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#147 相の謎


 シャリヤの可愛い困り顔を楽しむのもいいが、多少は考えよう。

 多分、"edioll"は「過去時制」を表現する助動詞だろう。左から右に文字を書くリパーシェを使うシャリヤの時空認識は、左が過去で、右が未来という風に想定できる。つまり、それに基づくと一番左の"nestil"が「過去」、"teliet"が「現在」、"stisniel"が「未来」を表していると思える。つまり、"edioll"は「過去時制」、"wioll"は「未来時制」を表す助動詞ということになる。ただ、"lia-"というのがよく分からない。時制関連でいうと助動詞"liaxa"、"liaxu"に関係していそうだ。


"Edixa mi firlex <edioll> ad <wioll> pa <lia-> es harmie?"


 翠の質問を聞いたシャリヤは頷いて、ノートに先程書かれた線の下にまた線を引いて、中心に縦に線を引いてその下に"liaxa"と書いた。その左にまた縦に線が引かれ、"liaxi"と書かれる。"liaxi"と"liaxa"の間に"liaxu"が書かれた。"liaxa"の右にも縦に線が引かれ、その下に"liaxo"と書かれ、"liaxa"と"liaxo"の間には"liaxe"と書かれた。"liaxo"の更に右の空間には"liacy"と書かれていた。

 一気に書かれたのでよく分からなくなってしまったが、分けて書くということはどうやら時制とは別の概念らしい。


"Fqass es lipalain disarajuto."

"Firlex......"


 シャリヤは"disarajuto"や"dicuraturt"というたびに得意げな顔をして胸を張っている。リパライン語を話す人にとっては難しい文法用語を言っていることになるのだろうか。その真偽は分らないが、シャリヤが可愛いということは間違いない。

 ノートに書かれたこれらがリパライン語の相の助動詞だとすると、それぞれは動作の完了度を表しているのだろう。ただ、これだけではどの段階がどの段階かわからない。

 "edixa"と"liaxa"があまり変わらないと感じていたわけだが、"liaxa"が文法相なのであればここは「完了」や「完結」と捉えるのが筋だろう。その前段階の"liaxi"は「開始」や「将前」あたりだろう。間に来る"liaxu"は「継続」だろうか、開始から完了の間を表すらしい。

 そこまでは分かるが、"liaxe"以降が分らない。完了の後に伸びる文法相といわれてもあまり頭に浮かんでこないのだ。


"Pa, xalijasti, mi firlex niv kraftona pesta <liaxe>."


 ノートに書かれたシャリヤの筆跡を"liaxo"から"liacy"まで指でなぞった。シャリヤはそれを見ながら、「そういえば、なんなんだっけ」という顔をしていた。頬に手を当てて、じっと時制と相の表を見つめる。宝石のような美麗な双眸が瞬いた。


"Fi co lersse lineparine, <liaxo co lersse lineparine> letix kante zelx co firlex lineparine mal es harmie'i. Mal, <liaxo lartass pusnist elm> es kante zu is under fal icco."

"Firlex,"


 "liaxo"というのは「完了した後に何かが起きる」ことらしい。「リパライン語を学ぶ」という結果として「リパライン語を理解して何かをしている」、「人々は争うことをやめた」という結果として「国が平和になった」ということになる。その間の"liaxe"や"liacy"はその前の点の状態が継続しているという状態だろう。

 名付けるとすれば、"liaxi"が開始相、"liaxu"が存続相、"liaxa"が完了相、"liaxe"が完了存続相、"liaxo"が結果相、"liacy"が結果存続相ということになるだろう。

 そんなことを考えているうちに、左肩を指でつつかれた。その方を振り返るとシャリヤが腕を組みながら、不満そうに頬を膨らませていた。シャリヤの説明を聞きながら、じっと時制・相の表を見ながら考えていたからか、無視されたのかと思ったのだろうか。しかし、いちいち動作が可愛いなあ、この娘はもう……。


"Mal, hame nihona'd lkurftless io qante la lexess?"

"Ar, ja nihona'd lkurftless io......"


 言いかけたところで、玄関を叩く音がした。シャリヤが不思議そうに頭を傾げながらそちらに目を向けた。椅子から立って、彼女がドアを開けるとそこにはガルタとカリアホが立っていた。どうやら、用事から帰ってきたようだった。

 カリアホは靴を脱いでシャリヤの横を通り抜けて、翠の前に来た。手を胸において言う。


"Salarua, lu censti, edixa sysnul io mi lersse lineparine."

"Ar, ja......"


 流暢なリパライン語に度肝を抜かれる。全くリパライン語が話せなかったのに、あれだけ戸惑っていたというのに。

 心なしか、カリアホの頬が紅潮している気もした。学んだ異国の言葉が通じて、悲しいことはほぼ無い。嬉しそうな表情になるのもわからないことはないが、それ以上に翠の頭の中を占めていたのは一日でこれだけ上手に話せるようになっていることであった。


 横を通り抜けられたシャリヤは、カリアホを一瞥してため息を付いた。ガルタになにか一言だけ告げて、寝室に行ってしまった。日本語の話をしようとしていたのに中断されてしまった。よく分からないが、シャリヤも疲れていたのかもしれない。

 休みたいなら休ませてあげよう。その間にカリアホがどれだけリパライン語が出来るようになったのか、夕飯の時間までまだ微妙に時間があるし調べるのが良さそうだ。

 カリアホの顔を見ると、その顔は喋れることに自信を持った表情で満ちていた。

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