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#122 学校へ

「分からん……」


 ついつい日本語でそう言ってしまうほどに目の前の現状がよく分かっていなかった。教壇には立って教えている先生、黒板にはリパーシェ文字で何かが板書されている。眼の前に座っているのは黒髪と銀髪の異世界人たちだ。板書を取っていないことを変に思われたのか先生はこちらを見て、ノートを書けとばかりにジェスチャーしてきた。


(板書が早すぎるんだよなあ)


 翠は頭を抱えながらも板書も先生の話している言葉も全部書き取れるだけ書き取ってしまおうとペンをノートに走らせた。この面倒はシャリヤの戦闘が終わってから数日後から始まった。さっぱりわからない授業の中で翠はひたすらペンを動かしながら数日前の出来事を忌々しげに思い出そうとしていた。



 イェスカの死後、どうやら教会の指導権はその親族であるターフ・ヴィール・ユミリアという人物に移ったようだ。教会の関係者であるヒンゲンファールから聞いた話で、このユミリアが自分とシャリヤに会いたいと言ってきたという話を聞いた。レトラでの安寧な生活を取り戻してすぐに、あの趣味の悪いイェスカの親族が来るというのだから何をされるのかさっぱりわからなかった。もしかしたら、自殺の原因としていちゃもんを付けられて殺されるかもしれない――そんなことを考えていた。

 だが、ユミリアは別に翠とシャリヤの関係を攻撃しようなどということはしてこなかった。逆に戦争を止めてくれてありがとうと感謝の言葉を受け取ったうえで一枚のカードを差し出してきた。


"Mi celes letixo co'st fqa'it. Cene coss tydiest lertasal'd lerssergal."

"Cossasti?"


 ユミリアは翠の疑問に答えずにシャリヤにもカードを渡していた。シャリヤに詳しい説明をしている様子だった。無視されて多少腹は立ったが、初めて会う人物であったので特に何を言うわけでもなかった。

 彼女の髪色はイェスカと同じように銀色に輝いている。長いツーサイドアップの髪は腰のあたりまで伸びていて美しい。しかし、驚いたのは目の色だった。右眼は透き通った青色でイェスカやシャリヤと同じなのに、左眼は深い紅色でオッドアイなのだ。ファンタジーファンタジーしていない異世界でも、容姿設定は抜かりないということだろうか。地球にオッドアイの人間が居ないのかという話になってくると、「いいえ、居ます」という他ないが。


"Deliu coss lersse mal is vynut duxiener fal snyky."

"firlex,"


 ユミリアはそれだけ言い残して、去って行ってしまった。ユミリアの側近が近くに付いていたが、彼が自分たちに教科書類や制服、ノートや筆記具が入った幾つかの袋を渡してくれた。

 カードをよく見ると学生証のような形式になっていた。いつ撮られたのか分からない顔写真に、名前、年齢などが書かれていた。左上には教会の友好勢力であるユエスデーアのマークが描かれている。翌日、シャリヤに連れられて大通りに出ると大型のバスが街の中に何台か入って来ていた。エレーナの姿はあったが、フェリーサは見つからなかった。多分、別のバスに乗っているのかもしれない。

 シャリヤと共に乗り込むと、バスはほどなくして出発してレトラの街を出て行った。戦闘が終わったからか、レトラの街のバリケードはただの見張り付きのゲートに変わっていた。シャリヤは長い間外の風景を見ていなかったからか、車窓から外の街の風景を嬉しそうに眺めていた。


 しばらくすると、高さは三メートルほどあるだろう鉄の門を通って、真っ白の建物の下に着いた。バスに降りてみたところ、五階建てほどの高さの建物のようだ。バスから降りてきた他の生徒たちも感心の声をあげていた。

 学校職員に連れられて、生徒たちは入学式を終えたのちに各自クラスに散っていった。学生証にクラスが書いてあるという話だったが、シャリヤともエレーナともクラスが違うようだったので途端に不安になってしまった。そういう経緯で、クラスに無事につくことは出来た。だが、本日二日目でさっそく授業でやっている内容がさっぱりわからないうえに気の許せる友人も出来ていないのである。



 教壇のうえに立つ先生がぱちんと手を叩く。授業が終わるときは彼は常にこうして生徒に時間を指し示す。


"Lusven sysnulu'd lersse!"


 生徒たちのため息がそこかしこで聞こえた。席を立って、先生に質問をしに行く者も居れば机に突っ伏して寝てしまっている生徒も居た。だが、翠にはそんなことをしている暇はなかった。今日学んだ内容を理解するために図書室を利用して、何を言っていたのか理解する必要がある。


(よし、行くか。)


 翠は席から立ち上がって荷物を持って教室を出ようとしたが、先生に止められた。


"Cenesti, deliu co tydiest lineparine'd lersse fua niv fagrigeciover."

"Ar, ja. Mi firlex."


 翠の答えに先生は分かっているならよし――とばかりに頷いた。

 そういえば、思い出した。

 

 この学校にはリネパーイネ語が上手く話せない非母語話者のための補修クラスが存在しているらしい。割と遅めの時間で一般の生徒はいなくなるし、帰りが遅くなるのであまり行きたくはなかったがリネパーイネ語を身につけるのにうってつけのクラスで出ないわけにはいかなかった。しかし、図書室での復習の時間がないわけでもない。しっかりと復習してから、リネパーイネ語クラスに出ればいいだろう。


 教室の掲示板に貼ってある学校の地図を確認して、翠は図書室へ向けて歩き出した。

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