#222 抵抗開始
翠は人々の前に歩み出た。閉ざされたドアの前で座り込む難民の方へと向くとそれまで疎らだった視線が一挙に直接的に翠へと集中する。
"Fqa'd icco lex mol korxli'a veles issydujo el sysnul. Miss lex es korxli'a klie fqa'd icco'c fua celdino pelx cene miss lkurf mels elx veleso celdino fal no?"
翠に視線を向ける人々の反応はそれぞれだった。苦しそうに俯く人、そんなことは分かっていると言わんばかりに反抗的な表情を向ける人、いきなりこいつは何を言い始めたのかと驚いている人。自身がどう思われていようと彼らを救うためには彼ら自身を糾合しなければならなかった。
そんなことを思って次の言葉を探していると元々居た難民たちに加えてぞろぞろと人が集まってきていることに気づいた。その奥の方にはシャリヤが居ることに気づいた。薄暗いフィアンシャの入り口でも白銀の髪が誰よりも美しく光って見える。その蒼い目は人々の前に立つ翠を心配そうな表情で見つめていた。それと同時に彼女の言葉が頭の中に想起される。
"Harmy veleser celdino elx deliu veles issydujo? Miss furnkie niv felx wioll harmae furnkie la lex?"
人々は翠の言葉に当てられて、各々頷いていた。雰囲気は翠に賛同するような方に一気に傾いていた。
シャリヤのサファイヤブルーの瞳ははっきりと翠を見据えていた。自分の言葉が引用されて少し気恥ずかしいのか頬を赤らめながらも、信じていたとばかりに静かに微笑んでいた。安心したらしく顔のこわばりも解ける。
"Pa――"
反接の接続詞は座り込む難民たちの端の方から聞こえた。弱々しくも諦めに満ちた強い決めつけがそこから感じられる。
"Pa, miss es la lex'i mal niss celes ny klieo misse'st yuesleone'lt......"
"Ja! Siss letix set anfi'e. Jol miss furnkie mal veles ny klieo misse'st yuesleone'lt ol retoo lap. La lex es eso filx lusel!"
"Ja, Jol co reto miss ad misse'd relod?!"
辺りがざわつき始める。それと共に人々は翠に対する反感で息巻いていた。
"Niv!"
翠の一喝に人々はざわつくのを止めた。それほどに迫力があったのか自分では気づかなかったが、それはともかく彼らが間違った考え方に飲み込まれていることを気づかせたかった。
一歩前に出て、更に人々の注目を引いた。
"Miss furnkie niv felx wioll lartass icve nirfe? Niv, fi miss furnkie niv, korxli'a'd lartass veles issydujo. Ers la lex lap. La lex es niv veleso retoo?"
多くが銀髪蒼眼である難民たちはお互いに顔を合わせて、翠の言葉について話していた。今度は反感ではなく、その言葉に真実味を感じて心細くなったようだった。その中で男が一人立ち上がって翠を指さした。
"Mal, Lkurf. Deliu miss es harmie'i? E pusnist duxieno?"
"Deliu lkurf faixese'c."
"Miss elm ai'r?"
"Deliu es niv iulo'i xale la lex."
立ち上がった男に続いて、各々大喜利のように方法を提示していくのを翠はきっぱりと否定した。全て現実性もなければ効果もはっきりしないものだった。口々に言っていた難民たちは皆、疑問符を頭の上に浮かべたような顔をしていた。
"Ers panqa'd snenik. Fal panqa'd snenik lap, lusus."
"Panqa'd snenikesti? Cene miss es harmie'i fal panqa'd snenik?"
立ち上がった男の答える声は拍子抜けしたように調子がおかしかった。他の難民たちも大体そんな感じだったが、シャリヤはその答えは大体分かっていたようで彼女だけは言葉に頷いていた。
"Miss derok korxli'a'd lartass zu mol fal PMCF'd alsal mal miss es vosepust'i."
"PMCF'd alsalasti!? Cene niv es la lex'i!"
悲鳴のような声が立っている男の後ろから聞こえる。それでも翠は毅然な態度を崩さずに向き合う。
"Harmy cene niv es la lex'i? Xel klier fqa'ct!"
へたり込んでいた難民たちはずっと俯いてばかりいたが、翠に言われるがまま周りを見渡した。その表情が輝くように変化したのは言うまでもなかった。周りには見知らぬユエスレオネ難民たちが大量に押しかけていた。それまでに見てきた難民の苦しみと嘆きしか無い乾ききった、枯れ切ったような表情ではなく、闘志に火が付いたような挑むような表情をした者だらけだった。
へたり込んでいた難民たちは助けを求めるように翠に視線を戻した。
"Retovo leus elm niv pa lkurftless leus miss elm niss! Text coss faller eso ol eso niv!"
民衆は静まり返った。ざわざわと騒ぎ立てるものも、はっきりと賛意を表すものもいなかったが少ししてから一人が立ち上がって翠の横に立って難民たちを見渡した。訴えかけるように拳を振った。
"Jei, Lecu miss es la lex'i. Wioll miss petex is faller jisesno ol tlemsmit dorja."
"Ers panqa'd snenik lap ja? L'ankalefenes kante mol."
"Jexi'ert. M'es e'i dalle no, elx wioll cene niv furnkie fhasfa'd als. Ete'd lartasti!"
立ち上がった一人続いて何人も賛同に回る。最後の呼びかけで多くの難民が立ち上がって、腕を上げて"Wioll es e'i!"と答える。いつの間にかフィアンシャの前はユエスレオネ難民たちが言う翠への賛成の唱和で埋め尽くされていた。
"Cene miss es la lex'i finibaxli ler?"
"""Jexi'ert!!!"""
意味はわからないが、賛同の言葉であろう。そう直感的に感じた。やらなければならない正義感の確証を得た難民たちはお互いに既に案を出し合っていた。更にこの高揚感を刻まなければならないと翠は感じた。
"Lkurf fal no! Niejod lineparine!"
"""Niejod lineparine!!!"""
"""Altricve lkurftless leus lkurftless!!!"""
難民たちはお互いに手を組み合わせたり、肩を組み合ってこれからの抵抗に高揚していた。シャリヤの強い憧れに満ちた視線が痛いほどだった。
完全に同意を得ることに成功したところで安心した翠はエレーナに目を向けた。彼女は感動した表情でぼんやりと翠を見つめていたが、翠に見られていることを意識した途端に頭を振ってむっとした表情に様変わりしていた。全く素直じゃないと思って翠が笑ってしまうと、彼女もしょうがないとばかりに笑顔を見せてくれた。
こうして、ユエスレオネ難民たちの抵抗は始まった。




