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記憶消失の俺が英雄になるまで  作者: 秋桜ノ樹
第2章「記憶をなくした少年と一千年の巫女」
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第22話「実は俺って強いんじゃね?」

 

「--と、いう面白い本を読んだのよ!」

 と今日のアリス様は機嫌がすこぶる良い。




 これはアリスを観察して気付いたのだが、アリスは機嫌の良い日とそうでない日がある。

 俺はアリスに聞いて見た。



「アリス。お前ってもしかして女の子の日の周期早い?」



 結果として思いっきり殴られました。

 3日経った今でも腫れが引きません。




 アリス曰く、魔力循環の乱れだそうです。

 よくわかりません。

 その旨をアリスに言ったところ。



「アンタ、魔力認識もせずに魔法を使ったの!?」

 アリスは驚いている。




 スキルとは主に3つの系統に分けることができる。

 1つは体術型。

 体術型は使用者の身体能力によってその威力が変化する。

 杖撃術などが含まれる。


 2つ目は魔術型。

 魔術型は使用者の素質に大きく依存する。生まれた瞬間に決められた魔力の総量によって威力や使える魔法に限度がかかる。得意系統にもよる。

 アリスは光系統の魔術 光の加護ラン・エリトリア に得意系統を持つ。


 3つ目は特殊型。

 特殊型は上記以外のものを指す。ただ、基本的に戦闘用のスキルはなく、このスキルを持つものは数少ない。俺の観察眼と複写などが当てはまる。



 この世界の人口でスキルの所持割合でいうと

 体術型のみは50%

 魔術型のみは20%

 体術型と魔術型を持つのは3%

 特殊型の所持率は0.001%だそうだ。




 俺って超レアじゃん!



 ってか、アリスもなかなかレアじゃん!



 俺ら最強じゃん!



 って思っているとアリスに頭を殴られた。

 どうすんだよこれ以上アホになったらよぅ!



「アタシが言いたいのはそういうことじゃないのよ!」



「と、いうと?」



「基本、魔法スキルを使うには3つのプロセスが必要よ。まずは素質。これがないとどんなに使用者が望んだところで魔法は発動しないわね。生まれつきよ。そして2番目に自身の魔力を認識すること。自分自身がどの系統を得意とするのか。そして、自分の魔力の総量はいくらくらいなのかを見定めることよ。そして最後に呪文の詠唱。一字一句間違えずに詠唱する必要があるわ。これは鍛錬を積むことで詠唱の省略、つまり無詠唱ノータイムでの発動が可能になるわ」




 ほぇ〜。と、アリス先生の授業を真面目に受ける俺。


「アンタはおかしいのよ!ヤマダ!」


「おいおい、ハニー!おかしいだなんて心外だぜ!」


「誰がハニーよ!!!」

 もう一発殴られた。痛い。






 そんな仲むつまじい夫婦ばりのやりとりを行なっていると、俺たちのところにギルドからの使者が来た。その使者の名前をリングという。アンテロの町で郵便稼業を行う商家の一人息子だ。

 リングはヒョロっとしていて、いかにも病弱そうな体型をしている。癖っ毛の強い黒髪を揺らしながら俺らの部屋に入って来た。


「やぁやぁヤマダ夫妻!ギルドからのお便りだよー!」


「誰がハニーよ!」

 アリスはリングの頭を殴ろうとするが、リングは華麗に回避して受け身を取らずにぶっ倒れる。


「ふふん!アリスの攻撃は当たらないよ!」


「アンタ、顔面から床に落ちた割に元気ね...」


 リングはアンテロの町で唯一アリスのパンチを避けることのできる強者だ。あの回避能力があるなら、冒険者になればいいのにと思うが、彼曰く

「俺の夢は!楽して暮らすこと!」

 と、豪語しており、郵便屋の一人息子として跡取りという立場からして、無理して危険を犯したくないといったスタンスだろう。



「んで?手紙は?」


「そうそう!!手紙!手紙!ギルドからだよ」

 顔面から鼻血を垂れ流しながら俺に手紙を渡す。


 赤い薔薇の付箋をされたその手紙を慎重に開けると中から通達文書と思わしき紙が出て来た。




  拝啓

  ヤマダ、アリス夫妻様へ



 俺は慌てて手紙を閉じた。そしてアリスの方を振り返り、呟く。

「見た?」


「えぇ。よぉーく、見させてもらったわ!」


「南無」俺は心の中で手を合わせた。





  北西部のテパード岩石地帯を調査せよ。


  ギルド長 ルシアン・バラード



 --は?これだけ?


「あちゃー、勅命ちょくめいクエストですねぇ」

 リングはにへらと笑いながらそう言った。


「なんだそれは」


「勅命クエストってのはアレですよ。その町のギルド長が直々に命令するクエスト。拒否不可能ってヤツです。もし、断ったらギルドから除名されるとかなんとか」



「なにその暴君。ヤマダは激怒した!」

 今すぐ短剣もってギルドに駆け込んでやろうかちょっと迷うくらいに暴君じゃん。ルシアン暴君じゃん。



「あははー、ギルド長はあれでもS級冒険者の資格も持ってますから立ち向かってもすぐ殺されてしまいますよ。でもまあ、調査依頼ですからおつかいみたいなもんじゃないですかね?」

 

「なるほど。まぁ、強制ってワケか。受けるしかないよなぁ」

 そういいながらアリスを見やる。

 アリスは素直に頷いた。

「受けるわよ。私は、強くならなきゃいけないの」


 なにやらアリスは強い意志をもっているらしいが、俺にはそんな大層なものはない。

 ただ、この少女を護れれば、それでいい。



 こうして俺たちはテパード岩石地帯にむかうことになった。


毎日午前9時更新

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