破られる。
「『放す闇』!ふー!危っぶないね!」
黒田が黒い壁を放ち、師匠を吹き飛ばす。
師匠は近くの地面に着地した。
「どんな命の危機があって!受けてもよ!!光魔法も闇魔法も真似しづらい!やめてほしいわマジで!受けても損だけだぜ!「勇気」!」
巨大な師匠が塵から復活する。
拳に「勇気」を纏ってもいた。
「足も治った。またありがとう黒田。俺が小さい方はやるよ」
「••••わたしはいい。がんばって。『森の光芒』」
「••••••まあホワイトと協力してくれるなら、一人、入れられると思うけど。キミは一人でいいの?あれ、変な技使ってくるよ」
巨大な師匠と、普通の師匠二人が目の前で並ぶ。
一方、イリカは二人と互角に戦っている。
鎖で巻いた師匠でロケットランチャーを防ぐ。
それを見ながら、俺は黒田の背から降りた。
能力も「再生」に変える。
「ありがとう。黒田も大丈夫。行ける」
「だったら良いけど」
「オレとタイマンか?「変異」使ったオレと。負けたら恥ずいな。「勇気」」
小さい方の師匠が、走る。
俺に殴りかかって来た。
それに合わせ、俺の足をガクッとさせた。
「狂人流奥義「捻挫」」
急に態勢が崩れる。
それにより、拳を避けられた。
「「花火」。こんな感じか」
「ぎゃ、」
ここから師匠の顎にアッパーを繰り出す。
師匠の頭だけが飛んでいく。
その頭は空中で爆散した。
まるで花火のよう。
「「噴射再生」。は!」
追加で捻挫した足を、血を吹き出せる足へと「再生」させる。
ここから血の勢いで一回転し、師匠の体を蹴った。
一度見たので「噴射再生」での飛び方は分かる。
頭のない師匠の体が、まあまあのスピードで吹き飛んでいく。
更に、俺は血の勢いで飛ぶ。
「オレ、、の昔の、コンボ、恥の、、」
「シュート!」
再生しかけた師匠に追いつき、蹴りを入れる。
師匠は穴へ落ちていく。
「••••『塵たる闇の愚かさ』。これで良いね」
「••••『森の光芒』『凄い風』」
風と共に、塵になった巨大な師匠が穴へ入って来る。
それの前には黒田の魔法により、その師匠は動けなくされていた。
「何したいのよ!急に一人飛んで!だからこんなに!」
「••••お前に足りてなかったのはその殺意だ、、オルキデ、、よく、よく、やってるな、、やってるか、」
この穴に、鎖に巻かれた師匠が叩き込まれる。
だが、穴には「再生」してきている巨大な師匠が穴に詰まっていた。
まだ落ちない。
「おい!テメェら!一旦全部吹き飛ばすぜ!不要な弟子ごと!!タイミング読んで二人!風出せよ!!」
足から血を吹き出させる師匠が、空中にいる。
師匠は下の俺達に向けて、ロケットランチャーを構える。
「何する気!もう今更!」
巨人に使った、あれを打つ気だ。
そんなものをここで使われたら、色々消し飛んでしまう。
「•••••まじった。とめられない。まずい。『光線』」
「先にロケットランチャーを壊すか。『光線』」
「「完璧」!狙うは一発逆転だぜ!殺す!!!」
俺とホワイトは、光るレーザーで師匠の体やロケットランチャーを狙う。
それは師匠が纏った謎の白い膜に防がれた。
ロケットランチャーにも纏われている。
「これは!あれか!キミ!押し込んで!!ボクが穴を後から広げるから!『束ねた闇』!」
「わ、私!?わ、分かったわ!」
黒田は黒いレーザーで穴を広げる。
イリカはそれを受け、師匠に飛び蹴りをした。
「••••••もう遅いな••••弟子達。さよならか••••••『凄い風』」
「はは!『凄い風』!オレとしちゃあ、もっとオルキデの攻撃を受けてみたかったぜ!」
強風が空に向けて、吹き始める。
空の師匠は地上へ、ロケットランチャーを放とうとする。
「無理か。何かに当たらないと」
また自己犠牲戦法だが。
良い作戦を思い付いた。
風を生かし、俺は飛び上がる。
「受けんのか!?やってみろよ!大空!出来るもんならな!」
師匠がロケットランチャーのトリガーを、引く。
その直前、銃声が響いた。
岩永支部長が打った銃弾が、師匠の「完璧」を貫通する。
更に、師匠は落ちてきた。
何かに蹴られたかのように。
「おい!テメェら!!邪魔すんな!!おい!死ぬぞ!オレがよ!ざけんな!!!」
無に向けて、師匠はこう叫ぶ。
また師匠は強風で上空へ打ち上がっていく。
「だったら!もう一発しかねぇ!!いくぞオレら!ここで死ぬ訳にゃあいかねぇだろ!!」
「「神速」!」
またロケットランチャーを構えた師匠。
俺は「結界」も足場に、その上へ移動した。
あの戦法は取る必要がない。
「大空ぁ!潔く死ねよ!!もう邪魔すんなテメェ!!」
ここから師匠の方に向けて、俺は飛び降りる。
勢いが付いた。
「「勇気」!」
俺は「完璧」が貫通された場所を狙い。
師匠の背中を殴る。
そうして、師匠は強風の中を突っ切っていく。
俺は風の影響で、上空へ飛ぶ。
詰まっていた師匠達は、イリカの飛び蹴りを喰らっていた。
この二人も落ちた。
「偶然得られた二度目の人生も!!弟子の糧になって!!オレは終わりか!消えろよぉぉぉ!!しょうもねぇぇ!!!何だよ!!一切意味ねぇじゃねぇか!!クソがぁぁぁぁぁ!!!」
暗闇の中へ、最後の師匠も落ちて行く。
声もすぐ聞こえなくなった。
暫くし、俺も地上に着地した。
早く埋めなくては。
師匠が上がって来てしまう。
「会゛長゛!!こ゛め゛ん゛っ゛す゛!!自゛分゛烈゛さ゛ん゛に゛脅゛さ゛れ゛て゛て゛!自分の事嫌いにならないで欲しいっス!!許して!!」
突如、涙目のひらめが現れる。
彼女は手を合わせ、謝って来た。
「そ、そっか。いや俺は良いよ。最終的に誰も死ななかったし」
多分、昨日の俺を気絶させたのはひらめだろうけど。
まあいいや。
最後には手伝ってくれたし。
「会長!!ありがとうっス!!会長は最高!!一生忠誠を誓うっス!ついでにホワイトさんもイリカさんも黒田さんもすまんっス!ごめんご!!」
「••••••あんた、気絶してたんじゃないの、?•••••それに、師匠の味方じゃ••••」
「いやー。あんなの演技に決まってるじゃないっスか~~!それに自分気付いたんス!こうやれば会長も現状維持も総取り出来るって!烈さんの犠牲はそれと比べたらノーマンタイっス!!」
ひらめとイリカが会話をする。
イリカは暗い顔をしていた。
こんな中、俺は『領域』や手を使い、急いで穴を埋めようとする。
黒田も魔法で近く崖を崩し、それ用の土を用意してくれた。
そのお陰で、ドンドン穴が埋まっていく。
良かった。
完全にホワイトも俺も、助かった。
「今回も本当にありがとう。黒田。欲しい物とかある?お礼に何でもいいからするよ」
ホワイトもイリカもそうだが。
自分の得にならないのに、助けてくれた。
これも、お返しをしたい。
「はぁ、、じゃあボクと。また遊ぼうよ。友達みたいに。奢りじゃなくてもいいからさ」
黒田は眉を抑えた。
何処か困った様子。
でも、友達。
友達か。
友達。
いえい。
「かいちょー!!埋めるの自分も手伝うっス!!証拠隠滅っス~~!!共犯っスね~~!!」
「•••••••••わたしもやる」