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第三十三話 無理そう





 「勇者法、第二十七条に、のっとって、その、誘拐、は、緊急任務、とする、と通知が、来ました。関われ、ば、殺害、されても、文句、は言えません。更に、妨害、と、判断されれば、生還、しても、極刑に、され、ます。だから、命令、します。大事な、冒険、者達を殺され、たくありま、せん」

 

 「え!妨害しただけで!!?極刑!???」


 「••••やっぱりそうか」


 ギルドマスターの発言で、ギルド内がまたザワザワとし始める。

 イリカも顔を青くする。

 

 「ど、どういうことよ!無理やり過ぎるわ!無理やりよ!あれよね!これ!あれよ!!」


 イリカは大声で訴える。

 その頭は混乱していた。


 「行く、として、も、覚悟を、決めましょ、う。命、を捨ててまで、助け、たいの、なら、行くべき、で、す。それ、で、ないの、なら、やめしょう」


 「これでも手伝ってくれる人はいますか?居てくれたら嬉しいですけど」


 千晴は辺りを見回す。

 誰も声を上げなかった。


 「わ」


 イリカは、私は行くと口を開こうとする。

 なのに何故か口が開かない。


 (ちょっと待て、おい。お前。行こうとしてんだろ)

 

 (何!邪魔しないでよ!!)


 (復讐はいいのか?ようやく道が見えてきたってのに。ここで行けば死ぬだけ。潔く諦めようぜ)


 (そ、それは、、そうだけど、、)


 「居ないですか。じゃあこれで」


 千晴はギルドから出て行く。

 割と平然な顔をしていた。

 

 イリカはそれを見る。

 足はもう動く。


 だが動けなかった。

 復讐の失敗を考えると、頭が回らなくなる。

 どうしようと、更にこんがらがった。


 (ヒヒヒ!それが賢い選択だよな!?おい!ハハハ!)

 

 「なんで、イリカさんも!大空さんを一人で行かせてるんですか!!あんなに怒ってたのに!!」


 直後ら怒った顔をした亜紀と、面倒そうな顔をした若頭が冒険者ギルドに乱入して来た。

 イリカらと共に宿屋を出たが、走る速度の関係上が出ていたのだ。

 

 「坊ちゃん。あの白いガキの誘拐が連盟のあれだからでしょう。警察の動きもあまりにガバガバ過ぎますから。あんなだったら苦労してないですよ」


 「だったら直接クレームつけましょうよ!!ここに電話ありますよね!!借りていいですか!??」


 「クレーム程度で辞める訳ないでしょう。だったらこんな強引な手段を取っていませんよ。諦めて帰りましょう。金の為、宿にいるお客様の対応を」


 「東口さんは!イリカさん達にクレーム付けられて!クビにされたことを恨んでるから!そう言えるんですよね!??イリカさんもなんとか言ってください!一緒にクレームつけてくれますよね!!?」


 「そ、それは••••••••」


 亜紀は叫ぶ。

 けれど、イリカは何も言えない。

 そんな中、若頭はめんどくさそうな顔をしている。


 「い、いいえ、関係ない、所、へ直、に、苦情、を言う、ならば、問題、ない、はず。特、に、支部長、であれ、ば、見逃して、くれる、でしょう。やる、価値は、あります、」


 「この人は話分かりますね!!今すぐに!やりましょう!!」


 



 「おらー!!早く出てこい!岩永!!!クレームだ!」


 「落ち着いて下さいよ。坊ちゃん。というかリスクも考えて帰った方が」


 「東口さんも似たようなことやっていたでしょうが!!どの口で言うんですか!邪魔してこないでください!!!」


 「••••ちっ、痛い所を、、」


 亜紀達は勇者連盟の支部のコールセンターへ、電話をかけた。

 こうして、岩永に繋げることは成功する。


 今では、亜紀が電話口で待機していた。


 「ガチャ。もしもし。こちら岩永。そちらが、今回のホワイト誘拐任務に苦情がある方々と」


 電話口から岩永の声が聞こえだす。


 ギルド中の人々が静かになり、意識をそこへ集中させる。

 亜紀は顔を真っ赤にして叫ぶ。


 「今回の!誘拐について!!苦情があります!この行動をやめてください!!頭おかしいんですか!?誘拐するなんて!酷いです!終わってます!」


 「••••俺も今回は流石に強引過ぎるとは思う。だかな。一応こっちは規則を守ってやってる。これ以上苦情を言うようなら、勇者法第二十七条を盾に、この世からさよなら、となるぞ」


 岩永は悩ましげにそう言う。

 それを聞いた途端、皆の顔がサッと青くなった。

 一方、亜紀は顔をさらに赤くする。


 「逆にお前らがさよならしろ!全員!恩人に恩すら返せない世界なんてある意味なし!!東口さんもなんか言ってください!!言わなきゃクビ!!」


 「は!!?またそれかよ!?テメェ以外誰も俺らを雇ってくれねぇからって足元みやがって!!クソが!!はよ諦めろ!!」

 

 「クビか首飛ぶか!東口さんからしたらどっちも死ですよね!!早く言ってください!!言ってくれたら僕の遺産あげてもいいですよ!」


 怒号が飛び交う。

 どちらも顔が真っ赤になる。

 

 「あの。ここで喧嘩を始めるのはやめもらっていいか。結構真面目な話しているだけれども」

 

 だが!困惑げな声が、電話口から響いた。

 亜紀と若頭はもはや二人で喧嘩をし出している。



 イリカは辺りを見回した、

 誰も苦情を言おうとする人がいない。

 皆、怖気づいている。


 ならば自分がしなくてはと、イリカは電話を取る。

 

 「••••••し、師匠が何処にいるか、教えて欲しいわ、、き、今日だけ冒険者ギルドの裏に、いなくて」


 勇気を出して、口火を切る。


 イリカは、師匠にも説得を手伝ってもらうつもりだった。

 更にこの程度なら妨害にならないだろう、とも考えている。

 

 「••••月下か。任務遂行中だ。居場所は勇者法第十七条に基づいて言えないな、、」

 

 であれば、とイリカは思いつく。

 イリカは図書館で調べた、勇者連盟の本部と支部の構造について考えていた。


 「な、なら更に上の人に、繋いで貰うことは•••?社長とか、、役員とか、、」


 勇者連盟本部は社長を頂点とし、この下にそれぞれの部門を担当する役員、そして、その部門に所属している勇者や勇者資格持ち、という構造だった。

 そして、支部は社長だけが直接の上司であったと、イリカは覚えていた。


 「社長は高確率で空いていない。役員は今なら最低一人は空いているだろう。だが、ここまで強引なんだ。何かしらの事情があると見るのが普通。だから、俺が直で苦情を聞いたという事で納得してくれ」


 「出来ないです!!出来ない!!だったら勇者法がおかしいです!!あなた達は権力があって誰にも咎められないからそんな事が出来るんですよね!?」


 亜紀が突如乱入する。

 若頭は目を見開いていた。

 

 「い、いやー。勇者法は、国際監査機構で定められているから、、俺にそう言われても、、困ると言うか、、」


 「おかしくないなら!!法律の穴を突く方法ないんですか!?クレームつけてた時の東口さんみたいに!!強引だと思うんなら一緒に考えて下さいよ!」


 「ここまで、、関わるのは、、俺が取れる責任を超えるんだよな、、それで罰則が出たら、、庇えないぞ、、」


 大声で亜紀は叫び続ける。

 これにより、岩永支部長はタジタジになった。

 

 「さっきから微妙に話を聞かねぇな坊ちゃん。クソみたいな悪質なクレーマー••••ん?もしや俺?」


 「ほ、法律の穴をつく、、生還しても、極刑、、分かんないわ••••分かんないわ!!」


 イリカはこんがらがっていた。

 エムの協力は期待できず、頭を抑えて悩む。

 一方、若頭はなぜか冷や汗を滅茶苦茶流していた。


 「こ、こう、行けないっすかね。偶然そこを通った冒険者が、偶々見かけた被害者を発見し救出したと言う形で。岩永支部長」


 「あれ!!東口さん!!味方してくれるんですね!!」


 「社長に直接かけあえば出来なくはないが••••助けてどうする。必ず追撃はされる。それから被害者を守れるのか?社会から保護されなくもなる」


 岩永は低い声で問う。

 イリカは覚悟を決めた。


 「••••••••じゃあ、私が連れて行くわ。もう出ていくつもりだったから)


 (••••おいおーい。復讐はどうすんだよ。短絡的に行動する気か)


 (••••丁度良いわ!よくよく考えたら!今生きてる人を大切にするのも大事で!元々敵に回す気だったもの!すぐ出発すれば目もつけられづらいわ!!)


 (チッ。ちょっと喜ぶな••••ちっ)


 「それほどの覚悟があるか。分かった。もし本当に見つけられたのなら、偶然という扱いにしておく。すぐに社長と掛け合うから切るぞ。ガチャ」


 ツーツーという音が電話口から聞こえる。


 クレームは成功だ。


 「岩永、支部長、が、決めて、くれました。全員、で探せば、人質、が、見つかる可能性は、あります。恐らく、一日、以内、には殺され、ない、はず。私達、冒険者、ギルドの職員は、協力、出来ませんが、恩、を、返す為、死者、を出さないよう、頑張ってくだ、さい」


 「おおー!!」


 「暇な連中を全員で探させようぜ!ハ•オウさんもそろそろ帰って来てるよな!?」


 「え!?私たちは手伝えないんですか!??ひどいです!ギルドマスター!!」


 「勇者資格をとった時に誓約書を書かされたじゃない。アンタも私も。救助は諦めて仕事するわよ」



—-




 「私はとりあえず走りまわるわ!なんか見つけたらここに報告しにくるわね!手紙通りなら!まだホワイトちゃんは近辺にいるはずだし!」


 「近壁地区に、魔力感知が出来るやつはいったか!?怪しい人影を探してくれ!ぐ、」


 「Aランクの青木が行った!それより中心街にもっと人を行かせろ!報告がなかなか返って来ねぇんだよ!うえ、」


 「俺も手伝います!何かする事はありませんか!?ぎゃ。」


 「覇王!覇王!協力が出来るなんて!素晴らしい知能です!!けれど今は中心街ではなく、遠壁地区に行くべきとアホな僕は思います!多くの連中が中心街に行ってると思うので!」


 「中壁地区、捜索完了。怪しい箇所なし、なんだと、、」


 「我覇王也。いざ参る」


 「またグサ~~。なんで妨害されないと思えるんスかね~~。さよなら~~」

 









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