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記憶消失の俺が英雄になるまで  作者: 秋桜ノ樹
第2章「記憶をなくした少年と一千年の巫女」
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第24話「効率厨ですが、何か?」

 

 その後も、俺たちは熟練度あげのためにキラーアントを狩りまくった。



 アンテロの街付近である程度の熟練度が溜まり、尚且(なおか)つ数がいるから効率がいいのだ。

 そう、効率が。



「す、少し休憩しようぜ?」

 俺は息を切らせながらアリスに提案した。ゼェゼェハァハァの虫の息である。



「もう、だらしないわね」



「何時間やってると思ってんの? ねぇ?」



 かれこれ7時間ぶっ通しである。もうね。心身共に限界です。

 それでね。お願いします。アリスさん。隅でゼェゼェハァハァやってる時に、キラーアントの群れの前に、蹴り飛ばすのはやめてください。これ以上やったら倒れます。



曰く「だって一緒にレベル上がりたいじゃない」だそうですが、ンなことよりも大事なものがあるでしょ? 命とかいのちとかイノチとか……。


 まあ、なんだかんだ言いつつも、後衛からフォローしてくれるのは嫌いじゃないですね。自分。なので、ただ新しく覚えた魔法(光擊)をぶっぱなしたくて仕方がないとでも言いたげな表情は見ないことにしてあげますよ。うん。ボククウキヨメル。




「わかったわよ。不本意ではあるけど休憩とりましょう」



「お腹も空いたしな。一旦街に戻って食事でもするか」



 よく考えたら朝ご飯も食べていない。

 お腹に手を当てると、キュルルと虚しい音が聞こえてきた。




 昼食を食べる前に一度、ギルドに寄って換金を済ませると、そこそこの額になった。


 一週間は宿に泊まれる位の金額だ。


 ランクが低くても効率と速さ次第でこんなにも稼げるんだと少し感心した。それと同時に自分の成長がお金という形で目に見えて分かり、気分が高揚(こうよう)していた。



 そして、慢心して油断している俺の心の隙に付け入るように事件が起きた。



 俺たちは街の中心部にある、市場へと向かった。今日の市場、バックス商店街はかなりの人で賑わっており、それを掻き分けるようにその人混みの中を進んでいった。


「こんなに混んでたことあったか? 今まで」


「私の記憶にはないわね……きゃっ」


「……お前、背が低いからすごい頻度で人とぶつかってるな……」


「…………我慢ならないわ! ここで光撃(ラン・ホーリーズム)ぶっぱなそうかしら」

 非常にご立腹であらせられる。


「頼むからやめてくれ。非常にめんどくさいことになりそうだ」


 近くの衛兵をチラとみて、アリスを(たしな)める。まあ、衛兵居なくてもやっちゃいけないんだけどな。


 でも、このままいくとアリスが危ないのは確かだ。

 手を繋いで転けないようにしてやるか?

 …………うん。危ないのは良くないしな。うん。仲間だもんな。俺達。手を繋ぐぐらいわけなよな。うん。



 よーし……手を繋ぐぞ――――。



 ドンッ! ビタン!!



「…………すまん、アリス。思い立つのが10秒遅かった」

 地面にへたり込んだアリスが、鼻の頭を真っ赤にして、目を潤ませている。


 それを避けるように人混みが川の流れのように通っていく。

「なんていうか……災難だな」

 プルプルと怒りに震えているアリス。



「絶対許さない! 光撃(ラン・ホーリーズム)よ! 光撃(ラン・ホーリーズム)!! はやく! 観察眼で誰がやったか特定しなさ――……」



「どうした? 急に黙って?」



「……ない」



「は?」


「杖がない!!!!!!」


 くるっとこっちを向くと、

「ヤマダァ〜。どうしよぅ〜〜」

 と、潤んだ目を上目遣いにして襟元を握りしめてきた。



「そ、そうだな。よく見てなかった俺も悪いし、とりあえず落ちてないか周りを探そうか」



 周囲の歩いた場所を見てまわったが、杖は見つからなかった。

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