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#342 史上最小の作戦


 ところ変わって、和風の一室の前に俺は居た。先の部屋は尋問用であり、あそこに詰め込んでおくと条約がどうのこうので問題だったらしく、谷山は彼女をこの畳の部屋に移していたのであった。

 警備付きの戸を引き、その中に入るとフィレナはぺたん座りで丸机に向き合っていた。その手にはマーカーがあり、紙の上に精巧な男性の顔が描かれていた。

 靴を脱ぎ、近づくもフィレナは全く気づいた様子がなかった。相当な集中力だ。


"Co tesyl lot skurla."

"Hett!? Mer...... Co's es ja...... Shrlo co's jusnuko'i celes niv!"


 ビクッと反応したフィレナは即座にこちらに振り返る。


"Harmae si es?"


 そう訊いた瞬間、彼女の顔は少し陰りを帯びた。


"Ar, fqa es mi'd viojeffe."

"Viojeffe at es xelken ja?"

"Ja, pa xolil io si veles retovo fentexoler'st."

"Jopp....."


 "xol" といえば、ターフ・ヴィール・イェスカらがやっていた戦争のことだった。対抗勢力であるフェンテショレーに殺されたということは、シェルケンはイェスカ側だったのだろうか?

 フィレナは昔を思い懐かしむようにマーカーで描かれた兄の頬にそっと触れる。


"Edixu si's at es nertni'ar gelx cene niv elm el fentexoler. Pa, Cene niv mi's la lex'i jat cun si's es set anka ad anfi'ejten."


 なるほど、と首肯する。

 ネートニアーであった兄がケートニアーのフェンテショレー軍の手によって殺された。それでフィレナはケートニアーでないことにコンプレックスを拗らせて、ネートニアーでも見返してやると奮起してシェルケン兵に入ったということらしい。


"Fal cirla, xalija'd josnusn at veles retovo fentexoler'st."


 顎を擦りながら、そういえばと思い出したことを口にする。フィレナはそれを訊いて、首を傾げた。


"Ni's es xelken?"

"Niv, edixu ci es farfelen sietiver. Pa, josnusn veles retovo mal sietiv tydiestonj retla'ct zu jeska letix anfi'e."

"Mal, ci's es jeska tisodeler ja?"


 胡乱そうに蒼い目を細めて訊く。その声色には不信の感情が籠もっていた。

 というか "tisodeler" って、やっぱりイェスカらは宗教家というより政治家に近かったのだろうか。

 ともかく、そういうんじゃないと俺は首を振った。


"Ci es farfelen mian filx veleso retovo josnusn."

"Ja......"


 不信の感情が解けたのか、元のアンニュイな表情に戻っていく。彼女はまた兄の頬を指でなぞった。


"Ci's es xale mi."


 俺は無言で頷く。そして、しばらくは彼女の時間を尊重してやった。時間がないというのは分かっているが、死者とのあわいを邪魔したくは無かった。

 ややあって、俺に向き直ったフィレナにタイムリミットがあることを説明した。そして、俺の目的はシェルケンを死滅させることではないとはっきりと言った上で、目指すべき方策――シャリヤを奪還し、シェルケンをこの世界から撤退させること――を検討し始めた。


"Jol cene misse's xalija'i celdin pelx deliu harmie'i es fua xelken tydiesto eski fqa?"

"Coss kantet niv retovo lartass ol laoziavo icco ja."

"Cecala'd lartasse'st penul lineparine'it lkurfo'i celes. La lexe's es kanteterl."

"Zu, Niss reto larta pelx cene niv celes lkurfo. La lex es vynut ja."

"Mi fiur!"


 そういってフィレナはいきなり立ち上がった。黒いマントの中に穿いていた短いスカートが目の前で振れて、ふわりと甘い香りが舞った。

 突然のことに戸惑うが、なにか思いついたようで俺を指差す。


"Is co's genalferl!"

"Genalferlesti?"


 聞き慣れない単語が飛び出してきたことで状況は良く分からないものになった。 "genalferl" ……、反対を意味する "gen-" と捕まえるを意味する "alf" と対象を意味して動詞から名詞を派生する "-erl" による派生語だろうか?

 そうなると直訳では「解放された者」という意味になるが、それでも俺は彼女の意図を理解できずに居た。


"Jexi'ert, Liaxi mi's aziurg'i plasi!"


 そういって、フィレナはたどたどしいリパライン語で驚きの作戦を提案してきたのであった。

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Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
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