#288 なんでこうなるんですか!?
"Mal, Xalija'd virlarteust es xale harmie?"
"Ers xale harmie......"
レフィは首を傾げて答えに困っていた。確かに曖昧な質問だったのかもしれない。
場所は変わって、二人は学園の図書館に居た。大聖堂のような建物の中に至るところに本が置かれている。手が届かないような高さにまで本があり、そういった本はウェールフープが使える図書館員が出し入れしているようだった。
この話がシャリヤたちに聞かれれば、一体どうなるのかと危機感を感じるくらいには彼女は人気者になっていた。食堂から移動した理由はそれだ。狂乱化した群衆の恐ろしさはレトラで味わっている。もう十分だろう。
レフィは人差し指を頬に付けて、話の切り出し口を探しているようだった。
"Lirs, edixa mi senost ny la lex mels si. Zu, si ysev larta ly."
"Harmie la lex es?"
"Ar, edixa mi niv lkurf iulo zu en si'st larta'it enal yseverle'ct. La lex kantet movieso nilirser."
レフィは桃色のツインテールを左右に揺らしながら、そういった。ささやかな陽光がガラス窓を通して差し込んでいる。彼女の鮮やかな蒼色の瞳がゆっくりと思い出すように動いた。
"Edioll niliser veles ysevo si'st fal alsil. Mer, Niv ers sejied xale la lex felx cene niv derok mels paskeffesnejen werlfurpen xymizir."
"Zu, Fi miss molkka si, si lern xalija ler ja?"
"......"
レフィはすぐには答えてくれなかった。窓の外に一瞬目をやったと思ったら、今度は近くの本棚に視線を向ける。ため息を挟んで、気味の悪い静寂がしばらく続いた。
しばらくしてから、レフィはやっとこちらを向いてくれた。
"Mer, fi co nilirs fhasfa, mi ysev niv co ja, xatvasti. Elenorfen niv ja!"
"La lex es vynut......"
バツの悪い雰囲気になったところで窓の外が暗くなってきた。雨が振りそうだと思った矢先に雨音が聞こえてくる。レフィは立ち上がって、空の様子を確認していた。
"Rielied mol ja."
"Mi letix niv fenterieliedel."
レフィは首を傾げて不思議そうな顔をしていた。
「傘」という単語が分からなかったから、"fente-rielied-el"で「雨具」を表したが通じなかったのだろうか。
"Cene co werlfurpes felx fenxis letix fenterieliedel."
"Zu, Cene mi lus werlfurp fua fenterieliedel?"
"Ja, jexi'ert!"
レフィはそういって俺の手を引いて、図書館の出口に向けて走り出した。他の生徒が騒々しい二人に忌々しげな視線を向けるのをよそに彼女は楽しげに出口まで走り出した。
"Lecu miss festel ciant'i rieliede'c!"
"Harmie es ≪festel≫?"
訊かれたレフィは答えずに片手を胸に合わせながら、雨が降る方へと歩き出した。そのままでは濡れてしまうと声をかけようとした瞬間、彼女は囁いた。
"Caflek."
言葉に反応して、雨はレフィの周りを避けるように歪曲して流れてゆく。レフィの周りに透明のドームが形成されたように見える。彼女は全く雨に濡れていなかった。
ニコッと微笑んで、こちらに振り返る。どうやら、詠唱を実践しろとのことらしい。
"Cene mi es xale la lex?"
"Ja, ciant'i lkurf xale mi mal cierjustel zifoscur co'd karxerle'c."
"Hmm......"
言葉が分からなくてはコツを教えてくれても良く分からないというものだ。いずれにせよ、ここで暮らしていくならウェールフープは必須だ。良くみると雨の中を歩く生徒は一人として傘を差している者が居ない。基礎的な技術なのだろう。
"Caflek!"
レフィの期待の視線の中、彼女と同じ言葉を呟いて雨の中へと踏み出す。その一歩を踏み切った瞬間、雨はバケツを引っくり返したかのような豪雨と化した。
"Harmie la lex is fqa!? Aj aj aj......!"
レフィの上に張られていたはずの透明のドームから染み出すように雨が貫通してゆく。ずぶ濡れになった俺は至極アンニュイな顔で彼女がわたわたしている様子を眺めていた。
"Xatvasti, lecu dosnud fgir'l!"
"Harmie es――"
"Klie jetesonj!"
質問を遮られ、腕を引っ張られながら俺達は図書館の出入り口の方へと戻るのであった。




