第4話「あれ?このロリ魔法使い闇抱えてそうじゃない?」
「それってどういうことだ?」
アリスが言っていることを言葉通りにとるならば、上級魔法を使う者が元々はいたということになる。
しかし、分からないのが現時点では世界に一人もいないということだ。
アリスに分からないところを質問すると、こう返ってきた。
「そう。上級魔法を使える人は過去に存在したのよ。ただし、全員死んでしまったの。『力に呑み込まれて』ね」
「力に呑み込まれる?」
「あなたはスキルの熟練度の話を聞いてどう思った?」
急に話が変わったのに驚きつつも答える。
「え、えーと。大変そうだなぁ、とか今はそれどころじゃないなぁ、とか?」
「まあ、たしかにあなたは今それどころでは無いわよね……。普通、スキルの話が分かると人々は『力』を求めるのよ。そりゃそうよね。誰でも強くなりたいと思ってる。私でさえそうなんだから……」
その含んだような口調を聞き、アリスの横顔を伺ってみたが、辺りの暗さで表情を見ることができなかった。
なんとなく気まずい空気の中、黙々と森の小道を進んでいく俺とアリス。
どこに向かっているんだろうか?
そう思い、アリスに訪ねようとしたその瞬間――。
カタカタカタカタカタ。
と硬いもの同士ががぶつかる音。しかし、どこか軽い感じの音が後ろのほうからした。
そして、恐る恐る振り返ってみるとそこには小さな物体――いや、アリス、その人が震えていた。
「おい、どうした!?」と、近寄ってみると「クライノ、ムリ。ホントニ、ムリ」と蚊の鳴くようなアリスの声が聞こえた。
………………。
……ええええええええええ?
嘘でしょ? さっき勇猛果敢に杖で殴りかかってたのに?
ボッコボコだったよ? ゴペル。最後のほう少しかわいそうになるくらいボッコボコだったよ? ゴペル。
「しょ、しょうがないでしょ! ゼペルと戦った時にランプを落としちゃったんだから!!」
涙目のアリス。
「いや、言ってくれれば、ランプをゼペルの家から持ってきたのに」
「バカ! 格好よく……ゴニョゴョ」
滑り出しは威勢がよかったのに最後の方はモゴモゴと口ごもってしまう。
「え? なんて? 格好よく助けた手前恥ずかしい?」
「聞こえてんじゃないの!」
「わ、分かった! とりあえず杖はしまおうか!! ウン」
くぅ、と悔しそうに杖を向けるのをやめるアリス。
あ、危ねぇええええ! もう少しでゼペルの二の舞になるところだった。撲殺されるところだった!
身の無事を噛み締めながら、ゼペルの家へと走って向かい、身の安全を確保する俺なのであった。