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記憶消失の俺が英雄になるまで  作者: 秋桜ノ樹
第3章 転生 幼少期編
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第31話「転生」

新章突入です。

キラーアントの女王(?)に殺されたヤマダは別の人生を歩むことになったのです。


本来の目的を忘れたままに...

 



 そこには温もりがあった。



 俺はここが世界一安心できる場所だと言われてもなんら不思議には思わないだろう。



 そればかりか、ここが世界一安心できる場所なんだぞ、と声を大にして周囲に知らしめるだろう。



 しかし、俺にはそれをするための(すべ)がなかった。



 声を出そうとしても、呼吸をすることはできずに、満足に手足を動かすこともできない。



 できないだらけのこの空間ではあるが、この安心感。



 無理やりに手足を動かそうとすると、全身に少し揺れが起きて、次の瞬間にはやさしい気持ちが包み込む。






 俺はそのやさしいかごの中で3か月ほどを過ごしたことだろう。



 正確な時間は分からない。しかし、時間の経過とともに自らの身体が急成長を遂げて、窮屈になってきた。



 いくら安心できる場所だといっても、窮屈には敵わない。




 急に振動が襲ったかと思うと俺はそこから外に出された。


「-------」


「--」


「---------------」


「----」


「------」




 いや、なんか話してるけど全くわかんねえ。

 辺りが眩しい。目があけられない。




 俺が反応しないのを心配したのか、誰かの手が俺の背中を叩く。



 痛い痛い痛い。喉になんも詰まってねえよ!呼吸もできてるよ。

 だからやめろ!それ以上叩くな!だから。

「おんぎゃあ!(痛てぇよ!)」



 俺の反撃の嚆矢こうしだと言わんとするばかりにヤツの顔面に砲台をロックオン

 心の中の声で撃てーッと発声をして射撃!




「----」


「------------」


「---」


 どうやら奇襲は成功したようだが、なにやら周囲が慌ただしい。

 フンッ、いい気味だ。








 そこから3年間。俺は大きな屋敷での生活を過ごした。

 どうやら、俺の親たる人物ルシオ・パラディンは貴族であるらしく、その権力は絶大なものらしい。

 グレーの毛髪を後ろで束ね、凛とした顔つきでスタイルも非常に良い。俗にいうイケメンというヤツだ。

 俺の将来が楽しみだね。

 そんな憧れの父親に構ってもらいたく、俺はよく父親の書斎へ訪れた。


 そこで、剽軽な格好をした肥えた貴族が父親に頭を下げるのを俺は覚えている。

 パラディン家は代々、王都の護衛を任されている一族であるらしく、ルシオ自身も現在の王の近衛兵団長の役職に就任している。

 つまり、名実ともに俺の父親は偉いのだ。

 鼻が高いね。




 母親の名はセレスナ。ブロンドの髪を背中まで伸ばし前髪を真紅の簪で止めて非常に雅な雰囲気を漂わせている。

 昔は冒険者をやっていたらしく、回復魔法スキルに関しては世界で五本の指に入るほどの名医だそうな。

 セレスナは王国の医務局長としての地位を持っており、その回復魔法のすさまじさから「聖女」とも呼ばれている。




 そんなこんなでこんな優秀な家に生まれることのできた俺はもうホント幸運だよね。

 それに俺には記憶がある。




 前世の記憶ーーーーとでも、言うのだろうか。



 そういえばあいつらはどうなったッ?



 ・・・・・・あいつら?



 ・・・・・・あいつらって?




 わからない。



 たしか女王アリに殺されて死んだところまでは覚えている。

 だが、それ以外のことは覚えていない。



 生まれる前、生まれた直後には鮮明に覚えていた、一つ前の出来事を俺はもう思い出せなくなていた。



 ただ、俺はもう前世という概念を捨てて



 両親に付けてもらった名前がある。





「アル坊ちゃま、晩餐のお時間です」




 ーーアルトゥス・パラディン、これが俺の名前だ。



 メイドのフランが俺を呼びに来た。



「フラン。本日のメニューはなんですか?」



「坊ちゃまの大好きな青野菜のソテーと領地の小麦で作ったパンでございます」


 ちなみに俺は野菜が一番嫌いだ。

 フランとはこういうヤツなのである。

 俺が嫌だということをすすんでやろうとしやがる、とても嫌な奴だ。

 雇い主のご子息に対してふつうこんな仕打ちするかね……まったく。

 でもそのおかげで、救われたことは何度でもある。

 そんなフランが俺は大好きだ。



「野菜は必要ないです」



「あらあら、奥様に言いつけませんと……」



「やめて、母様だけには言わないで」



「どうしましょうかねえ。ンフフフ……」



「ま、魔法を教えるから!」



「それで手を打ちましょう!」



 何故だかわからないが、俺は生まれつき魔法の才能があるらしい。

 以前、母親の回復魔法スキルを見せてもらったときに見様見真似でやってみたらなんなく成功してしまった。

 周囲は俺のことを天才だと持てはやしたが、俺からしてみればなんでこんなに簡単なことができないのだろうと、疑問に思うばかりであった。




 そんな俺の才能をいち早く見抜いたのがこのメイド、フランである。

 彼女は俺の乳母の役割をしておりとても胸が大きく張りがある。イイネ。

 そんな彼女と接する内に俺の能力が3歳児のそれとは違うことが見抜かれたようだ。



「奥様!奥様!大変です!」



「どうしたのフラン!アルに何かあったの!?」



「奥様...! アルトゥス坊っちゃまは天才かもしれません...!」



「当然ね!」



 俺の才能を見抜いたフランもすごいと言えるが、自信満々に我が息子を天才だと確信しきっている母親もなかなかのものだろう。




 そんなこんなで、魔法の才能があるのを見抜かれた俺はフランに魔法を教えているのだった。

モチベの続く限り頑張ります。

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