第12話「修行パートってだいたいグダるよね」
「で? 修行って一体なにをするんだ?」
「クエストを受けるのよ」
「クエストってあれか? さっきのギルドで手続きしてたやつ」
「そうよ。今回は私が特別に、手続きしてあげたわ。感謝しなさいよね? ヤマダ」
翌日、宿を発った俺とアリスはクエスト場所へと向かっていた。
その、クエスト場所である、アスランは俺とアリスが昨日、泊まっていた場所から東に少しいった町外れにある。
「アスランか……。一体、どんなモンスターが待っているのか楽しみだぜ!!!!!」
ドヤ顔で言い放つ俺。
目の前に広がる目が痛い程の緑。
凹凸が一つもない真っ平らな草原。
そして、モンスターの1匹も居ない平和な景色。
……………………。
「これ。アリスさんや。モンスターが見当たらないんじゃが、これは一体どういうことかのぅ?」
「気持ち悪っ! ぷるぷる震えながら喋りかけて来ないで! というか! 別に、修行って言っただけで、モンスター狩るなんて一言も言ってないでしょ?」
「いやだってお前。クエスト行くって言ったからよ……とか言いつつ? 道、間違って今更言えなくなったとかぁ? 大丈夫。お兄さん怒らないから。言ってみ?」
「イラッとくるわね。その喋り方。大体、なんでアスランにくるくらいで道、間違うのよ。一本道じゃないの。ここまで」
そうなのだ。街からここまで徒歩30分と、少々長く歩くが一本道。
間違えようがない。
となると――。
「類は友を呼ぶか」
ほら、見てくれ。あの凹凸のない、綺麗な平原を。
嗚呼! なんて酷似しているんグァッハァ!!
「全部口から漏れてるわよ? ヤマダ?」
ニコニコ顔のアリス。
しかし、目は据わっており、今しがた俺の後頭部を打ち付けた杖からは、シュウシュウと煙が出ている。
…………一体どういう構造してるんだ、あの杖は。
というか、昨日も思ったけど、杖あるのに魔法使えないって、なんていうか、あべこべだな。剣を使えば普通にモンスターと渡り合えて、ランクももっと上がるはずなのに。
まあ、クエスト終わったあとにでも聞いてみるか。
「それで、だ。アリス。改めて聞くが、モンスターはどこなんだ?」
「モンスターモンスターうるさいわね。大体Gランクにモンスター討伐クエストなんてあるわけないじゃない」
「へ? そうなのか?」
「なにマヌケな声出してんのよ。そんなの常識じゃない」
頭おかしいんじゃないの? というような目で見てくる。
「いやいやいや、だって――」
「……だって? なによ」
「……いや、やっぱりなんでもない」
俺は驚いていた。
記憶の無い俺にも「常識」「固定概念」があることに。
「それより、どんなクエストするのかいい加減見せてくれ」
「ったく、なんか調子狂うわね。はい。これよ」
そう言って、渡された羊皮紙に目を通す。
クエスト
ランクG
アスラン草の除去
以上
「しょぼ過ぎるだろ!!!」
「あっ、ちょっと! 羊皮紙破らないようにしなさいよ! それ報告のときに必要なんだから」
まあ、モンスター討伐でないのは一旦置いておこう。
……でもな!? クエストが除草って! 冒険者のやることじゃないよね? ある意味冒険してるかもだけど!! そういう意味じゃねぇだろ冒険者!!!
「あ、くるわよ」
そんな荒れ狂った思考をアリスの淡々とした一言がかき消した。
目の前には緑の奔流が渦巻いていた。
そして、収まったかと思うと、今度は津波のようにこちらへ押し寄せてきた。
うん! モンスターとか討伐クエストとか調子こいたこと言ってすいませんでした!!!!