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#265 アレス・シャル、または原形


 目鼻立ちの整った顔、茶色のチノパンに黒のジャケットを合わせている。何も知らなければ街中を歩く好青年のような爽やかな表情をしているが、その存在を知っている自分にはそれが人を食ったような態度にしか感じられたなかった。

 夕張はばつが悪そうな雰囲気で頬を掻いた。


「どうやら、自分の意志ではなく迷い込んできてしまったらしいね」

「そうだ、さっさと元居た世界に俺たちを返せ、夕張」

「ふむ……」


 夕張は俺の要求に考えるような顔をした。全てがオーバーリアクションのように見える。それがこちらの苛つきを加速させていた。

 冷静に見てみると夕張の横には誰かが立っていた。付き従うように姿勢を正しているその少女の姿は可憐だった。目と髪の色はフェリーサやエレーナに似ているが、鋭い意思が籠もった視線はこちらを突き刺すように睨みつけている。


「彼女はアレス・シャル、僕たちの作品の一つだ」

「作品……?」


 シャルと呼ばれた少女は頷くことすらせずこちらを睨みつけていた。

 シャリヤは自分が呼ばれたのかと戸惑っていたが、すぐにその少女の名前が"ales.xal"であることを理解したようだった。一方のインリニアは自分の剣の鞘に手を掛け、警戒心を顕にしながらも様子を伺っていた。ユフィアとその付き人である老人も静観して特段手を出そうとはしていないようだ。


「ほら、シャル。君の言う通り、》をあげよう」

「ええ」


 シャルは静かに答えて、シャリヤの方に視線を向けた。その視線はそれまで向けていた厳しいものではなく、慈悲を感じさせる淡く儚げなものであった。


"Axasti, jol co ataalarta niv miss'tj?"

"Harmae coss es?"


 シャリヤは怪訝そうな顔でシャルに問いかけた。それもそうで夕張ですら彼女とは面識はない。現状は俺と同じ言語を喋っている人間と現代リパライン語を話す人間がいきなり現れて混乱しているというところだろう。


"Jol miss phitali'ene lartass melx co at es larta zelx deliu veles phitali'eneo xale la lex."

"Mi myrda unsarlastan ja. Harmie co lkurf selene?"


 良く分からない話の中に更にインリニアが介入してきた。そんな介入者を無視して、シャルは真っ直ぐシャリヤに視線を向けていた。その様子を見ながら、夕張は気味の悪い微笑を浮かべていた。


"Edixa co xekyd nistamalca ly ti? Mi plorde la lex."

"Harmie co qune la lex......?"

"Mi qune atj viroteskel el nistamalcastan. Selene co virotesk niv co'd nistamalca'c?"

"Lkurf niv dex eska ezost. Unde ler unseser lernpestilestanes. La lex io lulas mol luaspast."


 インリニアがまた口を挟むもシャルは見向きもしなかった。シャリヤは彼女を見とれたように見つめていた。


"Cene mi virotesk nistamalca'c felx hame la lex veles iso stevirxken?"

"Co ataalarta misse'c. Cene wioll co virotesk fai la lex. Cene co's fao'd kotiele'd la it le korlixtel lot is fartonar."

"Co movies filx konmetiover lap isnyser la lex at darn! Pusnist lkurfo!"


 激昂したインリニアが剣を抜いてシャルの方に向ける。シャルは顔色一つ変えずにその切っ先を見つめた。


"Fqa es ci'd fafsirl. Ers niv co'd la lex."

"Co qune si'd――"


 インリニアが話し始めた途端にシャルは彼女に手を向けた。瞬間インリニアは吹き飛ばされ、壁に打ち付けられた。彼女らの間に何かが見えたわけでもない。まるで超能力のようだった。驚きに硬直しているうちに背後で激しい咳込みが聞こえた。


「はっ……! Inlini'asti, co es vynut!?"


 応答は無い。彼女は咳とともに俯きながら、吐血していた。即死にまでは至らなかったようだが、肺をやったらしい。


"Vietist"

"Mi......"


 シャリヤはこちらを仰ぎ見る。シャルに何かを求められているらしいが、殆ど会話が理解できていない以上何も答えようがなかった。彼女は悩ましげに顔を歪めた後、寂しそうな顔でそういった。


"Salarua, cenesti. Mol nironj......"

"H, harmie?"


 シャリヤは真っ直ぐシャルを見据えて彼女の元へと歩いていった。シャルはそんな彼女の動きを満足気に見つめていた。離れていく彼女を見ながらついに危機感が心のなかで燃え上がった。


「おい、一体シャリヤに何を言ったんだ!」

「あなたには関係ない」

「関係なくはない! 俺はシャリヤの側を離れないと誓ったんだ!」

「側にいて、足手まといになって彼女の枷となっていたというのに」

「っ……! 何を根拠に……」


 さっきまですらすらとリパライン語で話していたシャルはネイティブ顔負けの流暢な日本語で話していた。これもまた奇妙な感覚を覚えた。

 心当たりはいくらでもある。シャリヤは優しいからこそ、そういったことを直接には言わないが表向きにも自分が負荷になっていたかもしれない。彼女が更に自由になるための枷になっていたかもしれない自覚はあった。


「ねえ、夕張。全員始末してもいい? 目障りなの」

「ん、まあ良いんじゃないかな。この子だけ回収できれば問題は無いしね」


 夕張は首元を擦りながら、適当そうに答えた。その瞬間、シャルと名乗った少女は天に手を掲げた。


「価値のない鎖は生き残れないのよ、八ヶ崎翠。これで終わり」


 手元に集まった光の玉のようなものは直視できないほどの光を放ちながら大きくなっていく。その光の玉がシャルの手元から地上へと下された。地面を抉る粗野な音と共に目の前が真っ白になる。

 その瞬間、意識は光に飲み込まれ散った。抗う隙など無い徹底的な光。最後に見えたのはシャリヤが手を伸ばす姿だった。


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