#160 La sietalin
"Edixa kali'aho mol niv fal nestil ja? Liaxu no io ci is sietalin."
筋骨隆々の大きい体、黒い短髪に黒い目、服の上からでも主張が激しい筋肉の持ち主、目の前に立っているのはレシェールであった。シャリヤと翠は彼に呼び出されて、図書館の個室に集まっていた。レシェールの表情はいつもの気楽なマッチョのおじさんという感じではなく、厳しげにこちらを見つめていた。
"Mels niv mels la lex. Miss qune niv ny la lex. Harmue ci mol."
"Coss pemetorles ci mag derok. Mi felifel celes iso coss'st xturkhurte'it falmet elx jol niv derok."
シャリヤとレシェールはお互いに睨み合って口論でもしそうな雰囲気である。
"Melfert ci. Miss jel niv mal yuesleone mak is elmal. Ol, jol ete'd icco dzarhal do. Melfekasta, wioll loler lartass jisesn.Shrlo yst kenis fal lojied."
"Fai mi......"
レシェールの言葉を聞いて、シャリヤは何かを理解したかのような顔でうつむいた。レシェールと翠は目を見合わせて、そこに何かの解決の糸口があると思い、シャリヤに注目した。
"Xalijasti, co qune. harmue ci mol?"
"Cenesti,...... mi's......"
翠の声を聞いたシャリヤは怯えた表情でこちらを一瞬だけ見て、また目を反らした。何かばつが悪い空気が流れる。彼女の声は泣きそうだった。レシェールは不思議そうな顔で彼女を見ている。
"Edixu selene jol mi laprysten mol...... cen'tj pa......"
そう言うとシャリヤは踵を出口へと向けて、いきなり走り出した。レシェールが止める間もなく、「あっ」という声とともに反射的に翠が出した手は彼女を止めることが出来なかった。異様な静寂が生まれる。
"Wioll mi celes milio xalija'st mal klie. Fasta no, galta klie melx shrlo co tydiest mi'tj fua melferto."
"Selene mi co'tj tydiest fua xalija."
"Ers vynut. Celes mi'c. Mi'd tesnoken aloajerlerm es <leficenaviju> do dea!"
有無を言わせぬ口調でレシェールに押し切られて、そのまま彼は図書館から出ていってしまった。最後の妙に長い決め台詞的なものはよく分からなかった。キメ顔で言ってたから決め台詞なのだろうと思ったのだが、どうなのだろうか。
そんなことより、シャリヤ一人追うことが出来ない自分に辟易する。だが、同時にカリアホが居なくなってしまったことによって紛争が再発する可能性があるとレシェールが言ったのも確かだ。苦労して得た平和を今更敵の手にみすみす渡すことはない。戦争が起これば、シャリヤもまた動員されるかもしれない。今はシャリヤはレシェールに任せるとして、未然に戦争を防ぐためにカリアホの居場所を探さなければなるまい。
そんなこんなで、待つこと数分するとガルタ・ケンソディスナルが現れていた。彼はイライラした様子で翠を見つけると、部屋の椅子に座った。
"Edixa co senost lkurferl? Jol xelken letix ci fal no. Fal panqa, lecu miss tydiest lersseal mal melfert."
"J, ja."
図書館からガルタと共に出ると、出入り口の前に車が止まっていた。ドアにはユエスデーアの紋章。運転席には見覚えのある人物が座っていた。鮮やかな蒼の右目と深い紅の左目、白にも近いほどの銀の長いツーサイドアップは運転席の下にまで伸びている。ファンタジーな風貌ながらも身に纏う雰囲気は政治家としての思慮分別を感じる。イェスカの妹、ターフ・ヴィール・ユミリアが直々に出てきたようであった。運転手席の窓を開けて、"salarua, lu cenesti."と挨拶してきた。
"Perne. Ci lkurf fhasfa fal elx liaxu tydiestil."
"...... Ja."
なんだか面倒な話になってきた気がしなくもない。教会、ユミリア、政治利用される少女、居なくなれば国が戦争に陥る状況。細かいことはよく分かっていないが、陰謀や政治が裏で渦を巻いている気しかしない。
乗り込むと車はゆったりと発進した。ミラーに見えるユミリアの表情は厳しいものだった。カリアホを政治利用した挙げ句、戦争が起きるか起きないかの瀬戸際に立たされている彼女の状況は自業自得と言わざるを得ない。だが、二度と戦争が起こってほしくないのはお互い同じだ。善悪の立場に微妙なところはあれどここは協力せざるを得ない。
翠は遠ざかるレトラの町並みを眺めながら、何か懐かしいものを感じていた。




