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12時限目 少年、過去を話す ②

父 オルトの約束を守ってどれほどの時間が過ぎたのだろう


アレティアとずっと倉庫の隠れ部屋にこもっている


どうして誰も来てくれないの?

誰か、助けてよ…


そう思ったとき

隠れ部屋の扉がゆっくりと開いていく


瞬時に眩しい光に照らされる


しばらくして、彼を見つめる人影がゆっくりと、確実に見えてくる


その顔は、エルトにとってはなじみのある顔だった


「ガルト…おじさん…?」

「エルト、アレティア…、無事だったか…」


扉を開けた男、ガルト=エレントはオルトの弟、つまりエルトの叔父にあたり、村長の婿養子でもある


「おい、生存者がいたぞ!」

ガルトは周囲にいた男たちを呼び寄せた


男たちは、この村を出ていった者、正確には出稼ぎのために出ていった者たちだ


「アレティア…」

エルトは幼馴染の体を揺する


「んん…、エルト…?」

「起きて、ガルトおじさんが…」


エルトはガルトの顔を見るが

その顔は、明るい表情をしていなかった


「エルト…、ずっとアレティアとここにいたのか?」

「うん…、父さんが来るまで絶対にここを動くなって言われたから…」

「そうか、偉いな…」


ガルトはエルトの頭を優しく撫でる


「ねえ、おじさん。父さんは?母さんは?」

「……」

「ねえ、どこにいるの?」

「……」

ガルトは無言のままだった


どうして黙ってるの?

何で返事してくれないの?


「エルト、こっちだ…」

ようやく口を開くが、その口調は暗かった


ゆっくりとした足取りで、倉庫の外に出る


エルトとアレティアは絶望の目をした


跡形もなく焼け崩れた村の家々

惨殺された村人たち


「ウッ…、オウエエエエエエェエエエェ…」


エルトはその光景を見て戻した

5歳には強烈すぎた

アレティアは、膝から崩れ落ち、その場を動かなかった


「大丈夫か…?」

ガルトはそっと声を掛けるが、エルトは首を横に振る


これ以上、エルトを辛い目に遭わせたくない

でも、両親を探している

事実を伝えなければ


「エルト、俺がおんぶしてやるから…」

ガルトは彼の元でしゃがむ


エルトは戻した口を袖で拭き

ガルトにしがみつく


おんぶしてもらいながら歩く

エルトはまた戻しそうになるが、叔父に吐瀉物を撒くわけにはいかない

何とか堪える


「ここだ…」

ガルトはとある場所に着きエルトを下ろす


彼の目に映ったのは、数か所を剣で刺されて顔から涙を流しながら息絶えている母 リンゼと父 オルトの亡骸


エルトは体を震わせながら近づく

「父…さ…、母…さん…」


母の頬に触れるがとても冷たい

「母さん…、起きてよ…」

しかし、返事はない


「父さんも…」

同じだった


「何で…目を覚ましてくれないんだよ…?ねえ、起きてって!」

その声は次第に荒げていく


「起きてって…、起きて…、う…、うあああああぁあああああああぁ!!」

ついに我慢していた堰が崩れた


その様子を見ていたアレティア、ガルトは涙を流す


「僕を置いていかないでよ!ねえ!」


泣きながらさらに声を荒げる


しかし、叫んだところで魂は戻ってこない


「エルト、もう…、もういい…」


ガルトはエルトを一度引き離す

「どうして?どうして、父さんと母さんは死んだの?おじさん、教えてよ!!」


エルトは大粒の涙を流しながらガルトの体をポンポンと叩く


「俺だって、知りたいよ…何で兄さんと義姉さんが殺されたんだって。悔しいよ…、本当に…、悔しい…」


一方、アレティアは


「父さまと母さまは…?」

エルトと同じ疑問を投げる


一人の村人が

「アレティアちゃん…、君の両親も…、エルト君と…同じなんだ…」

「…え?」


同じ

それはつまり…


「君のご両親は向こうだ…」


アレティアは他の人たちに案内され

そこで目にしたのは


エルトの両親と似たように殺されたアレティアの両親


「父さま…?母さま…?」

アレティアはまた膝から崩れ落ちる


「何で…?何で、父さまと母さまは…返事…してくれないの…?」


両目から大粒の涙を流すアレティア


「ねえ、何で…なの…?誰か…、教えてよ…」


誰も答えない

いや、()()()()()()()()()()()()()ために誰も…


彼らの両親や親戚、さらには村長とその妻も惨殺されていた


「許せない…」

「俺らで、村の敵を討つ!」


その後、数百の遺体は村の象徴である巨大なクスノキの近くに埋葬された


そして

アレティアは、村長の親戚に引き取られ、エルトとしばらく会う事は無かった


エルトは、叔父 ガルトの家に身を寄せた



だが、その生活も長くは続かず


身を寄せてから2か月ほど過ぎたある日


エルトが薪割りから帰ってきたが

そこで目にしたのは


無残に体を引き裂かれて内臓がもろに出て死んでいるガルトとその妻 レンディの姿

周囲にはわずかながら獣の匂いもする


エルトはすぐに悟った


引き取ってくれた叔父たちは魔物に襲われたんだと


「どうして…僕だけ…?」


薪をその場に落とし、自分も崩れ落ち、激しく戻した


この時点で、エルトはたった5歳で天涯孤独の身となってしまった


あまりにもひどすぎる運命

エルトは当然その運命を受け入れることは出来なかった


「もう…嫌だ……」


エルトは机に置いてあった包丁を持ち

自分の首の近くにまで持ってくる


しかし、全身が震える


「独りぼっちだなんて、嫌だ…。父さんと…母さんと…一緒に…いたい…」


口では覚悟できているのに、体が思う通りに動いてくれない


エルトは、包丁を落とす


「ハ…、ハハ…、僕には…こんなの…無理だ…」


泣きながら、重い足取りで何も持たずに叔父の家を出る


ひたすら森の中を歩いていく


   ・

   ・

   ・


やがて、周りは真っ暗になり

自分が何処にいるのかも分からない


ショックが強すぎるせいか、食べる気も起らない


エルトは、歩くのをやめ

その場で倒れ込む


「このまま…、死んだら…父さんと母さんに…会える…かな…」



ガサッ


   ・

   ・

   ・

ガサッ…ガサッ…



()()がエルトに近づいてくる


やがて、その音はなくなり


「子供…?こんな真っ暗な森で…、どこに迷い込んだ子じゃ?」

女性の声


その女性は光で周囲を明るくする


「誰…?」

かすかに発したエルトの声

「おお、生きておるか。安心せい、妾がお主を助けてやるからな」


これがエルトと賢者 オレイアスの最初の出会いだった

どうも、茂美坂 時治です

随時更新します

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