第三十四話 発見と粉砕
「ハさん!それっぽい所ってここ!?」
「我覇王也。嘘はあまり付かぬ」
ハ•オウの自称舎弟が、遠壁地区である家屋を発見した。
彼の魔力感知によると、中に一人だけ椅子に縛り付けられているらしい。
イリカとハ•オウは、そこへ突入しようする。
イリカはうろうろ走り回っていたら、ハ•オウと出会ったのだ。
「我覇王也。突入」
ハ•オウはドアを蹴り殴り、古い木造の家屋に侵入する。
中には埃と二階への階段しかない。
走ってハ•オウは階段へ向かう。
「ガハッ」
ハ•オウは突如倒れ込んだ。
胴体からは血が吹き出した。
「だ、大丈夫、!??急に倒れて!」
イリカはハ•オウに駆け寄ろうとした。
また足が動かない。
(またエム!今度はなによ!!)
(恐らく勇者だ。「透明」になってる奴がいる。ネミノスの野郎に奇襲しかけたのが。安易に入んな)
(••••高田の事、、だったら違うわよ!あんなに仲良さそうだったもの!)
洞窟へ共に行ったことを思い出す。
イリカからは、あの二人が相当仲良く見えた。
だからこそあり得ないとイリカは思う。
(は?じゃあ試してみろよ。鎖は持ってるだろ?それで部屋内全体に攻撃しろ)
(••••••分かったわよ)
ポケットに手を突っ込み、丁寧に鎖を取り出す。
イリカは鎖の端を片手に巻き、振るう。
埃や空気を鎖が切り裂いた。
突如イリカの背中に衝撃が走る。
それにより、部屋の中に押し込まれた。
「逆張り精神やめて欲しいっス。痕跡を残さない忍者として、外にいたまま攻撃されると何も出来ないっスから~~。素直に入って来て欲しいっス」
蹴られた扉の所には、忍者服を着、腕輪を付けたひらめが立っていた。
ひらめは扉を閉めた。
「••••え?本当に?」
イリカは驚きを隠せない。
半々ぐらいの気持ちだった。
「本当に高田っスよ~~。何故中心街への誘導に従わなかったんスかね~~。まあ、これから一人一人消してけばいいっスね。「身代わりの術」」
ひらめはその場に小刀だけを残し、消えた。
イリカはひらめを見失う。
(おい!今すぐ鎖で周りを攻撃しろ!)
(わ、分かったわ!)
言われた通り、イリカは鎖を振るう。
ガキィィンという音が背後で響いた。
ひらめの小刀で、鎖を防いでいた。
「よく分かったっスね。「透明」と「神速」の合わせた技を。対処法がこんな簡単に割れるとはっス。「身代わりの術」」
小刀を残し、ひらめは消える。
シュッシュッシュッという音がイリカの耳に入る。
しかし、目には何も映らない。
(行けるか?おい)
「このぐらいなら!問題ないわ!気配があるもの!」
イリカは音や空気の振動を元に、三つのクナイを避ける。
「透明」になっていたクナイは、床に突き刺さった。
「「火遁の術」っス」
突如、イリカの近くから炎が現れる。
予兆は全く無かった。
「危ないわ!でも答えなさい!!」
炎をイリカは反射でしゃがみ避ける。
真上を炎が通っていく。
「「土遁の術」」
直後、土の粒子が顔の前に出現した。
イリカの目に土が入る。
「う、うわ!」
「何をっスかね。「身代わりの術」」
ひらめが消えた。
イリカはとりあえず鎖を振り回した。
それにより、飛んで来た小刀も叩き落とす。
「やっぱ強いっスね。オルキデさん。こっちは近寄らないようにしてるんスのに」
どこかから、ひらめの声が響く。
イリカは辺りを見回すが、誰もいなかった。
「あれよ!!おかしい!!!おかしいわ!!」
「なにがっスか」
「あんなに大空と仲良さそうだったのに!誘拐に加担するなんて!あれよ!おかしいわよ!なんで!!」
「おかしくないっスよ。会長は何をしても許してくれるっス。だったら別に、あなた達がどう思おうと無問題っス」
「大空が一番大事そうにしてるのがホワイトちゃんじゃない!それに手を出して許すわけないわ!!だから辞めて!!」
「オルキデさんが会長の事よく分かってないだけっスよ。会長その辺雑っスから。なんだかんだ全てを許してくれるんス」
平然とした声が
おかしいと、イリカは思う。
「学校に居た時の会長へのストーキングも。多少のセクハラも。全部許して、夢も認めてくれたっス。ストーキングは会長がお姉さんに話しちゃって、周りにも広まっちゃったスけど」
「ただの大空の優しさ、、変さじゃない!それを利用して!何とも思わないの!!あんなに仲良さそうだったじゃない!」
「いや、違うっスよ。会長はその辺雑なんスよ。というか、あなたも同じ穴のむじろっスよね。あんなクッソ重い絡みしておいて。「透明の術」」
イリカの耳に、誰かが床に降りてくる音が聞こえた。
次の瞬間床が消える。
(なに!?なによ!これ!?)
(能力の応用だろ。床全体に魔力を流したってだけだ。よく分からんクソカスごとぶっ壊してやれ)
(••••••壊さないわよ••••音はこの辺から聞こえたわよね••••••でも、倒しましょう。ハ•オウさんも病院に運ばないと••••)
イリカは透明になった床を蹴る。
何か硬いものに躓いた。
(「透明」な刀が突き刺さってるな。追撃くんぞ)
「分かってるわよ!そんぐらい!」
鎖を振り回そうとイリカはする。
だが、腕に力が入らない。
足にも力が入らない。
全身にもだ。
イリカは倒れ込む。
「トドメっスね。で、最後に言いたいんスけど。今は四季さんも許して認めてくれるんで。会長に嫌われようと大丈夫っなんスよ。負け惜しみじゃないっスけど」
どこからかひらめの声が響く。
イリカは風を感じた。
小刀が首元へ飛んできている。
しかし、体は動かない。
眠くもなってきた。
(なんで、、動かないわ、、)
(••••毒だ、、『範囲融合』を使って、、消してみろよ)
(出来ない、、でも、、口が動かせないわ、、)
(能力は、、意志の力だ、、体がどうなってようと、やろうと、、思えば出来る、、早く使え、、おれも眠いんだよ、、、)
「ーーー(『範囲融合』)」
イリカは床と毒を融合させた。
次の瞬間、眠気が無くなる。
床は固形の毒で出来たものになった。
一気に起き、イリカは鎖を振う。
クナイを叩き落とす。
「自分のクロロホルムが!?魔力で強化してたんスけど!『融合』っスか!?そんな曖昧でもいいんスか!?」
「もう終わらせるわ!覚悟も決めた!」
イリカは鎖を振り回す。
ブゥンブゥンと音が響く。
それを部屋全体に広がるように、振るう。
四隅以外の範囲で、鎖が回される。
「そこね!」
イリカは天井の端に鎖を投げた。
鎖が、無に巻き付く。
その鎖から人一人の重みをイリカは感じた。
イリカは全力で引っ張る。
「分かったんスか!自分は動いてないのに!四分の一っスよね!?」
「運!!」
「うん!?運!?ここで!?ふざけんなっス!」
急に抵抗が無くなり、鎖が軽くなる。
鎖に巻かれた何かが、イリカの方へ来た。
「カウンターで!さよならっス!!」
「焦り過ぎよ!私に近接戦闘で勝てないんでしょう!?」
イリカがそれに合わせ、体を捻る。
何かの頭がありそうな箇所を蹴った。
「ゔ!」
蹴られた何かは鎖から解かれかける。
その前に、イリカは拳を振るう
「嫌われないから!なんでもしていいなんて!そんなの変よ!不健全!!!」
「せ、説教、されるまでも無く分かる、っスよ、ゔ」
何かは腹を殴られ、壁にぶつかる。
埃が飛び散った。
「だったら!なんで誘拐なんてするの!?あれよ!!」
「にん、むで、、みとめらたいから、すかれたいからっス、、、で、、オルキデさんが、こっちきたからっス、、はらたつ、っスから、さよならっス!」
何かは壁にぶつかったまま、小刀を投げる。
イリカは鎖でそれを弾く。
「喰らいなさい!終わりよ!は!」
直後イリカは急接近する。
また何かの腹を殴る。
殴った拳はめり込んでいく。
「ご、ほ」
能力が解かれた。
ひらめが姿を表す。
次はひらめが倒れ込む。
「•••••負け••••っスか」
透明になっていた床も、元に戻る。
床には大量の小刀が突き刺さっていた。
「鎖を巻きつけた時!遠距離攻撃に終始すべきだったわね!それが敗因よ!」
「なげ、てもかわすだけっスよね、、致死毒を、持ってこなかった、のが、敗因、っス、、」
ひらめは呟きながら、自身の胸元を探り始める。
怪訝そうにイリカはそれを見た。
「••••••負けて、壁にぶつかった、拍子に、、ホワイトさ、んに付けてる拘束、具の鍵、落とし、ちゃったっス、、偶然、、、」
ひらめは胸元から黒いカードを出す。
それを手から落とした。
「あ、でも、会長にだけ、は、まだ生きてたら、自分、の、お陰で、ホワイトちゃんが、助かった、って、言っといて、ください、、ガク、、」
ひらめは頭をガクっとさせた。
目を閉じている。
イリカはそれをまだ怪訝そうに見た。
(•••••こいつ、何がしたいのよ。殺しに来たり、鍵くれたり)
(お前も側から見たら似たようなもんだろ。つか勇者共なんて大体こんなんだぞ。やんなら早くホワイトの鍵取って、街出んぞ。急げ)
(••••••そうね。でも!ハさんを病院に送って!巨人の所に行ったと思う大空を迎えてからね!)
ハ•オウはまだ階段で倒れ込んでいた。
更にクロロホルムの影響でぐっすり寝ており、自力で動けなさそうでもある。
(は?やるとしてもあの野郎を迎えに行く程度だろ。時間がねぇぞ)
(••••••すぐ、すぐよ!あれして!すぐやるわ!最初はホワイトを解放して!)
カードを拾ったイリカは、階段をダッシュで登り始める。
埃が大量に飛び散った。
(おい!お前!冷静に考えろ!人の話聞け!)
二階につく。
そこには、ホワイトが椅子に固定されていた。
両腕は謎の黒い箱によって固定され、口は白い布で塞がれていた。
「ホワイトちゃん!今助けるわ!ちょっと待ってね••••」
「もご、もごご」
イリカはカードを持ちながら、ホワイトの手についている拘束具に触る。
固定具は、黒い正方形の箱だった。
「何かしらこれ、、図書館の奴っぽいけど、、」
イリカはよく分からずその箱をガチャガチャする。
これのお陰で、カードが箱と接触した。
ドンと、黒い箱がホワイトの手から落ちる。
後はイリカがパワーで白い布を引きちぎった。
ひらひらと千切れた布は落ちていく。
「ありがとう。イリカ。なにもつかえなかった」
「感謝はいらないわ!お互い様!それより!まず、ハ•オウさんを運びましょう!協力してくれたから!怪我しちゃって!」
「わかった••••」
ホワイトは立ち上がり、辺りを見まわし出す。
首も傾げていた。
「どうかしたの?ホワイトちゃん」
「ちはる。いないの?」
「大空?••••多分洞窟のあった方に行ったんじゃないかしら?探してる時も見なかったし」
「••••そう」
ホワイトは目を閉じる。
イリカはそれを見、何をやっているのかなとハテナマークを浮かべた。
「••••••いそごう。洞窟へ。金髪ところしあってる」
「え、殺し、殺し、、殺し!?あれ!?殺し!?金髪と!?金髪!?」
(金髪!?分かる!金髪!?最近見なかったかしら!?)
(金髪で勇者と組んでる奴なんて一人しかいねぇ。分かってんだろ。ホワイト居る時話しかけてくんな)
(そ、そんなことはないわよ!あれよ!あんなに丁寧に修行をつけてくれたのよ!弟子を殺すような人には見えないわ!)
(いや、お前に人を見る目はねぇだろ)
—-
ロケットランチャーが三発、周囲から飛んでくる。
戦っていた二人の師匠と共に、それを受けた。
「、、痛いか」
一つは「結界」で、一つは蹴った他の師匠を盾に、最後の一つは片手を当てる事で対応する。
だから、左手が爆散した。
すぐに「再生」に切り替える。
これにより、爆発の傷は回復していく。
「再生」を使っていない状態で欠損した左手は、もう治らない。
「ゆっくり再生している暇はないぜ!?喰らってみろ!ははは!」
身長五メートルとなっている師匠が殴りかかってくる。
大きい分、動きは遅かった。
だが威力は高いだろう。
避けなければ。
「ほぼリンチで悪いな。これがオレの能力だかんな。仕方ねぇ」
足が掴まれる。
先ほどロケットランチャーの盾にした師匠だ。
肉片となったはずなのに、一瞬で治っている。
死んでしまう。
傷は治り切っていないが、「再生」から能力を変える。
「結界」と「勇気」で防御体制をとった。
「年下の弟子一人にリンチって。どうなんだよ。恥ずくね?『凄い風』拳」
それと同時に。
真横から洒落にならない技が打たれそうになる。
ポケットの木の枝をその師匠へ投げつけ、一瞬タイミングをずらす。
これで多少威力は減る。
「ぐ、」
それでも、ある程度の衝撃波は出た。
衝撃と大きい師匠のパンチで吹き飛ばされ、地面を転がっていく。
肋骨も痛い。
背中に石や枝が何個か突き刺さる。
「ははは!一方的だぜ!やっぱ「変異」使った無限再生七人相手じゃどうもなんねぇか!?攻撃してみろよ!オレに!」
「いや、まだある、はず」
「変異」とは、才能がある者が自らの魔力を使いこなす事で出来るようになるらしい。
これは難易度が高く、この世界でも使えるのは中々いないと師匠から教わった。
その分強力で、使用中は能力の限界を越えられる上、個人差はあれど身体能力も強化される。
しかしリスクもあり、多くは一時間程度で魔力が尽き「変異」が解かれるケースが多い。
要は、一時間頑張って耐えば良い。
そうすれば、魔力の使えない普通の人間を倒すだけ。
実は使われてから三分も経っていないけれど。
なのに、左手がもう消えているけど。
「ははは!こうか!面白えな!足場を作って飛び交うのは!コツは自信を持つ事か!?」
頭上から声が聞こえる。
師匠が飛び蹴りをしてきていた。
この師匠は、腕輪から出したいくつものロケットランチャーを足場にする。
俺は地面で転がり、それを避けた。
師匠の蹴りで地面に大きな凹みが出来る。
「常人流奥義「瞬動」。またリンチするぞ。恥ずいな」
避けた直後の俺が何かにぶつかる。
突如加速した、一人の師匠だ。
俺は避けられなかった。
「もう終わりか?まだ行けんだろ。あんな一緒に修行したんだしよ。つーか殺し合うにしても、やんのが早過ぎだ。こんなんじゃ全て学べないぜ」
「仕方ないだろ。最低でもオルキデと来る想定だったんだからよ。そん中でもオレは成長した。それで十分だろ」
更に二人の師匠も「神速」でやって来た。
その三人全員が、俺に向けてロケットランチャーを構える。
「結局だが。任務だし仕方ないな。パワーも得られた。テメェら打つぞ」
「••••分かってる。オレの手で死ね。大空」
ロケットランチャーが、発射される。
至近距離から。
もう、何も出来なかった。




