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#276 まあ、多くの記憶喪失は短期間で治るっていいますし


"Harmie!? Co gennitek mi'd ferlk!?"

"J, ja......"


 桃色髪の女の子はショックを受けたようでうなだれていた。かと思えば、今度は俺の肩を掴んできた。目は完全に><という感じだ。


"Mi es lexerl.fhineriju! Ers co'd lefhi! Tismal co gennitek als!?"


 うわぁ~ん!と嘆きながら、レシェール・フィネーイユと名乗った女の子は俺の肩を掴んで、引き起こして、前後に、激しく、振り始めた! この娘は俺をバターにでもする気なのか? というか、感情を表す度に俺を巻き込むのはやめてくれないか?

 桃色のツインテールがベシベシ顔に当たってくるし、彼女はしばらく落ち着きそうにない。


 とりあえず話を整理することにしよう。彼女がこうなったのは俺が"Harmie co'd ferlk es?"と訊いたからだ。驚いているところを見ると、文脈的に"gennitek"は「忘れる」の意だろう。"tismal"は情報が少なすぎて類推が出来ないが位置的には接続詞に思える。リパライン語は形容詞で代名詞を修飾することが少ないし、副詞は動詞の前後にしか来ないからだ。

 あと、"lefhi"は彼女のニックネームのようなものだろう。ヒンゲンファール女史の"hingvalir"、シャルがシャリヤに呼びかけていた"axa"は良く考えれば、名前に含まれるそれぞれの単語の最初の音節を並べたものだ。恐らくリパライン語文化圏では名前が長くなりがちで省略したものをニックネームとして使う文化が定着しているのだろう。

 そういえば、"gennitek"に似た単語は意味は理解できてないが何回か聞いたことがある。"gentuan"だ。これに対応しそうな"tuan"はレトラの図書館パンフレットに書いてあった。ここから考えられるのは"gennitek"は"gen-"という接頭辞があり、それが"nitek"という単語に付いて派生しているということだ。


 一通り整理が終わるとレフィは膝を掴んで、俯いたまま肩で息をしていた。相当疲れたようだが、落ち着いてくれたみたいだ。


"Co es vy――"

"Lirs, loler nitekadils es irxe gelx cene jol co v'aduarne fai lariev o yst snestuno."


 レフィはいきなり顔を上げて話し始める。彼女は一々、言動にパッションさがあって驚いてしまう。これまで会ってきた人々はどちらかというとまったり系かさっぱり系かという感じだったから新鮮だ。

 彼女の会話の中に出てきた"irxe"は"irxergal"に似ている。"-rg-"と"-al"に要素が分離できるなら、なにか関係がありそうだが「住む」だと"sietiv"と被るし、はっきりした意味までは分からない。また、"nitekadils"は"nitek"を含んでいる。これも"-adils"による派生語と考えてよいだろう。

 文意はほとんど分からないが、とりあえず情報量が一番多い最初の部分から訊いてみることにしよう。

 俺はベンチにまた戻って、レフィの様子を確認しながら声を掛けた。


"Harmie nitekadils es?"

"la lex es molo niv elx edixu nitekerl."

"Mal, harmie es nitek?"

"La lex...... Mili, xatva gennitek lineparine at?"

"Mer...... Cene niv mi firlex snietij lineparine."

"Aaar......!"


 レフィはその場にぺたんと座り込んでしまった。

 つまり、俺とレフィはこの世界では仲が良くて、宜しくやっていたがレフィからしてみればいきなり記憶を失ってしまったということなのだろう。その上、リパライン語も忘れたのだから絶望していると。絶望的にリパライン語力が無くてすまなかったな。もう一ヶ月以上居るのにマトモな会話もままならない。現実とは非情である。

 「~を失う」から考えれば、"molo niv elx edixu nitekerl"が意味的には近い。そうすると、"nitekadils"は記憶喪失、"nitek"は「覚える、記憶している」という意味になりそうだ。すると"gen-"は"ny"と同じ様な対義語を作る接辞ということになる。

 俺はレフィの肩に手を置いて、囁いた。


"Liaxu mi is nitekadils fal no pelx selene mi veles celdino lefhi'st xici. "


 "xici"はよく名前の後ろに付いていた奴だ。明確な意味は分からないが、色んな人の名前の後ろに付けられているから多分敬意を表すものなのだろう。彼女が可哀想に思えてきたから、つい付けてしまった。

 レフィは顔を上げて、"Xatvasti?"と小さく答えた。その顔は何か奇妙なことを聞いたような――ネイティブが言語学習者の許容度が微妙な発言を聞いた時特有の――表情をしていた。



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Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
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