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#189 豪邸


「ああ、しまったな……」


 目の前を見上げてつい日本語で呟いてしまう。横に立つシャリヤはため息を付きながら、蒼い目を半目にしながらそのキノコ型の建物を見上げていた。翠とシャリヤはシャーツニアーのフィシャ・レチェーデャが居たフィアンシャの前に居た。相変わらずフィアンシャは灰色の町から浮いているような真っ白な塗装がされている。

 一つだけ違うことと言えば――


"Fi'anxa lusveno es harmie?"


 咎め気味にシャリヤからも言葉が漏れた。目の前にある鉄の門は閂で閉ざされていた。門の間から手を入れて開けようと思えば開けられそうだ。だが、開けるべきか迷っていた。このフィアンシャが今日閉まっている理由も良く分からない。定休日でもあるのだろうか。

 半目のシャリヤに助けを求めるように顔を向ける。


"Cene niv miss en fqa?"

"Ja, fgir io veles kranteo <desniex> ja."


 シャリヤはそういってフィアンシャの入り口を指差した。

 シャリヤの指差す方には"e desniex"と書いてある。口ぶりから考えるに"desniex"は恐らく「休む」あたりの意味だろう。レトラに居た時に市民たちは農作業を"Lecu miss desniex!"と言ってから中断したところからも考えて、フィアンシャは閉まっているということを表しているのだろう。


 翠は周りを見渡した。紙幣が使えない上に、フィアンシャは閉まっている。公的に助けてもらおうとすれば逮捕されて二人共重罪人として扱われるだろう。衣食住が不安定なこの状況は最悪だった。

 自分の腹からきゅぅという音がなった。少ししてからシャリヤの方からもお腹からも聞こえた。視線を下げて恥ずかしがっている彼女も可愛かったが、自分たちの状況は全く可愛いものではなかった。意識させられると胃が締め付けられるような空腹感を感じた。


"Liaxu coss malfarno?"


 いきなり背後から声を掛けられる。シャリヤと不思議そうな顔を見合わせたあと振り向くとそこには一人の男が立っていた。黒髪で黒目、眼鏡を掛けてシックな服装に身を包んでいる。優しげな表情でこちらを見つめていたが、"malfarno"が分からなかったせいで取れる大意も何かを訊いているということくらいだった。

 シャリヤは怪訝そうに男の顔を見ていた。


"Miss g'es nefsietivaler, niejod fai velbarleo."

"Firlex, pa fi'anxastan lusven jol."


 シャリヤははっきりと苦境を言っていたようで、状況が分かったような男もフィアンシャを見上げる。


"Cene mi celdin mels knloano ad sietival?"

"Co lkurf fal cirla?"


 シャリヤは男の話を聞いて目を見開いて驚いていた。見知らぬ人からいきなり助けると言われれば確かに驚くのも無理はない。実際に話の筋が完全ではないが少しは分かっていた翠も驚きを感じていた。

 結局の所、男の後を付いていくことになった。正しくはそれ以外に方法が無かったと言えよう。シェレウルのところに戻るのは危険だし、フィアンシャに世話になることも出来ない。紙幣も使えないので食事を得るには彼に付いていくしか無かった。

 町の暗い路地を抜けて、長い時間が掛かったが歩いて行くといつの間にか豪邸の前に付いていた。彼の家らしく、手を叩いて声を掛けると使用人らしき人間が数人出てきてドアを開けながら男のコートを受け取っていた。


"Plax."

"Xace."


 安心できる場所に来れたということは良いが、何だが異様な雰囲気を漂っていた。使用人たちは死にそうなくらいに静かにしている上に、豪邸の中は静寂に包まれていた。これまで色々ありすぎて心の中がざわついていたためか、それが異常に感じた。シャリヤもこんな豪邸に来ることは無かったのだろう。周りを見渡しては珍しそうに装飾品などを見つめていた。


"Lirs, co qune ny la lex? Harmie fi'anxastan lusven."

"Mi es tylus. Jol niss letix fhaoten desnar?"

"Fi'anxa'd fhaoten desnarsti......"


 何を言っているのか殆ど分からなかったが、フィアンシャが閉まっていることに関して男はあまり知らないようだった。さらに男に付いていくと別室に連れて行かれた。シャリヤとお互いに見合わせてもどう振る舞えば良いのか良く分からなかった。座るように勧められて、翠とシャリヤはゴテゴテの装飾で満たされた椅子に座ることになった。

 男は手を叩いて使用人を呼んで何か指示するとこちらに向き直って興味深そうな表情を向けた。


"Mi'd ferlk es bierlnoj.nierrgaf. Liaxu mi celdin lartass xale coss."

"Xace. Mi es jazgasaki.cen. Mal, ci es ales.xalija."


 名前を言い合うと使用人たちが自分たちの前に食事を準備し始めた。温かいスープ、肉のソテーに温野菜――ちょうど寒いユエスレオネに合っているようなメニューであった。シャリヤは目を輝かせながらその料理を見つめていた。


"Ciss at es mi'st celdinerlss."


 男は食器を並べてゆく使用人たちを指して言った。「君たちのような人々を助けている」ということは社会で受け入れられないような人間のことを言っているのだろうか。確かにこれだけの豪邸を立てられれば何人もの使用人を養えるのも不思議ではない。

 そんな事を考えていると男は近くに通った使用人に何かを尋ねていた。シャリヤは食事を味わうのに夢中だったから、退屈になって気になっていた。小声だったが耳をすませると少しは会話が聞こえてきた。


"Co tastleus la lex nisse'd dynyji'c?"

"Ja, cysilartasti."


 使用人の答えは必要最小限であった。"cysilarta"の意味が良く分からない。しかし、"larta"に似ているから「ご主人」のような意味なのだろう。そんな事を考えながら翠は目の前の食事に手を付け始めた。


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Xace fua co'd la vxorlnajten!
Co's fgirrg'i sulilo at alpileon veles la slaxers. Xace.
Fiteteselesal folx lecu isal nyey(小説家になろう 勝手にランキング)'l tysne!
cont_access.php?citi_cont_id=499590840&size=88
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