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記憶消失の俺が英雄になるまで  作者: 秋桜ノ樹
第一章「記憶をなくした少年とロリ魔法使い」
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第14話「離れだすココロ」

 

 ――翌朝、俺はまだ太陽が昇る前から目が覚めていた。


 昨日のことを思い出して寝ることができなかったのだ。

 結局、昨日はなんとなく宿に帰る気になれず、そのまま野宿で夜を明かした。

 野宿をした名残である焚火は、すでに消えており、それがあった場所には黒い消炭が少し残っていた。


 起き上がると辺りの空気は冷たく澄んでおり、その冷たさに身震いをした。



「森は冷えるわよ」



 アリスがこのクエストを受ける前に言っていたことを思い出す。

 草刈りなんて聞いて日帰りでいけるだろ、と高をくくった自分を呪いたい。

 俺も防寒具買えばよかった。

 といっても、買う金がないから思っていても買うことはなかったのだが。




 ふと、横を見てみるとアリスの姿がない。

 もしかして、不甲斐ない俺に愛想を尽かしてどこかへ行ってしまったのだろうか?

 心の中でなんとも言えない、複雑な感情が燻っているのを感じる。


 思えば、アリスと出会ってからアリスに頼りっぱなしな自分がいた。

 記憶が無いということもあったのだろうが、年下(多分)であろう彼女におんぶにだっこな現状に焦燥感を感じていたのだろう。


 それが昨日の失敗に繋がった。


 俺はアリスの信頼を裏切ったのだ。


 昨夜のアリスの優しい声色を思い出す。

 あの時はただただ優しさが辛かった。

 いっそのこと、罵倒してくれたならいつもの調子で返せた。

 しかし、彼女は申し訳なさそうな目で謝罪を口にするだけだった。

 記憶喪失で独りだった俺を救ってくれたのはアリスのともすれば分かりにくい、

 しかし、確かな優しさであったが、

 それと同時に俺を苦しませたのもアリスの真っ直ぐな優しさであった。




「……マダ! ヤマダ!」

 その声に顔をバッとあげた。



「あぁ……アリスか」



「あんた、大丈夫? 酷い顔よ? 」



「……元々こんな顔だよ。放っておいてくれ」

 なんとなく、心を見透かされたような気がして、突き放したような言い方になる。



「…………。し、知ってるわよ。確かにそんな顔だったわよね」

 一瞬たじろぐも、いつもの調子で続けるアリス。

 飼い犬に噛まれたかのような、傷ついた表情に俺は情けない気持ちになる。



 クソ!! なにやってんだよ。俺。

 自分が悪いくせになにも悪くないアリスに八つ当たりして!

 こんなんじゃ、彼女に受けた恩に報いることも――。



 少しギクシャクした雰囲気の中、

 再びアスラン平原へと向かうのであった。




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