#167 方針は変わった
"Jopp."
自分はそのまま落ちて、地面に叩きつけられて気絶でもするのかと思っていた。だが、下の地面にはユミリアが居て、俺――ガルタ・ケンソディスナルはお姫様抱っこのような形で彼女にキャッチされてしまっていた。怪訝そうにこちらを見ている。これだけの高さから落ちてきた人間をキャッチできるとは彼女はケートニアーだったのかもしれない。
"Mi lkurf niv ny la lex. Es ungliuslurfa'i."
"La lex es kafi'aen besltafait."
皮肉を言うような口調で言って、彼女の肩を押すようにして離れる。異国の政治家にお姫様抱っこされているなど、冗談ではない。だが、もっと冗談ではない状況があった。
ユミリアは少しの間笑っていたが、ふと俺が落ちてきた屋上の方を見上げて真面目な顔に戻る。
"Edixa mi senost pazeskant. Harmie voles?"
"Inlini'a faorretes kali'aho. No io ci ad cen lap mol fal acelajur."
"Josnyker es le vynut jarneu?"
ユミリアは冗談を言うと、翠の居る棟へと踵を向けて歩き始めた。端末を開いて何処かに連絡をし始める。
"Jol hame co es, jumili'asti?"
"Fhanka faixes veles eno xelvinj. Niss es serzema'i."
"Deliu miss tydiest fal fgir?"
怪訝そうに訊く俺の声色に少し面白くないと思ったのかユミリアは少し顔をしかめたが、すぐに楽しそうな顔になる。
"Miss es stoxiet fiurs ol et. Lecu miss snojij dirawirngle."
"Stoxiet...... harmiesti?"
俺が挟んだ疑問にユミリアは結局答えなかった。校舎の中に入ると、ひたすら無言で進んでいこうとするが、目に見えた人影でその歩みを止めた。
"Cen ad xalijasti,"
"Edicy hame coss moliupi'a kali'aho, cossasti?"
翠はシャリヤと共に走ってきた様子だった。異様なのは、翠がシャリヤをお姫様抱っこしていることであった。焦った表情でこちらを一瞥すると逃げるようにしてこの場を去っていった。ユミリアは冷静な様子で駆けて行く二人を流し目で見ていた。端末からブザー音がなり、取って彼女はやれやれと言わんばかりに首を振った。
"Jei, Co josxe niv jarn."
ユミリアはため息をついて、端末をしまうとこちらを横目に据えて階段を焦った様子もなく上がっていった。
"Edixa inlini'a iesnyx."
"Co kantet tysneno si'st? Mal, harmie niss zailemalefe."
ユミリアは一切俺の顔を見なかった。ひたすらゆっくりと階段を上っていく音だけが周りに響いていた。
"Edixa kali'aho jisesn. Lex melna hal'jiner elx edixa lkurf."
"A?"
聞こえた言葉を信じることが出来なかった。
カリアホ=スカルムレイが死んだ?ユエスレオネと両国間の関係をつなぐはずの存在だった彼女は、結局の所死んでしまったというのか。
唸るような声が漏れてしまう。ここでユミリアに当たっても意味はない。翠とシャリヤの二人は失敗した自分たちへの追求を逃れるために逃げたということなのだろう。そんなことを考えていると、ユミリアは更に話を続けた。
"Kali'aho'it pazeser es xalija."
"Cene niv mi fav firlex plasierl. Xturkhurte cinaste rodestel ci ja?"
ユミリアは一切こちらを振り返らなかった。だが、彼女は頭を振った。
俺の予想に対して否定するように何回も。
"Xalija falmet reto kali'aho fai jostolerl."
"Liacy yrcastan es xelken ol penul aptumirle'd melser da?"
"Moviersti, La lexepe xale larta'c jurleter'i derokramcol nen. Ci'd josnusn es tersexoler melx liacy ci letix niv la lex xale unsal. Edixa bliument dzarn pesta josnusnon xelil kali'aho. Mels la lex, ci es jatekhnef."
"Mal, harmie ja!"
イライラと疑問が焦燥感を高めていく。よく前を見ると屋上へと続きそうなドアが半開きになっているところに二人はいた。ユミリアはやっとこちらに振り返った。表情はとても冷酷なものを感じさせた。
"Mi at firlex niv."
表情に見惚れていたからか、その一瞬に気が付かなかった。胸に突き刺さる衝撃によろけて上階から転げ落ちる。踊り場に落ちて曖昧な意識の中、上階の銀髪のリパラオネ人を見上げた。彼女の右手には拳銃が握られていた。
"Lertasel veles furnkieo. Shrlo kali'aho'st jisesno veles elx quneo hata'st. Fqa at es fua elmenerfergol. Firlex plax da."
そう言いながら、ユミリアはこちらに銃口を向けた。ケートニアーの治癒能力は何故か促進されなかった。銃弾が特殊なものであったのだろう。
ユミリアが引き金を引いたのが見えたのが最後に見えた視界であった。




