その根深きもの
「まさか、ここまでつまはじきに遭っているとは……」
トラウルは手にしていた一通の手紙を、机の上に投げ置いた。
その手紙は長い日を待ち続けてようやく手元に届いた、アイル王国のセレッソ国王からの返事だった。
封筒にはそれを証明するかのようにつけられた、アイル王国の紋章の封蝋。大国とあって、その封蝋は、一つの芸術品のように重厚なものだった。
密かに送っていた親書の返事が、半年もかかってようやく手元に届くとはと、この返信を手にした時、手紙の差出人であるトラウルは苦く笑った。
もちろん、その内容はニルヴァがサンダンス王国に滞在する旨の了承を得るものだ。
ニルヴァの所在を心配しているだろうとの思いから、迷った末、書簡を出した。ラドラスのことは伏せ、ニルヴァをアイル王国の第四王女として迎え入れ、そして来賓として大切にもてなしているとの旨、まずは書いた。
「その返事が……これ、とはな」
『ニルヴァを当分の間、預かってほしい』
届いた返信の内容に、トラウルは唸るしかなかった。
「なんとも、このように堂々と。押しつけられてしまったな」
ニルヴァがアイル王国の王室にて、つまはじきにされていることは噂も相まってトラウルの知るところではあった。
それは、サンダンスも同じ境遇、赤毛の髪の王子を抱えていることに共通する苦悩からでもあり、そのことには特に心を寄せていたからだ。
「ニルヴァニア王女の帰還の際には、警護をつける旨を最後に付け加えただけだというのに……」
思わぬ返信に、アイル王室の悩みの根深さを知ったような気がした。
「ニルヴァを呼んでくれ」
トラウルが声を上げた。
控えていた執事が、すぐに動く。
どうしたものかと思うも、考えはすぐに固まった。




