第三十話 武器?を貰った
黒田と遊んだ翌日。
俺はホワイトと宿屋の一階で、朝食を食べていた。
「おいしい、これ」
「どういう味付けをしているんだろうね。かなり甘い」
今日の朝食は、ミルク?にパンっぽい物をつける物だ。
美味しいが、かなりで済まないレベルで甘かった。
ここで、ドドドと階段から誰かが走って降りてくる。
多分イリカだ。
走って降りてくるのは珍しかった。
「大空!今日!修行に行く前に!武器屋によらないかしら!?街の復興記念セール中よ!!」
「?。良いよ」
そう言えば、武器屋には行った事がない。
使うにしても素手か木の枝だった。
余裕があるし、行ってみよう。
「ホワイトちゃんもどう!?修行始まるまで!一緒に見に行かない!?」
「ちょっとむり。いま佳境」
「わ、分かったわ!!お土産楽しみにしてて!」
—-
「ここで!何でも売ってるわよ!剣、銃、槍、弓、薙刀、銃剣、方天画戟、ナックル、火炎放射器、刀!」
「本当だ。何もかもあるね」
復興記念三割引きセール中の、武器屋にやって来た。
それは冒険者ギルド三階にある。
銃刀法?云々との関係上、ここにしか武器は売っていないっぽい。
「私は大体の武器を使えるから!分からないことがあったら何でも聞いてきていいわよ!来て!」
「へー。使えるんだ。剣も銃も弓も火炎放射器も」
「当然よ!!それが武術の真髄を使うのに最低限必要だもの!!」
「凄いね。基礎が必要だなんて」
「そ、そうかしら!?そうね!!あんだけ頑張ったから!!頑張った甲斐あるわ!!」
俺はそれほど武器を扱えないから、武術の真髄?も真似が出来ない。
風魔法などを俺が中々使えなかったのと、同じ理屈だ。
つまりある程度の基礎が無いと、素で真似できないのだ。
「で!!大空には刀がお勧めだわ!色々試せる室で試してみましょう!!着いて来て!」
「わ、分かった」
—
イリカに引っ張られ、色々試せる室?に連れて来られる。
ここは中心部にマネキンがあるだけの、謎の白い部屋だった。
マネキンも超技術で作られており、いくら切られてもすぐに再生する。
俺は先程借りた刀を振るった。
マネキンの首が飛ぶ。
「センスあるわよ!大空!もっと遠心力を活用する感じなら完璧!」
「そっか。こう?」
また刀を振るう。
より簡単に首が飛んだ。
「凄い才能を感じるわね!師匠が選んだだけあるわよ!大空!才能感じるわ!」
めちゃくちゃイリカは褒めてくる。
特に才能をだ。
少し我儘を言うのなら、今まで積み重ねた努力を褒めて欲しかった。
自分の才能が褒められても、親に感謝って感じだし。
「センスあるわ!!それで!それで!••••」
イリカが突如、言葉を詰まらせる。
さらに、服を手でゴソゴソさせ出す。
?。
「そ、それで!このDXコロスンジャー刀をあげるわ!」
イリカは鞘に入った刀を、服の中から出した。
その鞘を外し、俺に渡して来る。
??。
「持ってみなさい!ここのボタンを押すと!ピカピカ光るらしいわよ!試してみて!」
微妙に生暖かい刀を持たせられる。
言われた通り、俺は刀の柄にボタンを押してみた。
刀身が、ピカピカと光り始める。
様々な色が同時に輝き、派手だった。
「ど、どうかしら!?これの元ネタを使った奴の!真似してたわよね!」
「そ、そんな事してたっけ?」
何だこれ。
おもちゃだろうか。
その割には物騒だ。
「え、違った、?か、変えるわ!間違って!ごめんなさい!!」
「ま、まあ全然。欲しかったかも」
俺の為のプレゼントだ。
家族とした誕生日パーティーを思い出す。
少し懐かしい。
しかし、何故これなのか。
摩訶不思議だ。
「なら良かったわ!!大空!DXコロスンジャー刀は実際に人も切れるの!!やってみて!」
「そ、そうなんだ。わ、分かった」
DXコロスンジャー刀を、振るってみる。
再生しかけていた人形の首が飛ぶ。
練習用の刀より、多少切れ味は劣る。
という程度だった。
果たして、これはおもちゃなのだろうか。
「本当にありがとう。これ、幾らぐらいだった?」
けれど断るのも失礼だし、貰うことにした。
故に、同程度の価値の物を俺もお返ししたい。
無償でプレゼントを貰うのは宜しくないし。
「••••さ、三十万••••••」
「さ、三、え、三十、、三十万!?それなら良いよ!気持ちだけでも全然嬉しいから!」
「気にしないで!受け取って欲しいの!大空に!」
三十万。
流石に、色々無理だ。
「本当に!本当に気持ちだけでありがたいから!」
「わ、分かった、、そんなに、気にするなら、、ちょっと手伝って欲しい、、わ、、」
「な、何を?」
—-
イリカと冒険者ギルドの裏へやって来た。
いつも通り、そこに師匠はいる。
「刀を買ったのか。大空。お前は中距離の攻撃法が足りてないしな。いんじゃね」
「これは貰い物で。これな関係して、師匠にも渡したいものがあるそうです」
「し、師匠、どうぞ。こ、これ今までのお礼です」
「••••突然どうしたんだ。本なんか渡して」
師匠はちょっと俯きながら、本を触る。
本を隅々までよく見ていた。
「私は、もう街を出る予定で、、今までのお礼です」
「••••••分かった。いや、まあ、返すぞ。弟子から施しを貰うほど落ちぶれちゃいないぞ、オレ。そもそも本はあんま読まないかんな。見た目通り」
「え!本屋や図書館で良く見るのに!?」
「••••ど、ドッペルゲンガーだ。気にすんな」
師匠は冷や汗をダラダラと掻き始める。
多分嘘だ。
ホワイトと観光した時も、図書館に居た。
違う。
本当の可能性もある。
師匠は朝昼夜いつ来てもここにいる。
なのに、イリカも図書館でちょくちょく見たらしい。
恐ろしい。
この世界って、怪異も居るのか。
初めて知った。
「え、、でも!受け取って!為になるらしいわ!」
「かなり時間をかけて選んだので、自分も受け取って欲しいです。中身も重厚感あって面白かったです」
「•••••••そうか、、分かったよ、、読まないかもしんねぇが••••貰っておく」
師匠は本を片手で持つ。
それは、近くの窪みに立てかけた。
「••••••ヨシ!切り替えるぞ!今から!修行始めんぞ!大空は刀でオレに切りかかってこい!オルキデも今日で完全に武術の真髄とやらを使いこなせるようにしろ!出る前に仕上げとくぞ!」
—-
修行が終わった。
夕食を食べる為、二人で帰路に着いている。
「あとは、ホワイトと、亜紀くんね、、亜紀くんは何を貰ったら嬉しいかしら、、。大空はどう思う?」
「お金じゃない?前に渡した時は喜んでいたし。」
「夢も希望もないわね••••••でも喜びそう、、」
イリカは世話になった人へ、色々プレゼントして回っているらしい。
これについての相談を、イリカは受けて欲しかったとの事。
「やっぱり、そっちはこの街から出て行くつもりなんだ」
「••••そうね、、攻撃にも武術の真髄が使えるようになって来て。色んなことも教えて貰えて。手伝ってくれた人のお陰もあって、欲しかった情報も聞けたから」
「そっか。いつ、ここを出る感じ」
「••••今日を入れて、三日後に出ようと思うわ」
「そんなに早く。残念」
俺はまだ全然、武術の真髄?が使えない。
出来れば、俺が出来るようになるまで同じ弟子でいて欲しかった。
武術の真髄は便利そうだし。
この程度だ。
別にどうでも良い。
まだイリカには情が芽生えていないと言う事だろう。
じゃあ、急ぎでやろう。
お礼も責任も取りがてら。
反省も生かして。
「ほんと!?大空も残念!?だったらその刀を私だと思ってというか!ずっと大事にして欲しいわ!もう二度と会わないかもしれないから!ずっと!」
「一応、その予定かな。プレゼントだし」
「やった!本当にありがとう!!私も大空と離れるのは残念よ!だから!この思い出!死んでも!大事にするわね!!」
「そ、そっか」