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#238 給仕として働かないか?


 馬が敷石の上を歩くようになると、振動もあまり伝わらなくなる。息が詰まるようなでこぼこ道を歩かなくなってから大分気分も晴れてきた。運動不足も相まっているのだろうが、バランスを取るのに色々な筋肉を使っているようで、ずっと馬に乗っていると体中が痛くなってくる。

 街は賑わいにあふれている。様々な建造物と住居が立ち並ぶ間の大通りには粗末な店作りの露天商が客の相手をしていた。果物や肉から食器、武具のようなものまで品揃えに不安は無さそうだ。

 蹄がこつこつと敷石を叩く音がリズミカルに聞こえてくる。道脇には町民たちはユフィアの帰還を祝うかのように両手を上げて歓迎していた。露天商と交渉中のような客たちもユフィアが来たのに気付くと飛び上がるように歓迎を体現していた。彼女もまた、町民たちに屈託のない笑顔で手を振っている。これだけで彼女が民衆に強く信頼されている人間であるというのが良くわかる。


"Leimois faimmaut qaut, alfiese feinaile jous."


 興味津々に市場を見つめていたら、ユフィアが振り返って何かを説明していた。ヴェフィス語は一文一句理解することが出来ない。助けを求めるようにインリニアの方に顔を向けた。


"Edixa harmie ci lkurf?"

"Fqa'd marl io garci sxe mors ly."

"Ar...... ja, xace"


 インリニアは礼には及ばないとばかりに手を振ってみせた。

 結局の所、訳してもらっても意味が良くわからないのは割といつものことだが、重要なことだけでなくちょっとした文章でさえ理解できないのは辛いところだった。ところで、異世界語を異世界語に翻訳してもらってそれを更に解読していると考えると自分がだんだん滑稽に思えてきた。翻訳魔法なる存在がどれだけ都合のいい物なのか十分思い知らされているというのにこの世界はなかなか赦してくれない。


 ユフィア一行は一旦馬を止めて、近くの露店から様々なものを買い集めていた。取り巻きたちを観察しているうちに甘い香りに気付く、銀色の一本結びを振らしながら、ユフィアがこちらに向かってきていた。ウィンクをすると馬に乗る俺たち一人ひとりにに黄色く瑞々しい果物のようなものを渡してきた。甘い香りはこの果実から香っていたのだろう。

 シャリヤは受け取った果実に鼻を近づけて香りを楽しんでいた。そのエキゾチックな香りに彼女も魅了されているようだった。


"Kenoche qaile, var est fais vaijaut."

"Mer...... Xace"


 ユフィアは俺が感謝を言ったことだけは理解できたようで、笑顔を返してくれた。この少女がさっきまで一端の武人のように山賊連中を蹴散らしていたとは、にわかにも信じられなかった。

 黄色い果実をかじるとさっぱりとした甘さと独特の香りが口中に広がった。まるでジャックフルーツのような風味だ。そういえば、インド先輩もインドで長距離移動をしていた時、車内販売(勝手に人が電車に入って売ってるだけなのだが)でジャックフルーツが買えたらしいがあまり口には合わなかったらしい。確かにあの独特の風味と食感は人を選ぶのかもしれない。

 疲れも吹き飛ぶような美味しさに驚いていると入用のものを買い終わったのか取り巻きたちは馬に戻ってきた。鞍の横に袋を掛け、そうして一行はまた街の中をゆっくりと進み始めた。


"Mait, baischouais jais feis andrai fammioi?"

"Faidoine sailou, jais justats."

"Filaiches......"


 ユフィアの質問にインリニアが答えていた。インリニアの答えに彼女は悩みこむような顔をして片手に持っていた黄色い果実を一口食べた。


"Mait, jais fedaiei laieche faimme chanthait?"

"Eh...... Saile?"

"Nais jais kailaiden ne intarmaidette. Fain jeit failaise foine naichete mait fa jais nehouss var faint jer an."


 話している内容は何も理解できない。だが、インリニアはユフィアに困惑の表情を向けていた。彼女の回答に対して、ユフィアが何やら提案をしているような気がする。それに対してインリニアが一人では決めかねるという状況になっているのだろう。

 インリニアの方に少し身を乗り出した。


"Inlini'asti, edixa harmie ci nun?"


 インリニアはなんと言えば良いのか迷っている様子でこちらに顔を向けた。シャリヤもアイオライトのような瞳を向けて彼女の答えに注目していた。


"Ci lkurf ny la lex. Lecu coss duxien mels fenxerger cun la lex mol vers."


 シャリヤと俺はお互いに顔色を伺うように見合わせた。確かにこの世界で行きていくためには何らかの仕事が必要だろう。


"Mer, la lex at es vynut ja."


 インリニアは俺の返答を聞いて、頷いていた。ユフィアのような人格者の元なら何も心配はないだろうと、誰も疑うことは無かった。


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Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
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