#304 私はここで待ってるから
呼吸が落ち着いてくると、彼女はその青い目をこちらに向けた。彼女は瞬きもせずに驚きの表情でこちらを見つめていた。
"Cenesti?"
彼女の唇が揺れ動き、囁くような声が聞こえた。自分の名前をさも知っているかのように呼んでくれた。それが聞こえた途端に込み上げてくるものがあった。
俺は抱いている手を震わせながら、彼女の瞳を見つめた。
"Xalijasti, co nitek mi?"
"Co'd ferlk es jazgasaki.cen. Cene niv mi gennitek."
そう囁いたシャリヤは自分が置かれている状況に困惑していた。今までの記憶は無いのだろうか? いや、あろうがなかろうが困惑はしていたかもしれない。
レフィは腰に手を当てて、こちらを見ていた。見上げた彼女の顔は疑問と不満の入り混じったような表情になっていた。こちらに歩みを寄せながら、彼女はシャリヤに人差し指を向ける。
"Harmie co lkurf xale penul rattel? Edixa co fanken si ja."
"Lefhisti, lern ekcej fal fqa plax."
"Xatvasti! Harmie co lkurf――"
レフィが憤りを隠さずに反論しようとした瞬間、がさっと茂みの方から音がする。三人の視線が音の出どころを探っていた。
"Ers snyror."
先ほど倒したはずの男子生徒がそこには立っていた。レフィは驚いた様相で彼の鼻っ面を指差す。
"Edixa miss tysnen co!"
"Cene niv 1te elme'd larta corln veles tysneno xale belarxtestan ja?"
"kantenerfe iulosti!"
レフィは再度ウェールフープ発動のために構えの姿勢を取る。男子生徒は全く動かなかった。
"Mi tisod niv elmo."
"Miss letix snalu fon elmo."
レフィの背後から、答えると彼は俺をじっと睨みつけた。
"Firlex, pa mi vxorlnajteserl es niv co."
"......"
"Lexerl.fhinerijusti, mi vxorlnajtes co."
"Harmie?"
シャリヤのペアであった男子生徒はそう言いながら、レフィに一歩づつ近づいてきた。いつ攻撃されてもおかしくはない。レフィの電撃なら命中することは避けられないだろう。しかし、レフィは動かなかった。実際に見なくても、その態度だけで能力の高さが理解できる。
彼はレフィの桃色のツインテールを持ち上げる。そこでやっと、思い出した。こいつはペアをとっかえひっかえ変え続けていることを。
"Is mi'd virlarteust."
"Hah, mi'd virlarteust es xatva zu jazgasaki.cen lap! Ja, xatvasti?"
レフィの信頼に満ちた言葉に俺はすぐには答えられなかった。自分は何故戦ってきたのだろうか。レフィは何のために自分とここまで来たのだろうか。答えは彼女の望まないものになる。だが。
"Shrlo wioll anfi'erlen si'tj fasta no, lefhisti."
"A...... harmie co lkurf fal no?"
"Mi furnkie virlarteust. Cene co is virlarteust si'tj."
"Harmie!?"
レフィの声は絶叫しているかのようだった。反感を買うような言い方であったのは否定できない。だが、言っている方も心が締め付けられるというものだ。
"Mi ad co es niv vi'art fal anfi'e. Cene niv no at io mi es werlfurpu'd elmo."
"Pa, pa......! selene mi xatva'tj......!"
俺はレフィに手をかざした。それはウェールフープでの戦闘の意思を表す行為だった。
彼女は目を見開いて、驚く。
"Xatvasti......!"
"lern mi ler, lefhisti. Co text co'd tydiestal vynutj lej."
"Harmie......"
レフィは消え入るような声でそう言うとどこかへ走り去ってしまった。同時に男子生徒のほうはニヤニヤした顔で別の方向に歩き出し、消え失せる。
残ったのは俺と抱きかかえるシャリヤだけだ。喪失感を味わっていると彼女は"Cenesti."と呼びかけてきた。複雑な表情がこちらに向いていた。
"Co tisod eso la lexe's les vynut esel e'it?"
"...... Ja."
"...... Cene niv mi tisod dalle co."
"......"
"Cenesti, deliu co fynet lkurf."
"Pa, xalijasti――"
"Mi mili co el klieil."
シャリヤの声色は本気だった。彼女の蒼色の瞳がじっとこちらを見つめていた。




