第10話「やっぱイキっていかないとな!いけないわけですよ」
俺とアリスが椅子に腰掛けるとゲハノコと名乗るスキンヘッドの冒険者は下卑た表情を顔に浮かべながら、口を開いた。
「おい! 新入り!! 」
改めて近くで聞くと、声でかいなこいつ。
俺は声のでかさに苦笑しながら、
「誰がキューピーじゃゴルァああ!?」
威勢良く噛み付いた。
「いや、キューピーじゃねえよ!ニューピーだよ!」
ゲハノコはまさかそんな返しがくるとは思ってはなかったのでしどろもどろした。
そんなゲハノコの声につられて複数人の冒険者たちが、何か面白そうなことをやっている、俺も混ぜろとでも言いたげに寄ってきた。
「キューピーでもニューピンでも、んなことどうだっていいんだよ!俺の名前はー」
「ゴミ」
「そうそう、俺の名前はゴミ!ってそうじゃねえだろ!アリス!」
そこはかっこよくヤマダっていうとこじゃない!?
ーーまぁ、ヤマダって名前はアレだけどさ。
「ほぅ、その嬢ちゃんはアリスって名前なのか。なかなか見られるツラしてるじゃねえか」
「な、なによ」
アリスがたじろぐとゲハノコは目線をアリスの絶壁に固定しながらこう言った。
「ほら、酌しろよ。その慎ましやかな膨らみを使ってなぁ!?」
コイツ……ロリコンか!
俺は一瞬、同志を見つけたかのような錯覚に陥ったが、すぐにその考えを改めた。
ロリコンとは!幼女を愛でる者であり、決して手は出さないのだ。
「ってっめぇえええ!アリスは俺のだ!」
ーーこれはアリスも俺に惚れますわぁ
そういって俺はゲハノコに飛びかかる。
ゲハノコはたいして構えることもなく、俺に向かって左手で拳を繰り出した。
俺はそれを華麗にかわs……
躱し切れずにモロに顔面にくらった。
ーーそうでした。俺は商人向きでした。
ーーー
血ダルマというよりは鼻からナイアガラの様に流血し続ける俺は相当無様だろう。
「私の所有物が壊れちゃったじゃない!早く新しいの買ってきなさいよっ!」
そんなアリスの容赦のない一言に俺の金魚すくいのポイよりも脆いハートは水に濡れる前から破れた。ってかそれもう不良品じゃん。そうか、俺は不良品。
などと、考えていると、
「お、おまえ……」
とゲハノコが悲しそうな目で俺を見つめてくる。
いや、お前マジでかわいそうだなみたいな目でみても許さないよ?
だって殴ったのお前じゃんコノハゲ!