エデンの国で! ヴルガー!
「よーし! じゃあ、いっちょやってやるか!」
「ほ、ずいぶんとやる気なようじゃの。はたして無事に狩ることができるかのぉ」
「任せとけよ、これでも、体は鍛えてるほうなんだ」
実際、剣術の稽古をやめてからも、トレーニングだけは毎日欠かさずやってきた。単に引きこもり生活が暇だったのと、それまでの習慣によるところが大きいけど。
「ふーむ。エバ、ムサシをよろしく頼むぞ」
「私は……」
「これは命令ではなくお願いじゃ」
「そういうことでしたら、任せてください」
このじーさん、エバの扱いを把握し始めたな。
「というか、メーロンは来ないのか?」
「ワシはもう少し、ここにいることにするよ。この国を、眺めたいんじゃ」
「そっか。わかった」
それが、悲しみに浸るためなのか、これからの自分を高ぶらせるためなのか。それは俺にはわからないし、聞くのは野暮ってやつだな。
「いこう、エバ」
「承知しました」
俺たちは、荒れた大地を進んでいった。しばらく歩いてみてわかったが、この土地は場所によっては有毒な液体が流れだしているようだ。
エバが言うには、町が焼かれる際に、水路に人が密集したまま死んでしまったため、腐敗した肉と肉に宿る魔王竜の魔力が水に溶けて有害な液体を作り出しているそうだ。
ぺるおきしらじかる? だとかの反応によって、油が変化してしまうらしい。それが魔力によって、より有害な物質へと変化しているのだそうだ。正直、話の内容は、よくわからなかったが、この黄色い液体は触れちゃいけないものだということはよくわかった。
まぁ進んでこんなものに触れようとは思わないけどな。それよりも、ここで多くの人が死んだ事を再認識させられて、気分が落ち込んだほうが痛い。
これからまさに、命を奪わなければならないのに、こんな気分でうまくやれるだろうか?
「ムサシ、顔色が悪いですよ? 大丈夫ですか?」
「そりゃーあんな話をされたら気分もわるくなるっての!」
エバの淡々とした語り方がより一層、その時のイメージを増長させたのは言うまでもない。まぁ、彼女に悪気はないのだから仕方ないけど。
そう思って、再び歩き始めようとしたその時、エバに強引に引っ張られ、そのまま倒れこんでしまった。
「うおぁ!? なんだよ!?」
「し、静かにしてください」
エバは、自分の胸に俺の顔を押しつけるようにして抱きしめていた。
顔に当たる柔らかさと、ミントのような爽やかな香りがして、頭がくらくらする。
く! なんてこった……想像以上の柔らかさだ! この国の技術者は天才なのか!?
ふと、エバの顔を見ると、何かを警戒しているようだ。目を細めて、盛り上がった土の影から前方を睨み付けている。
そのまま上を見るようにして、エバの視線の先を確認すると。
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